フィンガーフォロワー採用、気筒休止システムも

なんとデスモ非搭載! ドゥカティが170馬力の次世代ムルティ用V4エンジンを発表

ドゥカティは、すでに生産を開始した次世代ムルティストラーダ(詳細は未発表)に搭載する新規V4エンジンを先行発表した。従来モデルが搭載するV2エンジンに比べて1.2kg軽く、170psを発揮するV4エンジンは、驚くことにデスモドロミックシステムを搭載していない!

V4グランツーリスモエンジンは、メンテナンスインターバル6万km!

ドゥカティは、完全新設計のV型4気筒エンジン、「V4グランツーリスモ」を発表した。このエンジンは、2020年11月4日に世界初公開されるムルティストラーダV4に搭載されるものだ。

V4グランツーリスモの特長は、なんといってもコンパクトかつ軽量で、力強いトルクを備えている点だ。最も過酷な「Adventouring(アドベンツーリング=冒険の旅)」に応えるために開発されたというこのエンジンは、耐久性と信頼性の両方を確保するために、最新鋭のテクノロジーと現在入手可能な最高の素材を使用。モーターサイクルの世界では前例を見ない6万km(!)というメンテナンスインターバルを実現しているという。

V4グランツーリスモの開発中に行われたすべての技術的選択は、メンテナンスインターバルを大幅に延長して、最大限にスムーズな作動を実現することを目的としていた。

その最たるものが「スプリング・バルブ・リターン・システム」だろう。ようはコンベンショナルなバルブ駆動システムなのだが、フィンガーフォロワータイプのロッカーアームなど最新のトレンドを融合。これにより6万kmのメンテナンスインターバルを実現したという。そして、ドゥカティファンには驚愕の「脱デスモドロミック」を果たしているのだ……!

とはいうものの、これもデスモドロミックシステムを中心に開発された素材、仕上げ処理、テクニカルソリューションの開発において、ドゥカティが蓄積してきた幅広い専門知識を活用することによって到達できたもの。これらの専門知識は、デスモドロミックと比較してコンポーネントへの負荷が少ないバルブスプリングリターンシステムへ適用され、モーターサイクルエンジンとしては異例の優れたマイルストーンを達成した。

しかも、このエンジンは、特に低回転域における非常にスムーズな作動を特徴としているのだという。また、本格的なスポーツエンジンと同等のパフォーマンス、高回転域でのパワー、最高速度も同時に実現している。V4グランツーリスモの最高出力は170ps(125kW)/10500rpm、最大トルクは12.7kg-m(125Nm)/8750rpmだ。当然ながら、このエンジンはユーロ5規制に適合している。

Motore Ducati V4 Granturismo

V4グランツーリスモ・エンジンの重量はわずか66.7kg。ムルティストラーダ1260に搭載されるテスタストレッタ2気筒エンジンよりも1.2kg軽量だ。V4エンジンならではのパフォーマンス、重量および寸法要件のすべてを満たすため、排気量は1158ccに設定され、非常に軽量かつコンパクトなユニットに仕上がっている。ボア×ストロークは83×53.5mmで、パニガーレV4の81×53.5mm(排気量1103cc)からボアアップしたような設定。圧縮比14.0もV4Sのデスモセディチ・ストラダーレと同一だ。

先代モデルの2気筒エンジンと比較した場合、V4グランツーリスモの寸法は、85mm短く、95mm低く、20mm幅広い。これはデスモドロミックを省略したことでヘッドまわりがコンパクト化された恩恵も大きいだろう。こうした軽量コンパクトなレイアウトにより、エンジンをフレーム中央のより理想的な位置に搭載して、モーターサイクルの重心にプラスの影響をもたらすことが可能になった。

