
’80年代末から注目され始めた空冷4気筒の逆輸入車。’70年代に製造されたバイクの性能を上げる絶版車カスタムが大きな流行となる一方で、ブームが一周すると純正スタイルへの回帰も始まった。そこで直面するのが、バイクメーカーによる純正部品販売終了問題である。アドバンテージの「廃番プロジェクト」は、純正部品と同品質の補修用部品を供給する待望の新企画である。
●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:アドバンテージ
純正スタイルが求められる今だからこそ、ノーマルと同等の性能を回復できるパーツを続々開発
効きの悪いブレーキや頼りないサスペンション、アイドリングが安定しないキャブレターなど、弱点を補う目的で行われてきた絶版車のカスタム。その一方で、性能はさておき、カスタムではなく純正スタイルを求めるユーザーも増えている。
絶版車に乗り続けたいオーナーにとって、頼みの綱となるのが純正部品。ところが最近、各バイクメーカーの部品供給の雲行きが怪しいのでは? と感じていた、アドバンテージの中西社長。イグザクトホイール/ブレーキ/サスペンションパーツを開発販売する同社にとっては、純正部品の販売終了は自社製品にとってチャンスになり得るはず。しかし中西社長は、カスタムを楽しむには、大前提として純正補修部品の供給がなければならないと考えた。
そこで開始したのが、純正部品の「廃番プロジェクト」。このプロジェクトでは、アドバンテージがこれまでスペシャルパーツを開発してきたネットワークを活用し、部品製造を行う。需要のある機種の補修用部品を、バイクメーカーに代わり純正品質で販売することで、1台でも多くの絶版車が走り続けられる環境を作るのがプロジェクトの大義である。
ニンジャのリヤサスペンションもカタナのインナーチューブも、スペシャルパーツは存在するが、純正仕様にこだわるユーザーにとっては純正部品が不可欠。そうしたユーザーが増えるほど、アドバンテージの新たな取り組みに対する期待値が高まるのは間違いないだろう。
ニンジャのアキレス腱=エアサスペンションを純正スペックで新開発
カワサキGPZ900Rのショックアブソーバーは、’99年モデルのA12以降、金属スプリング+ガス封入式ダンパーとなるが、それ以前は空気封入式だった。そのため、経年劣化で気密性が低下すると、リヤの車高が下がり乗り心地も悪化する。社外のスペシャルパーツに交換するのが定石だが、アドバンテージでは純正同様の特性でコイルスプリングのショックを開発中。初期のエアー封入式はもちろん、A12以降の純正ショックも販売終了となっているので、純正派にとっては待ち望んだ製品となるはずだ。
【アドバンテージ KYB カワサキGPZ900R用リヤサスペンション】自由長/マウント部のサイズ/スプリング/ダンパー特性を純正部品に合わせて開発中のGPZ900R用ショックアブソーバー。複雑な調整機構はなく、シンプルかつリーズナブルな価格設定を目指している。●試作中
表面処理や一部素材が見直される可能性はあるが、ネジタイプのプリロードアジャスターと伸び側減衰調整機能が付く。製造は純正部品メーカーが行うので、性能や耐久性も純正部品相当となる。
カワサキGPZ900Rのショックアブソーバーは、’99年モデルのA12以降、金属スプリング+ガス封入式ダンパーとなるが、それ以前は空気封入式だった。
ノーマルフォルムの維持に欠かせないインナーチューブ
フロントフォークのインナーチューブは、長期間雨ざらしや湿度の高い場所で保管することで、メッキの表面から水分が浸入してサビが発生する。ハードクロームメッキの再メッキも可能だが、サビの進行具合によっては研削量が多くなることもある。GSX1100S用純正インナーチューブは販売終了となっており、今回の廃番プロジェクトで製作されたことで、ノーマル派から大絶賛されている。
【アドバンテージ KYB スズキGSX1100S用インナーチューブ】●税抜価格:2万5000円(1本)
星型キャストにこだわるオーナーにとっても嬉しい部品。今回新たに製造されたインナーチューブは、純正部品番号#51110-08C30/#51110-08C20/#51110-08C00/#51110-49300/#51110-49340 に対応する。
経年劣化が問題となる純正ダイヤフラムが復活
現在販売されている新車の吸気系はすべてフューエルインジェクションだが、市場には膨大な数のキャブレター車が存在する。負圧キャブレターの場合、ピストンのダイヤフラムゴムの硬化/ひび割れによってレスポンスや作動性に影響が出て、4連キャブの場合は致命傷となることもある。アドバンテージのGSX1100S純正キャブ用ピストンは、最も重要なダイヤフラムを純正と同様のスペックとしながら、リーズナブルな価格を実現!!
