
アイアン883やダイナローライダーSなど数々のヒットモデルを手がけてきたデザイナー・ダイス長尾氏に、人気沸騰の’22年式ニューモデル「ローライダーST」の開発秘話を聞いてきた!
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:宮下豊史 ●外部リンク:ハーレーダビッドソンジャパン
開発チームと雨の中も走り込んで完成に至った新作カウル
「ハーレーのデザインは、トレンドに軽く左右されることはありません」
ダイス長尾氏はこう言い切る。アメリカ・ウィスコンシン州ミルウォーキーのハーレーダビッドソン本社にて、手腕を振るう唯一の日本人リードデザイナーだ。
創業120年にしてアメリカを代表する企業で、サムライがひとり自分のセンスだけで勝負し続けていることは尊敬に値することで、同じ日本人として誇らしく思う。
ダイス氏は2012年に入社し、アイアン883やダイナローライダーSなど数々のヒットモデルを手がけてきた。’22年式のニューモデル・ローライダーSTでは世界中で人気沸騰のニューフェアリングを担当している。ショベルヘッド時代に登場したFXRTスポーツグライドをオマージュしつつ、スケッチを描いた。
ブルースカイヘブン開催の翌日、久々の帰国とあって「日本の道を走ろう」と約束を交わしていたが、台風の影響を受け、あいにくの雨。僕たちはツーリングをあきらめ、新作カウルについて話し込んだ。すると次々に開発秘話が!
青木: RTカウルの復活はファンとしては待望。よくぞ、やってくれました! と、発表時に歓喜しました。お礼を言いたい!!
ダイス:喜んでもらえて、嬉しいですね。
青木: すぐにエボ時代のFXRTを撮影して、先代のフェアリングの形状をじっくり確かめました。すると、ダイスさんがデザインした新作カウルはまったく違う。ぱっと見てRTカウルだと感じるものの、細部は完全に別モノなんですよ。
ダイス:ひとめでハーレーだとわかるものの、もっと3次元的なラインを描いていますし、エッジも効いています。ヘッドライトはひと回りコンパクトになって埋め込まれ、深みのあるフロントマスクの表情が強調されています。リップの角度やコブの膨らみ、すべてに理由があって、見た目だけでなくウインドプロテクションも徹底追求するため、風洞実験によるコンピュータ解析によって整流効果を高めています。
青木: 試乗は高速道路を多めに走ったのですが、見た目以上に防風効果があり、クルージングがとても快適でした。
ダイス:風洞実験だけでなく、開発チームと時間をたっぷりとかけて実際に走り込みました。ウインドシールドの角度はこの方がいいとか、雨の中も走行して確かめたのです。デザイン部門でありながら、開発や設計にも垣根なく意見を出し合える。ハーレーダビッドソンはそういう風通しの良い会社だから、従来にはなかった素晴らしいアイデアが、いろいろな方向からどんどん生まれてくるんですよ。
青木:驚きなのは強力な117(1923cc)エンジンを搭載していたことで、倒立式のフロントフォークにダブルディスクの足まわりも申し分ないから、アグレッシブに走りが楽しめる。2016年にダイナローライダーSでカリフォルニアのワインディングを一緒に走ったときを思い出しましたよ。コーナリング性能が高く、アクセルを開けるのが楽しくて仕方がない。あのモデルで、パフォーマンスクルーザーという新境地を切り拓きましたよね。
ダイス: 今だから言えますが、社内では反対されたプロジェクトでした。しかし、デザイン部門のリーダーだけが認めてくれて、発売に漕ぎ着けることができたのです。
青木: 斬新でしたものね。発売すると入手困難なほどの大ヒット。今回のローライダーSTもまたダイスさんのデザインらしく、ストリートの不良の匂いがプンプンしてくる。飾って磨くバイクじゃなく、ガンガン乗って相棒として付き合える1台。履き込んだジーンズやスニーカーみたいにね。
ダイス:そうそう、そんな感じ!
青木: 限定発売のエルディアブロ「赤い悪魔」がまたカッコイイのなんのって!!
ダイス:うん、自分の手がけたスタイルを見事なペイントと丁寧なピンストライプによって完成させてくれました。チームには感謝しかありませんね。
青木: 前はたしか、ミルウォーキーのHDミュージアムにほど近いフューエルカフェで晩御飯を食べながら聞きました。「次はどんなモデルが出るの?」って。同じ質問をしたいけど答えはわかっています。
ダイス:はい。言えるわけないじゃないですか(笑) どうぞお楽しみに!
