
ポルシェはいつの時代も最高のカスタムベースに違いありません。ノーマルでも類稀なパフォーマンスというのが、逆にカスタム魂をメラメラさせるのではないでしょうか。これまで、数多くのファクトリー、メイクスが挑戦してきましたが、今回ご紹介する2台は名実ともにトップランク間違いなし。それぞれの個性が発揮され、対照的なところも興味深いポイントです。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
13台しか作られなかった964モデルのうちの1台
ポルシェのカスタムと聞いて、世代の違いで思い浮かべるファクトリーが変わってくるかと思います。ベテラン勢ならば、クレーマー、ルーフ、あるいはDPやアンディアルを思い起こす方もいらっしゃるかと。水冷以降のファンならば、シンガー、ラウヴェルト、そして、サーキット勢ならマンタイの名も挙がるはず。いずれも、独自のプロトコルで911のパフォーマンスをさらなる高みへと昇華させる腕っこきに違いありません。
とりわけルーフとシンガーは、今や世界的なオークションの常連モデル。言うまでもなく、プレミア価格となっているものの、いずれも生産者によるレストア、フィニッシングされている由緒ある売り物。大金持ちの皆さんも、案外この手でゲットしているのかもしれませんね。もっとも、レプリカなんてまがい物なんて滅多にないでしょうが。
さて、ルーフの売り物は1994年モデルのBTR4 3.8という964モデルの中でも13台しか作られなかった希少性の高いもの。BTR=Big Turbo Rufの略で、4は全輪駆動、そして3.8リッターの排気量を車名としています。415psを公称し、ミッションはゲトラグと共同開発したとされる6速ギヤボックスを装備。足元は18インチのスピードライン製ルーフ・オリジナルホイール、カタログ通りであればビルシュタインのダンパー、Ateのブレーキシステムとなりますが、オーダー次第でブレンボなど違うパーツが使われることも少なくないようです。
964ベースのBTR4 3.8は生産台数わずか13台で、90年代のルーフとしては希少な4輪駆動モデル。最初の納車先は日本の石田エンジニアリングでした。
左ハンドルのヨーロッパ仕様ですが、実は最初の納車は日本の代理店だった石田エンジニアリング(現RTC株式会社)だったとのこと。それゆえなのか、背もたれ抜きのリヤシート(いわゆるジャパンシート)が装備され4人乗り登録され、背面にはBTRの刺繍が施されています。また、タコメーターのみファブリックやステッチの色に合わせたブルーにするなど、インテリアに相当なこだわりが見られるのも964ベースのルーフらしいポイント。
落札の指し値は120万ドル(約1億8000万円)が予想されていますが、さすがのプレミア価格で、これだけ出せば水冷911ベースのルーフも難なく買えるはず。とはいえ、ポーラーシルバー、ホエールウィングの魅力に抗うのはちょっと難しいものがありますよね。
再解釈でリアルな存在感を放つ
ついで、シンガーからは2018年のグッドウッドフェスティバルに展示したDLSそのものが出品されています。2台展示されたうちの1台で、EP1(エピソード1)の名が加えられた記念すべきモデル。ベースとなった911は1990年の964カレラ2ですが、ナローポルシェのディテールや、グループ4レーサーかのようなトリミングはさすがはシンガーの再解釈。実在しないモデルにもかかわらず、リアルな存在感が見事です。
2018年にグッドウッドでお披露目されたシンガーDLSの1号車(EP1)ここで限定75台のほとんどが売れてしまったとされています。
DLS=Dynamic and Lightweighting Studyの略だそうですが、簡単にってしまうとエンジンチューンをコスワースやウィリアムスといったF1コンストラクターに委ね、それまでのシンガー独自のチューニング路線をよりブラッシュアップしたモデルということ。また、ルーフとドアを含むすべてのボディがカーボンとなり、従来の「なんとかコミッション」と名付けられていたシリーズモデルとは一線を画すものとされています。
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