バイクのライテクも向上!? 電動スポーツ自転車「e-Bike」がバイク乗りにもオススメな件
●文:[クリエイターチャンネル] 増谷茂樹
クルマと比べると遅れはあるものの、徐々に電動マシンも姿を現してきているバイク市場。ですが、同じ2輪でも、電動化がクルマよりもはるかに進んでいる領域があります。それが電動アシスト自転車。
2022年の電動アシスト車の国内販売数は79.5万台で、同年の電気自動車(EV)の販売数(3万1592台)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売数(3万7772台)と比べても規模が大きくなっています。中でも近年話題になっているのが、e-Bikeと呼ばれるスポーツタイプです。どんなものなのかを解説しつつ、バイク乗りにもおすすめできる理由を紹介します。
そもそもe-Bikeってどんなもの?
e-Bikeはそもそも電動アシスト自転車の海外での呼び名です。日本で生まれた電動アシスト自転車が海外に伝わった形でしたが、そもそも欧米には日本でいうところの”ママチャリ”が存在しなかったこともあり、スポーツタイプをベースとした電動アシスト自転車がe-Bikeと呼ばれるようになりました。
これが日本に逆輸入されるかたちで、クロスバイクやロードバイク、マウンテンバイク(MTB)といったスポーツタイプの電動アシスト自転車がe-Bikeと呼ばれるようになりました。といっても、ママチャリ用のアシスト機構をスポーツタイプの車体に積んだだけではありません。
ドライブユニット(モーター)などもスポーツ走行向けのものとなっていて、メーカー側も一般の電動アシスト自転車とe-Bikeを区別してラインナップしています。ヤマハでいえば、PASシリーズが電動アシスト自転車、YPJシリーズがe-Bikeです。
電動バイクのライバルはe-Bike?
前回の記事で紹介したホンダの「EM1 e:」は”電動アシスト自転車以上、ガソリンバイク未満の乗り物として開発された”と書きましたが、比較対象がe-Bikeとなると話が違ってきます。
例えばアシスト走行が可能な距離も、一般の電動アシスト自転車は標準的なモードで50〜60km程度ですが、e-Bikeでは100kmを超えるものも珍しくありません。「EM1 e:」の航続距離といえば、50km行かないくらい。実際にe-Bikeに乗ってみると、カタログ数値以上の距離を走れることが多いという筆者の経験からすると、実用的な航続距離はe-Bikeに分があるといえます。
最高時速も原付一種は30km/h制限がありますが、e-Bikeは24km/hでアシストは切れるものの、30km/h巡航が苦でないものも少なくありません。移動速度という意味でも、e-Bikeは原付一種の電動バイクのライバルとなり得ます。免許が不要で利用可能な駐輪場が多いことからも、移動手段としての利便性はe-Bikeの方が上といえるでしょう。
もちろん、電動バイクにはアクセル操作だけで走れて楽というメリットがあります。また、「EM1 e:」の29万9200円に対し、ヤマハYPJシリーズの最も安い「CROSSCORE RC」でも31万7900円、前後にサスペンションを備えたMTBタイプの「YPJ-MT Pro」ともなれば74万8000円と、価格面でもe-Bikeの方が高い傾向にあります。
バイク乗りにもメリットがいっぱいなe-Bike
「へたをするとバイクより高い」となると、バイク乗りからすれば、e-bikeは興味すら湧かないかも知れません。ですが、実際に色々なe-Bikeとバイクに乗ってきた筆者の経験から言わせてもらうと、バイク乗りだって楽しめる魅力が満載の乗り物です。
そもそも同じ2輪車ということもありますし、スポーツタイプの自転車ともなれば圧倒的な軽さから、意のままのライディングを手軽に楽しむことができます。特にオフロードを走る人なら、MTBタイプのe-Bikeがオススメです。険しい山中を走る面白さは、エンジン付きのバイクに勝るとも劣らないと感じるはず。
都心ともなると、近くにバイクで走れるようなオフロードはほとんどなくなっていますし、オフロードを楽しむには遠出をするかコースに行かなければならないのが現状。それに比べると、MTBで走れる場所はまだ残っているので、土の上を走る楽しさを味わうのであれば、e-Bikeの方が敷居が低いことは間違いありません。
もう1つ感じているのは、e-Bikeに乗っているとバイクのライディングも上手くなるということ。特にMTBタイプのe-Bikeに乗るようになってからは、オフロードはもちろん、オンロードでバイクに乗るのも上達しているなと筆者は感じています。これは筆者が思っているだけでなく、同じことを言っているプロのライダーが何人もいます。その中の1人である鈴木健二さんに話を聞いてみました。
e-Bikeでバイクのライテクが向上!?
