ユーロ5を前に継続生産が危ぶまれているヤマハ FJR1300。その上位モデルである”AS”は、クラッチ操作不要なYCC-Sや電子制御サスペンションなどを採用する国産スポーツツアラーの雄だ。あらためてその魅力に迫る!
[◯] 希少な大排気量の直列4気筒、ASならAT限定免許でもOK
’00年9月に発表、’14年モデルから国内ラインナップに加わったFJR1300。今や国内メーカーのリッターオーバーの水冷並列4気筒は、ホンダのCB1300シリーズとこのヤマハ FJR1300しかなく、希少な存在と言えるだろう。今回試乗したのは、電子制御シフトのYCC-Sや電動調整サスペンションなどを採用した上位機種のASだ。
まずはエンジンから。1297ccの水冷DOHC4バルブ並列4気筒エンジンは、2軸バランサーの採用もあって驚くほど低振動で、しかも高速道路の合流ですら4000rpmまでで事足りるほどトルクフルだ。ライディングモードはスポーツとツーリングの2種類で、スロットルレスポンスで明確に差別化されている。スムーズで疲れにくく、元気良く走りたい場面ではそれに応えるという、実に完成度の高いエンジンだ。なお、電子制御シフトは、クラッチ系とシフト系のアクチュエーターが変速操作を行なうもので、左足や左手が動かしているのはあくまでもスイッチでしかない。ゆえに、一般的なクイックシフターよりも操作力が圧倒的に軽いのも美点だ。なお、’19年12月の法改正により、このASならAT限定大型二輪免許でも運転可能となった。
続いてハンドリング。市街地ではフロントヘビーな印象が、また高速道路の車線変更ではロール方向に粘るような重さを感じるが、操縦自体は極めてイージーだ。車体を倒し込みさえすれば自然と舵角が付き、気持ち良く向きを変えていく。峠道で1日に何百というコーナーを駆け抜ける欧州では、このイージーさが重宝されるのだろう。旋回力自体は決して高くはないが、電動調整サスペンションの効果もあってか外乱を受けても車体の安定性が高く、タンデムならさらにその性能が際立つと思われる。
そのほか、ヤマハ国内向けモデル初採用となったクルーズコントロールや、電動調整式スクリーン、前後連動ブレーキ、グリップヒーターなど、ツアラーに必要な装備を数多く搭載しており、どれもその効果は大きい。スポーツツアラーの本場で鍛えられただけあり、設計年度は古いものの全く不足を感じなかった。
[△] ヤマハで最も重いので取り回しにはやや苦労
ASの装備重量は296kgで、フロント2輪のナイケンを33kgも上回る。ヤマハの国内ラインナップで最も重く、さらにシャフトドライブによる駆動抵抗もあり、特に取り回しは苦労するはず。ただし、メインスタンドは意外と上げやすかった。
[こんな人におすすめ] ライバルと比べ100万円も安いコスパツアラー
アドベンチャー人気に押されて絶滅しつつある本格スポーツツアラー。直接のライバルとなりそうなのがBMWのR1250RTぐらいしかないが、装備の違いがあるとはいえ100万円以上も安いので、ニーズに合う人は早めに決断されたし。
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