1901年創業、アメリカ最古のモーターサイクルメーカーであるインディアンモーターサイクル(以下インディアン)。長い歴史の中で、1920年に名車スカウトは産声を上げた。その後、事業停止などを経てブランドは復活し、新体制を築く一方で、2014年に新型スカウトは誕生した。「もっとも乗りやすいインディアンのモーターサイクル」と評されているスカウトシリーズは、現在4モデルがラインナップ。今回はMIGLIOREディレクターの小川(バイク歴30年)と編集のムラタ(バイク歴1年10カ月)が、「スカウト ローグ」とともに暮秋の富津海岸へ向かった。
●文:ミリオーレ編集部(村田奈緒子) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:インディアンモーターサイクル
バイク乗るの上手くなった⁉️ そんな気分に上げてくれる相棒
2023年春、筆者ムラタ(バイク歴1年10カ月)はクルーザーに初めて乗った。その相棒がまさに「スカウト ローグ」だったのだが、試乗前の夜は「全長2274mm、全幅995mm。ガソリン満タンで車両重量250kgのスカウト ローグ…。はたして私は乗れるのだろうか?」と一抹の不安を抱いていた。
その不安は、バイクに跨りサイドスタンドをはらった時の「軽い!」という感動に始まり、アクセルを回して発進すると吹き飛んでいた。細部までブラックアウトされたダークなバイクではあるが、穏やかでフレンドリーなキャラクターのスカウト ローグに、私はそれまで抱いていたクルーザー=アウトローな重量車という印象を大いに反省した。
今回はそんなスカウト ローグの2回目の試乗である。「スポーツチーフ」を借りたMIGLIORE ディレクターの小川とともに、千葉の富津海岸を目指した。インディアンモーターサイクルの老舗/PLAIN Indian Motorcycle YOKOHAMAを出発し、首都高速から東京湾アクアラインへと流れていく。
前回同様に、スカウト ローグは優しく、ミニエイプハンガーハンドルは個性的な見た目とは裏腹に自然なハンドリングをかなえてくれる。あまりにスムーズなライドに「私、バイクが上手くなった⁉️」と思ったほどである。そう思わせてくれる理由はいくつかあるが、1133ccと大排気量ながらコンパクトなVツインエンジンが要因として大きいだろう。
Vツインとは、シリンダーがVの字に配置されているエンジンのこと。同じ2気筒でも、並列(パラレル)や水平対向(ボクサー)よりも横幅がスリムという点は大きな特徴だ。だからロー&ロングで車重250kgあるスカウト ローグも、跨った時から軽快さを感じられる。
「このバイク、軽い!」という心理的な安心感は大きく、さらにスカウト ローグの素直なハンドリングに不安はかき消される。実際、交差点を右左折するようなコーナリングだけでなく、高速道路の入り口などの大きな旋回時においても「あれ、私バイク乗るの上手になった⁉️」と自惚れるほどのスムーズさを実感できた。
はじめてのクルーザー選びには、シリーズ最軽量のスカウト ローグが最適
スカウト ローグは、スカウト4モデルのなかでも最軽量の250kg(装備重量)。シリーズの中では一番軽いモデルで、ハンドリングの軽快感をもたらす19インチのフロントタイヤという構成も好印象。
クルーザーというとスタイルを優先するばかりに機能を損なっているバイクもあるが、スカウト ローグにはそんな心配は無用だ。スタイルと機能を両立し、バランスよく設計しているからこそ、初めてクルーザーに乗るというライダーには自信をもっておすすめできる1台といえる。
そんなスカウト ローグを思い通りに乗りこなすコツを小川に聞いてみると、「リヤブレーキで積極的に車体姿勢をコントロールすること。その意識で走りの達成感はかなり変わるはず」とのこと。
「どこまでも思い通りに走れる感覚は、スポーツバイクらしい一面もあり、重くて曲がらなかったり、想像以上に膨らんでしまったりと、ヒヤッとすることがない。速さやバンク角では語らない、操るスポーツ性に溢れており、スポーツクルーザーという新しいカタチに昇華している」と小川。確かに小川のコーナリングを見ていると、スポーツバイクということがよくわかる。なんだか、動きが鋭いのだ。
スカウトシリーズの熟成感がすごい!
この日、小川とは互いにバイクを交換したりして千葉の富津海岸へ向かった。インディアンの2台(スカウト ローグとスポーツ チーフ)を乗り比べる機会を経て、バイク歴30年のモーターサイクルジャーナリストはどう感じたのかを聞いてみた。
小川「スカウト ローグは2022年登場、スカウトシリーズの中では若手モデル。とはいえ2014年にスカウトが現代に甦って以降、このシリーズはエンジン/ハンドリング/ポジションも少しずつ改良を重ねてきたわけで…。歴代のスカウトを試乗してきたけれど、スカウト ローグには熟成感を感じたよ」
村田「熟成感…シリーズ通しての深化がきちんと具現化できているってことですか?」
小川「まさにそう! ローグは“ならず者”とか“不良”の意味だけど、それはあくまでバイクの佇まいや世界観。実際はクルーザーなのにスポーティーさも併せ持ち、かつ軽快で上品な乗り味が魅力。アメリカでは積極的にレース参戦しているブランドらしく、追求するバイクのコンセプトにブレがなく、それが熟成されている感じだなと」
村田「確かにクルーザーというと重たくて曲がらなくて、ドコドコと爆音でスマートさにやや欠ける印象を持っていたけど、インディアンのスカウトシリーズは真逆の印象。とにかく軽くて、素直なハンドリングにやっぱり安心感を覚えるバイクだなというのが、2回目の試乗で感じたことです」
小川「豊かな鼓動感が魅力的なエンジンは、スロットルを開けると速さと気持ちよさを同時に味わうことも可能。低回転域を繋ぎながらどんどんシフトアップする走りもできるし、2速以降は回転を上げる走りも楽しい。
スロットルワークに対する反応もまるでスポーツバイクのようで、2000rpm以上回っていれば、スロットルを開けた際の反応はとてもスムーズ。豊かなトラクションが安定感をもたらし、リヤタイヤはどこまでもパワーを受け止めてくれる。まさにスポーツクルーザーとしての新しいカタチだと思うね」
村田「スポーツ性など難しいことを考えずに、ブラックアウトされたカスタム感のあるスカウト ローグに似合うスタイルで、ファッション的に楽しむのもいいですよね」
小川「もちろん、それも全然アリ。何も考えずにスロットルを開け続けるのも醍醐味だし、むしろそれこそがスカウト ローグの本質だとも思う。
ただファッションから入ったバイクライフの先に、ちょっとしたスポーツの楽しみがあるのも事実。スカウト ローグに乗っていると、コーナリングやバイクを操るという、そんな楽しみに開眼する日がそう遠くないうちに訪れるかもしれない」
村田「はじめてのクルーザーを探しているライダーには、スポーツ性もファッション性も高いバイクとしてオススメできる1台ということですね。
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