鈴木健二さんは元々モトクロスライダーで、2000年代以降はヤマハのモトクロスレースに関わりながらエンデューロレースに参戦。国内のオフロードレースシーンを牽引してきた存在であり、ヤマハのYPJシリーズのテストライダーなども務めている人です。
鈴木さんがMTBに乗り始めたのは、モトクロスライダーだった時代で「MTBに乗るようになってから、トップレベルのレースで勝てるようになった」と語ります。まだ現在ほど性能が高くなかった時代のMTBに乗ってダウンヒルレースなどに参加したことで、「判断力や瞬発力が向上したほか、バランス感覚なども鍛えられた」とのこと。重量の軽いMTBは、エンジン付きのバイクに比べてライダーが積極的にバランスを取る必要があるので、その部分を鍛えられる効果もあります。
このバランス感覚は、オフロードやレースだけでなく街乗りでも必要なスキル。「体幹トレーニングと同じで日常生活にも役立ちます。MTBほどバランスを取らないといけない乗り物はなかなかありませんから」と鈴木さんは話します。
オフロードを走り込めばタイヤのグリップやトラクションの感覚も磨かれるとのこと。どちらもオン・オフ問わずバイクを操る上でも重要な感覚です。前後にサスペンションのある”フルサス”タイプのMTBであれば、サスペンションの動きを利用してタイヤを地面に押し付ける感覚も学べるのでバイク乗りにはおすすめです。
もちろん、こうした感覚はアシストのないMTBでも学ぶことができますが、オフロードを走り回るとかなり体力を消耗します。山を走り回ると普通のMTBでは1本しか体力が持たないようなルートでも、e-Bikeであれば何本も走れるので、遊びながら技術を磨くことだって可能です。あまり体力に自信がない人でもチャレンジしやすくなっています。
ホンダもe-Bike市場に参入?
現在、バイクメーカーでe-Bikeに力を入れているのはヤマハですが、海外メーカーではFANTIC(ファンティック)や日本には入ってきていませんがKTMなどもe-Bikeを発売しています。先日の東京モビリティショーでは、ホンダもコンセプトモデルという扱いですがMTBタイプのe-Bikeを出展していました。市販化をするかも含めて検討中とのことでしたが、参入を期待したいところです。
また、ホンダは「EveryGo e-Bike」というe-Bikeのサブスクサービスもスタートしています。これは月額9900円〜という料金で最新のe-Bikeに乗ることができて、そのまま購入も可能というサービス。e-Bikeに乗ってみたいけれど予算が心もとない…という方はこうしたサービスを利用するのもいいかもしれません。
MTBのコースなどでも、e-Bikeのレンタルを行っているところがあります。近場にあれば、ぜひ体験してみてください。一度試してみたらイメージが一変するくらい面白い乗り物ですよ。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(増谷茂樹)
昨年の道交法改正によって生まれた新たなカテゴリーが特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)。最高速度20km/h以下の電動モビリティを対象としたカテゴリーで、年齢が満16歳以上であれば、免許不要で[…]
ホンダは先日、2030年までに電動2輪車に合計5000億円を投資することを発表。同年までに30機種の電動モデルを投入することも合わせてアナウンスしました。ホンダはこれまで、電動バイクはリース販売という[…]
クルマの世界に比べて、電動化では遅れを取っているように見えるバイクですが、ここに来てようやく電動化の波がやってきたようです。先日まで開催されていたJapan Mobility Show 2023の会場[…]
最新の関連記事(新型EV/電動バイク)
電動二輪パーソナルコミューター×2機種発表に加え、バッテリーシェアリングサービスも展開 ホンダはインドで、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック […]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