動画はこちら↓
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ハーレーダビッドソン専門誌『ウィズハーレー』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
何度見ても息を呑む王者“DALI" スプリンガーフォークをフロントサスペンションにし、ソロシートはボバーサドルに換装。タンクのリフトアップに伴う電装系のシンプル処理(イグニッション移設)など、細部を見[…]
白を選んだのはカワイイから。発表を見てすぐ予約しました! 「かっこいいバイクだなって思って、すぐに予約を入れました」 その姿を初めて見たのは、ウィズハーレー・ユーチューブチャンネルでのヨコハマホットロ[…]
装備を充実させたスペシャルが登場! ハーレーダビッドソンのNEWスポーツカテゴリーは、水冷60度Vツイン「レボリューションマックス」パワートレインを搭載するスポーツスターSとナイトスターという2本立て[…]
やっぱり積んだ最強117エンジン! '23年モデルのハイライトのひとつが、刷新された「ブレイクアウト」の新登場だ。ロー&ロングなストリートドラッガーが、より新しく力強いスタイリングを加えて生まれ変わっ[…]
ROMの電熱グローブがさらに使いやすく、電池残量がすぐ確認できる!! 2020年に販売され人気を博したグローブ「ROM ゼロスグラブ ヒート」。その進化版が2022年秋より販売を開始している。 大きな[…]
最新の関連記事(ハーレーダビッドソン)
元世界王者・魔裟斗もハーレーを通じてみんなとつながった! 「すれ違いざまに手を振り合ったりするなど、ハーレー乗りたちとすれ違うと(面識がなくても)仲間意識があるんですよね」と、集まったライダーたちに話[…]
FLHXSE CVOストリートグライド:CVOでは唯一となるバットウイングフェアリング フラッグシップモデルを象徴するバットウイングフェアリング。そのアイコンを持つ最上級仕様が「CVOストリートグライ[…]
FLHX ストリートグライド:ワイドグライド譲りのファイヤーカラーも選べる! 2025年式ストリートグライドは、その象徴的なバットウイングフェアリングとLEDライトを融合させたモダンなスタイルを持つグ[…]
FLHXU ストリートグライドウルトラ:ストリートグライドを名乗る、伝統のウルトラモデルがついにデビュー! ハーレーダビッドソンのフラッグシップモデルが、フルモデルチェンジを果たした。その名は「FLH[…]
RH975S ナイトスタースペシャル:ダウンドラフト吸気の水冷Vツインを黒で統一 レボリューションマックス搭載モデルでは、燃料タンクをシート下にレイアウトすることでダウンドラフト吸気を実現。従来タンク[…]
最新の関連記事(ウィズハーレー)
元世界王者・魔裟斗もハーレーを通じてみんなとつながった! 「すれ違いざまに手を振り合ったりするなど、ハーレー乗りたちとすれ違うと(面識がなくても)仲間意識があるんですよね」と、集まったライダーたちに話[…]
FLHXSE CVOストリートグライド:CVOでは唯一となるバットウイングフェアリング フラッグシップモデルを象徴するバットウイングフェアリング。そのアイコンを持つ最上級仕様が「CVOストリートグライ[…]
FLHX ストリートグライド:ワイドグライド譲りのファイヤーカラーも選べる! 2025年式ストリートグライドは、その象徴的なバットウイングフェアリングとLEDライトを融合させたモダンなスタイルを持つグ[…]
FLHXU ストリートグライドウルトラ:ストリートグライドを名乗る、伝統のウルトラモデルがついにデビュー! ハーレーダビッドソンのフラッグシップモデルが、フルモデルチェンジを果たした。その名は「FLH[…]
RH975S ナイトスタースペシャル:ダウンドラフト吸気の水冷Vツインを黒で統一 レボリューションマックス搭載モデルでは、燃料タンクをシート下にレイアウトすることでダウンドラフト吸気を実現。従来タンク[…]
人気記事ランキング(全体)
新設計の4気筒・502ccエンジンにEクラッチを搭載! ホンダは、中国で開催中の重慶モーターサイクルショーにて新型モデル「CB500スーパーフォア(CB500 SUPER FOUR)」を世界初公開した[…]
ダークカラーに往年のオマージュカラーを乗せて 特別仕様車の製作を定期的に行うカブハウスは、1970年代のダックスをオマージュしたような限定仕様「DAX Royal Limited Edition」を発[…]
その姿、まるでハンターカブ×ミニトレ?! タイ仕様は新型に切り替わるとともにカラーバリエーション変更&グラフィックが変更された。 一方ベトナム仕様は、従来モデルを標準仕様として併売。この標準モデルはカ[…]
滑りにくさと耐久性を両立したソール設計 アシックスの安全靴「WINJOB CP113」は、油で劣化しにくく耐久性に優れたCPグリップソールを採用。濡れた床や油で汚れた現場でも安定したグリップ性能を発揮[…]
トレリスフレーム+ユニトラックサスペンションの本格派 カワサキは欧州で、15psを発揮する水冷125cc単気筒エンジンをスチール製トレリスフレームに搭載し、前後17インチホイールを履かせたフルサイズス[…]
最新の投稿記事(全体)
主要スペックと価格 Rakiieの腰サポーターは、8点式サポートと4本のメモリアルバーを搭載し、従来モデル比で高い固定力をうたう設計です。2本の弾性スプリング&PPバーで骨盤と腰椎の姿勢を整え、坐骨神[…]
白バイ隊員になるには 白バイに乗るためには、あたり前のことですが大型自動二輪免許の取得が必要です。とはいえ、警察官になる時点で取得していないとダメかといえば、そうではありません。後から取得する手間が減[…]
レースで勝つために進化を重ねたトップパフォーマー 「GSX-Rの40年」ではまず、”アルミフレーム+カウリング+4スト最強水冷4気筒”のGSX-R(400)を紹介。 1980年代初頭に始まった空前のバ[…]
バンテリンサポーターとは 「バンテリンサポーター 腰椎コルセット」は、興和株式会社(ブランド名: バンテリン)による腰のぐらつき抑制を目的としたサポーターです。Amazonではカラー展開(ブラック/パ[…]
R90Sから受けた影響とXLCRとの意外な共通点 Z1‐Rに対するイメージを聞かれたら、多くの人が”カフェレーサー”と答えるだろう。ただしカフェレーサーは車両のオーナーやチューナーが作るもので、原点は[…]
- 1
- 2