
ケーニッヒ・スペシャルズというメイクスをフェラーリのカスタムファクトリーだと思っているなら、それは違います。たしかに、テスタロッサを魔改造したケーニッヒ・コンペティションや、ダブルウィングを付けた512などが有名ですが、実はフェラーリ以外も多数のスペシャルカーを作り上げているのです。例えば、このポルシェ928などは人気を博し、日本にも多数上陸したモデル。グラマラスに変身しただけでなく、スーパーチャージャーによって湾岸界隈でも輝くマシンへと昇華しているのです。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
フェラーリ好きが高じてエンツォから招待された⁉
ケーニッヒ・スペシャルはドイツのミュンヘンに拠点を構えるスペシャルカーメーカーで、創立は1974年とすでに50年以上の歴史があります。
創設者はビリー・ケーニッヒ(Willy Koenig)と呼ばれることが多いものの、ドイツ人のためヴィリーが正しいようです。彼はもともと印刷業で財を成しており、趣味のレースがきっかけでフェラーリ365GTBのチューンナップをし始めたのがスペシャルカー作りの第一歩となりました。
とはいえ、エンジンは内部までカスタムし、ツインターボまで装着するという徹底ぶり。これが評判となり、今日のケーニッヒ・スペシャルの嚆矢となったのでした。ちなみに、この365の完成度に注目したエンツォ・フェラーリから直々にマラネロへ招待されたこともあるとか。
ケーニッヒは365を皮切りに、512、テスタロッサ、348と手を広げていったのですが、当時のドイツ製スペシャルカーは作れば売れるという状況。AMGやシュニッツァー、クレーマーといったメイクスもじゃんじゃん大量生産していたタイミングだったのです。
そこで、ケーニッヒもポルシェやメルセデスベンツ、ジャガー、あるいはBMWにまで手を広げていったのでした。ちなみに、当時のフェラーリは生産能力が今よりもずっと乏しく、ドイツでも争奪戦の様相を呈していたそうです。
ケーニッヒのボディキットを装着した928スペシャル。1988年モデルの928S4をベースとしたコスメティックチューン。
とにかく、ふくよかな928をさらにボリューミーに仕立てたのはケーニッヒらしさ満点のスタイリング。バブルの頃は大人気でした。
超高速域こそケーニッヒのメインステージ
そこで、今回の928スペシャルですが、ケーニッヒの文法通りフェンダーラインを大幅に拡げ、極太のBBSホイールを装着。無論、ビルシュタインの強化ダンパー、ザックスの専用コイルなどでサスペンションは300km/hオーバーでも確実に路面を捉える仕様とされました。
ちなみに、いわゆる「ケーニッヒ仕様」と呼ばれるクルマは、エアロパーツとホイール、そしてコイルのみのコスメティックチューンにほど近いもの。
スペシャルを名乗れるのは、エンジンチューンも含めたコンプリートマシンのみ。国内には「仕様モノ」も少なくないので、購入の際は必ずチェックすることお勧めします。
さて、ケーニッヒのスーパーチャージャーによるチューンナップは、928のほかにもメルセデスベンツのSクラスなどでも実施しており、その卓越した制御やパイプワークには定評があります。
ただし、専用オイルポンプの装備や、高品質のホースなど凝った作りのために、一度故障すると「目玉が飛び出る」修理代がかかるとのこと。928スペシャルの国内オーナーが嬉しそうな顔で語っていたのが今でも印象に残っています。
グラマラスなリヤスタイルこそケーニッヒ・スペシャルの真骨頂。それでいて、928の優雅な面影はきちんと残すというテクニックには脱帽です。
極太タイヤへの履き替えで、928が得意とする超高速域でのスタビリティが格段に向上。
バブルの日本がケーニッヒ最大の市場だった!
スーパーチャージャーは当時の定番、アルブレックス製が使用され、928の4.7リッターV8エンジンを440hpまでパワーアップさせています。スタンダードの928が310hpですから、一気に130hpも向上させたことになります。
が、このセッティングはオーナーや仕向け地によって変更され、最低値であれば67hpアップの377hpくらい。先のオーナーによれば「怖くて440馬力は試せない」とのこと。修理代のエピソードを聞いていると、速すぎて怖いわけではなさそうです(笑)。
結局、928スペシャルは24台が製作されたと記録されていますが、何台が日本に上陸しているかは不明。当時のケーニッヒにとって、バブル真っ盛りだった日本は大の得意先でしたから、少なく見積もっても1/3、7~8台は輸入されていたかもしれません。およそ3000万円とか4000万円のプライスだったと記憶していますが、それでも広告に掲載された翌月には売れていたかと思います。海外のオークションを探してみたものの、コンプリートカーの売り物はさすがにゼロ。かわりに見つけたのが、ボディキットだけの「仕様モノ」ですが、落札価格は7万ユーロ(約1200万円)とスタンダード928より少し高いくらい。目玉の飛び出るスーパーチャージャーの修理代を考えなくて済むわけですから、スタイリングを気に入っているならお買い得かもしれません。
ウエストラインからシャープに立ち上がるフェンダーこそ、一目でわかるケーニッヒのアイコン。
コンプリートモデルはスーパーチャージャーを装備して、最大440馬力を発揮。巧みなパイピングに高い技術力が伺えます。
ギャラリー(走行イメージ)
ギャラリー(正面)
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