また、V4グランツーリスモはパニガーレ系と同様に逆回転クランクを採用。このクランクシャフトは、ハンドリングと俊敏性を向上させ、加速時のピッチングを低減する。また、2気筒のような力強いトルクとスムーズな作動を実現する「ツインパルス」テクノロジーや、リヤシリンダーから発生する熱の影響で快適性が低下するのを防止するため、アイドリング時に、リヤバンクの作動を休止する機能を採用している。後者の気筒休止機構は、停止時の燃料消費を抑え、かつエンジンの温度を下げることでライダーとパッセンジャーの快適性を向上させるものだ。

デスモセディチストラダーレとの共通点もありつつ、完全新設計と言えるだけのテクノロジーを注ぎ込んだV4グランツーリスモ。それを搭載したムルティストラーダV4の正式発表は、本来ならEICMA 2020のプレスデーに当たる2020年11月4日である。

V4グランツーリスモの主要なテクニカルデータ

■水冷4ストロークV型4気筒エンジンDOHC4バルブ 排気量1158cc ボア×ストローク83×53.5mm 圧縮比14.0:1 最高出力170ps(125kW)/10500rpm 最大トルク12.7kg-m(125Nm)/8750rpm ユーロ5規制に適合■チェーンとギヤバルブ駆動システム カウンターローテーティング(逆回転)クランクシャフト クランクピンオフセット70° 湿式多板アンチパター(スリッパー)サーボクラッチ■セミドライサンプ潤滑システム オイルポンプ×3(デリバリー×1、リターン×2)■4つの楕円形スロットルボディ(直径46mm相当)による燃料供給 変速機6段+ドゥカティクイックシフト(DQS)アップ/ダウンシステム■バルブクリアランス調整6万km毎 リヤバンク休止機能

V4グランツーリスモエンジン。下のデスモセディチストラダーレと見比べてみてほしい。ベースとした部分はあるだろうが、細部はけっこう異なっている。

デスモセディチストラダーレ(参考:パニガーレV4系)。完全にレーシングエンジンといったつくりで、尖ったオイルパンやデスモドロミック採用のヘッドまわりなどがV4グランツーリスモと大きく異なる部分。

「V4グランツーリスモ」ディテール

4つの楕円スロットルボディ(φ46mm相当)を持つV4グランツーリスモ。ヘッドまわりのコンパクトさが際立つ。

ピストンリングに施されているのは、おそらくDLC。機械加工によりピストンヘッドの形状も整えられている。

全バラ・その1。

全バラ・その2。

右後方から見たアングルだろうか。前バンクは吸気カムをチェーンで駆動し、排気バルブをギヤ駆動。後バンクは排気バルブをチェーン駆動し、吸気バルブをギヤで駆動している。テンショナーはいずれも車体前方側に。

圧縮比14.0という、ひと昔前ならクレイジーと言われかねない数値を実現。燃焼室形状の小さいこと……。

シリンダーヘッドはスプリングによるバルブリターンシステムを採用したことによりコンパクト化。同時にメンテナンスインターバルを6万kmという途方もないスパンを実現した。

シリンダーはアッパーケース一体型。気筒休止システムにより停止時の温度上昇を抑制し、燃費と快適性も向上している。

バルブシートまわりの加工も美しい……。

ピストンのスカート部分にもコーティング。それにしても薄い。

ピストン&コンロッド。ストロークはボア83mmに、パニガーレV4Sと同じストローク53.5mmが与えられている。

コンロッドはおそらくカチ割り式。グランツーリスモとしての機能を果たすべく、レーシング系エンジンから技術の多くを転用している。

操作が軽く、過度なエンジンブレーキ時のリヤホイールのホッピングを防ぐアシスト&スリッパークラッチを採用。

カムシャフト、ツヤツヤです。可変バルブタイミング等は採用せず、シンプルなつくりに見える。

ドゥカティが普通のバルブスプリングを……! という驚きポイント。

詳細は不明だが、普通のバルブスプリングに見えます……。

径が大きい方は吸気バルブ、小さいほうは排気バルブ。

違った並びでもう一度。

フリクションロス低減の要、フィンガーフォロワーロッカーアーム。4バルブ×4気筒で16本分。

こちらはミッション。


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