
大阪発のチューニングショップ「スーパーモンキー」が生み出した伝説の一台、ST70-88 Racing。アルミモノコックや風洞設計カウル、88ccエンジンを武器に、ミニバイクの常識を覆す速度記録とレース勝利を成し遂げた、その伝説が令和の今、第18回モンキーミーティングでお披露目された。
●文&写真:ヤングマシン編集部
伝説のチューナー「スーパーモンキー」
東大阪市に拠点を構えていたチューニングショップ「スーパーモンキー」は、ミニバイクという小さな世界において極限性能を追求した異端の存在だ。その頂点に位置するのが「スーパーモンキー ST70-88 Racing」である。
ベース車両はホンダ ダックスであり、そこから徹底した再構築が行われた。車体はアルミ製モノコックのチューブ構造とされ、軽量化と高剛性を両立。中空構造を採用したフレームはレーシングカー開発で知られる童夢の風洞設備を用いて設計されている。
また外装のFRP製カウルも空力性能を徹底的に突き詰めたものであり、小排気量車に空力開発を持ち込むという発想自体が当時はおろか現代でも極めて先鋭的と言えるだろう。
ベースになったダックスの面影は皆無なスーパーモンキー ST70-88 Racing。アルミ製モノコックフレームは中空構造を採用し、その開発には童夢の風洞設備が用いられたという。いたるとこにワンオフパーツが施されている。
隅々までスペシャルパーツを注ぎ込んだ最速記録保持車
エンジンはOHC単気筒をベースに排気量を88ccまでボアアップし、高回転・高出力化を実現。さらに駆動系にはBBS製のマグネシウムクラッチボディ(ワンオフ)を採用、回転系の軽量化とレスポンス向上を図った。足まわりも抜かりはなく、これまたワンオフ発注したカヤバ製ダンパーは3段階調整式とされ、状況に応じたセッティング変更を可能としていた。加えてタイヤも特注、路面とのコンタクト性能を最大限に引き出していたのである。
このマシンは、まず1978年8月に筑波サーキットおよび鈴鹿サーキットで開催されたミニバイクレース(10インチ以下SPLクラス)において優勝を果たし、その実戦性能を証明した。そして翌9月、富士スピードウェイでのオートバイ雑誌企画において、最高速度141.73km/h、0-400m加速18.09秒という驚異的な記録を達成。ミニバイクの常識を根底から覆したのである。
スーパーモンキーの本質は、「小さい=遅い」という固定観念へのアンチテーゼにある。限られた排気量の中で、エンジン、車体、空力、足まわりのすべてを高次元で融合させることにより、絶対性能を引き上げるという思想だ。ST70-88 Racingはその結晶であり、単なる記録マシンではなく、総合技術による完成形であった。
レース用に設計され、無駄を一切省いたスパルタンなアピアランス。1978年に富士スピードウェイで最高速度141.73km/h、0-400m加速18.09秒の最速記録を達成。写真の個体は当時そのままの姿を現代に蘇らせたレストアモデル。
3年の歳月をかけて蘇ったフルレストアモデル
第18回モンキーミーティングの会場にブース展開していた「Super monkey Special Racing ST70-88 Restre Project」は、その名の通り出展者たちの飽くなき努力によって実現したレストアモデルだ。
ST70-88は、世界にたった1台しかない個体であり、時を経てエンジンをはじめとした多くのパーツが失われていった。半世紀近い時代の流れに埋もれそのまま忘れ去られてもおかしくなかった。
しかし熱心なマニアが多い4ミニの世界。アルミモノコックフレームとFRPカウル、クラッチボディ他、現存する当時もののパーツは少なかったが、エンジンやマフラーなど多くのパーツが当時撮影された写真を頼りにひとつづつワンオフ製作されて蘇った。
そのこだわりは並大抵ではなく、マフラーも完全ハンドメイドによる復元だ。
失われたパーツはSuper monkey Special Racing ST70-88 Restre Project」の手によって復元。その多くは当時撮影された写真を元に地道な手作業でつくられ、マフラーもハンドメイドだ。なお空冷フィンが刻まれたドラムブレーキは当時の本物。
もはや文化遺産級?時代をつくったST70-88 Racing
大メーカーではなく、一地方のチューニングショップがここまでの完成度に到達したレーサーを世に出し、半世紀を経て愛好家が当時そのままの姿を取り戻して衆目に公開したスーパーモンキー ST70-88 Racing。
スーパーモンキーはミニバイクという枠組みの中で技術の限界に挑み続け、その成果をST70-88 Racingという結果を残した。その記録と思想は今なお特異な輝きを放ち続け、4ミニという日本独自の成熟したオートバイカルチャーの中で蘇った。
4ミニのチューニング史を語る上で欠かせない文化遺産である……と言っても過言ではないスーパーモンキー ST70-88 Racing。 第18回モンキーミーティングは、ホンダが紡いできた4ミニの文化的価値や、それを題材としたチューニングの奥深さまでをも強烈に感じさせる場になった。
残念ながらオリジナルのチューニングエンジンは失われていたが、レストアプロジェクトの手により当時の姿を取り戻している。写真から寸法を導き出してパーツのワンオフ製作を行うなど、地道で執念のこもった3年間にわたる成果だ。
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