【アドバンテージ ミクニ GSX1100S用キャブレターダイヤフラム】●税抜価格:4万8000円(4個)
GSX1100SY(ファイナルエディション)/GSX1100SR(国内)/GSX1100SSL/GSX1100SL/GSX1100SM/GSX1100SBE/GSX1100SAE/GSX1100SE/GSX1100SD/GSX1100SZ/GSX750SZ(輸出)/GSX750SD(輸出) に対応。
まだまだ市場に多いのに、純正部品は販売終了!?
ビッグスクーターブームが到来し’00年前後、スズキから発売されたスカイウェイブ250。初代はOHCエンジン+キャブレターだったが、DOHC+インジェクションとなり’10年代まで続くロングセラーとなった。そんな人気モデルにもかかわらず、年式によって駆動系部品の要であるクラッチシューが販売終了。アドバンテージとスクーターは結びつきにくいが、クラッチ部品として販売を開始した。
【アドバンテージ スズキ スカイウェイブ用クラッチシュー】●税抜価格:1万4900円
スクーターのクラッチは遠心力でシューが開いて断続する。ドラムブレーキと同様に、ライニングが摩耗すれば機能しなくなるため交換が必要。純正部品が販売終了となれば、まさに致命傷となる。
※本記事は“モトメカニック”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
余裕のない場所での作業を強いられる、自動車のエンジン周りにも重宝 ボルトやナットのサイズが小さければ締め付けトルクも小さく、狭い場所にあるからコンパクトな工具が使いやすい。バイクで差込角6.3sq.の[…]
想像以上にしっかりした作り込み。初めてのガレージにおすすめ 潤沢な資金や広大な土地を所有するのなら羨ましいかぎりだが、そうではない環境だとしても、やる気次第で大切なバイクを良い環境下で保管することがで[…]
水中の目に見えないほど小さな溶存気体をマイクロバブルとして排出 タブと呼ばれる洗浄水槽のステンレスの板厚や剛性などの基本構造から始まり、超音波を発生する発振器の総務省指定型式認証取得に至るまで、既存の[…]
静電気を取り除く小さなパーツで多くの変化が起こる 回転でも摺動でも空気でも液体でも、何かが動くところには必ず発生する静電気。その"気づき"に大きな役割を果たしたのが、特許を取得したNGCジャパンの"ス[…]
ボタンひとつで設定圧力まで空気を入れてくれる小型コンプレッサー 「スマートエアポンプ」の本体は、余計な出っ張りのないスクリーンタッチボタン方式の操作系を採用した片手サイズで、USBケーブル充電式のバッ[…]
最新の記事
- 【ホンダCB1000F コンセプト】1300の“乗ってみろ”から劇的チェンジ!! 次世代のCBは最新性能を気軽&快適に味わえる【開発者ロングインタビュー】
- [バイク駐車場問題]熊本市の繁華街を現地調査:「125cc以下の受け入れ多数! 」ただしそれより大きくなると…
- 「特製紙袋&クリアファイルをプレゼント! 」恒例ガラポン&愛車イラストも:東京モーターサイクルショー2025 ヤングマシンブース【3月28日〜30日】
- 「スズキの本気度が伝わる」約6000台が生産された国産唯一の市販ロータリー:1974 スズキRE-5【あの素晴らしい名車をもう一度】
- ホンダCB400 SUPER FOUR/BOL D’OR歴代モデル図鑑【2018年モデル:熟成のマイナーチェンジ】
- 1
- 2