新エンジン、電動スポーツ、電動都市型バイク、全部やる! ホンダは新しい内燃機関と電動パワーユニットの両方で行く! そう高らかに宣言するかのような発表がミラノショー(EICMA 2024)で行われた。ひ[…]
123年以上の歴史で迎える大きな節目として電動バイクの新ブランドを構築 250~750ccのミドルクラスバイクで世界的に存在感を放っているロイヤルエンフィールドが、新しい電動バイクブランド「FLYIN[…]
タイトル争いを制したのはエンジン車の「RTL301RR」 11月3日、全日本トライアル選手権(JTR)の最終第8戦、City Trial Japan 2024 in OSAKA 大会が大阪市中央公会堂[…]
最新の関連記事(自転車)
ヤマハYPJ-MTプロ 概要 [◯] オフロードを駆け抜けるアシストならではの快感 最初に、電動アシストどころか自転車に乗ること自体が久々だったことを白状しておこう。今回試乗したモデルはヤマハのハイエ[…]
電動アシスト自転車×2機種、フル電動自転車×1機種をラインナップ カワサキは、新種の電動3輪ビークル「ノスリス」シリーズを順次発売する。2021年にはクラウドファンディングで電動アシスト自転車版とフル[…]
この4月1日から自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務化され、もうすぐ1カ月が経ちますが、ヘルメット購入はまだこれからという方も少なくないのでは? 一見、帽子と見分けが付かないようなカジュアルなモデ[…]
パスを創造したヤマハとは異なる路線で自転車ライフを豊かに ところで何が新しいの? コネクテッド化によるメリットは? アシストユニットは、ギヤクランクにモーターの力を伝えるクランク合力タイプ。クランク軸[…]
人気記事ランキング(全体)
電熱インナートップス ジャージタイプで使いやすいインナージャケット EK-106:1万5000円台~ ポリエステルのジャージ生地を採用した、ふだん使いをしても違和感のないインナージャケット。38度/4[…]
欧州で登場していたメタリックディアブロブラック×キャンディライムグリーンが国内にも! カワサキモータースジャパンが2025年モデルの「Z900RS」を追加発表した。すでに2024年9月1日に2025年[…]
モデルチェンジしたKLX230Sに加え、シェルパの名を復活させたブランニューモデルが登場 カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やS[…]
誕生から10年、さまざまなカテゴリーで活躍するCP2 MT-09から遅れること4か月。2014年8月20日に発売されたMT-07の衝撃は、10年が経過した今も忘れられない。新開発の688cc水冷パラツ[…]
クリップリフター:クリップ対応の溝幅設定が細かく、傷をつけにくいクロームメッキ仕様 自動車のドアの内張やモール類のクリップをピンポイントで狙って取り外すための5本組リフター。クロームメッキ仕上げの本体[…]
最新の投稿記事(全体)
ZX-25Rターボの250km/hチャレンジに続くZX-4Rターボ トリックスターが製作したZX-4Rターボは、2024年4月の名古屋モーターサイクルショーで初披露された。すでにZX-25Rのターボ化[…]
誕生から10年、さまざまなカテゴリーで活躍するCP2 MT-09から遅れること4か月。2014年8月20日に発売されたMT-07の衝撃は、10年が経過した今も忘れられない。新開発の688cc水冷パラツ[…]
クリップリフター:クリップ対応の溝幅設定が細かく、傷をつけにくいクロームメッキ仕様 自動車のドアの内張やモール類のクリップをピンポイントで狙って取り外すための5本組リフター。クロームメッキ仕上げの本体[…]
何がいま求められているのか、販売の現場で徹底リサーチ! 「ステップをミニフットボードに交換するのに伴って、シフトチェンジペダルをカカトでも踏み下ろせるようにシーソー式にしたいという要望を耳にしますね」[…]
モデルチェンジしたKLX230Sに加え、シェルパの名を復活させたブランニューモデルが登場 カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やS[…]
- 1
- 2