
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。この記事ではホンダCBX400Fを巡る歴史について紹介する。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHIVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
400cc以下なら4気筒より2気筒が優位?
CBX400Fが誕生するまでの経緯は、’17年型CBR250RRや’92年型CB400SF、’86年型NSR250Rなどの生い立ちに通じるものがある。
もちろん、それらとCBX400Fのデビュー時がまったく同じだったわけではないけれど、各ジャンルで後手に回ったときのホンダは、ライバルメーカーが唖然としてしまうほどに強力で魅力的なモデルを開発し、瞬く間に各ジャンルのリーダーになることが珍しくないのだ。
などというメーカーに対する印象はさておき、CBX400Fの素性を語るうえで欠かせないのは、’75年10月に施行された中型2輪免許制度に端を発する、日本独自の400ccクラスである。当初のこのクラスを牽引したのは、排気量を408→398ccに縮小したSOHC2バルブ並列4気筒のCB400フォアIIだったものの、製造コストと販売価格の折り合いが上手くいかなかったようで、’76年に販売が終了。
以後のホンダは、"400cc以下なら4気筒より2気筒が優位"という説を唱え(当時の400ccは2気筒が主力で、4気筒を作っていたのはホンダだけだったのだが)、新規開発した並列2気筒のホークシリーズで好調なセールスを記録する。 その一方で、中型2輪免許を取得したライダーからは、4気筒の復活を望む声が挙がっていた。
それに真っ先に応えたのが’79年にカワサキが発売したZ400FXであり、その対抗馬として、軽量高出力を推し進めて登場したヤマハXJ400(’80年)、さらにクラス初の4バルブを採用したスズキGSX400F(’81年)だったのである。この3台によって400ccクラスの勢力図は激変し、ホークシリーズの人気は急速に衰えていくことになる。
とはいえ、DOHCヘッドを得たカワサキ/ヤマハ/スズキの400cc並列4気筒車がホークシリーズの性能を全面的に上回っていたかと言うと、必ずしもそんなことはなかったのだが、当時の中型免許ライダーの多くは"4気筒ありき"で、2気筒車との具体的な性能差はあまり話題にならなかった。
もっとも’80年初頭から第二世代の400cc並列4気筒車・CBX400Fの開発に着手したホンダが、ライバル勢との差別化を図るうえで意識したのは性能である。前述した説を自らで覆すべく、ホークシリーズを上回る動力性能と親しみやすさを念頭に置いて、CBX400Fは開発されたのだ。
開発段階のデザインスケッチはどことなくCB-Fシリーズに近いイメージ。ホイールのデザインは、市販モデルとはまったく異なっている。
【400ccクラス初の並列4気筒車】並列4気筒のパイオニアであるホンダは、’72年にCB350フォア、’74年にその進化型となるCB400フォアを発売。当時の4スト400ccロードスポーツは、ほとんどが並列2気筒だった。
’81年当時のライバルは2スト&4スト4発
CBX400Fデビュー時の好敵手。最高出力はZ400FXが43psで、他3車は45psだったが、’82年のZ400GPとGSX400FSインパルスはCBX400Fと同じ48psを発揮。翌’83年には水冷化されたXJの後継機・XJ400Zが55psに達し、さらに翌’84年にはRZの進化型・RZ350RRが同値に到達する。
高性能化に対する市場からのアンチテーゼ
DOHCヘッドの400cc並列4気筒としては最後発となったCBX400Fは、多様な新技術を随所に導入しながらも、じつにまとまりがいいモデルだった。また、他社の並列4気筒車が大型免許を所有しないライダーの欲求を満たすべく、車格をやや大柄に設定したのに対して、小型軽量化を徹底追及していた点も新しかった。
もちろん、当時の重要課題だった最高出力に抜かりはなく、クラストップの48psをマークしていたのだけれど、車重が前任に当たるホークシリーズと同じ180kg台で、ライバル勢より軸間距離が短くてシートが低く、ライディングポジションがコンパクトかつスポーティーなCBX400Fは、単に優れた動力性能を備えていただけでなく、同時代の400ccクラスではダントツにフレンドリーだったのである。
ただし、そのフレンドリーさが注目される機会はあまり多くなかったようで、本格的な性能競争に突入した’82年以降の400ccクラスは、扱いやすさよりも最高出力や旋回性能、豪華装備でCBX400Fの凌駕をねらったライバルが続々と登場。
ホンダ自身も対抗機種として’82年末にVF400F、’83年末にはCBR400Fを世に送り出し、この2台が登場した時点でCBX400Fはホンダ400の主力の座を退くこととなった。 が、その世代交代に納得できなかった日本のライダーは、ホンダにCBX400Fの復活を希望するラブコールを送り、’84年10月からは市場の声に応える形で、II型としての再生産がスタート。
改めて振り返るとこの復活は、高性能化を突き進み始めた当時の400ccクラスに対する、市場からのアンチテーゼだったのかもしれない。 もっとも、そのアンチテーゼへの回答となる並列4気筒ネイキッドを、4メーカーが発売するのは’80年代末になってからだった。
ちなみに、黎明期のネイキッドブームを牽引したのは、Z400FXの系譜を引き継ぐカワサキ・ゼファーだったものの、’92年以降はCB400SFが王座に君臨。昨今では年間販売台数で首位を獲得することはなくなったけれど、CBX400Fを彷彿とさせる動力性能とフレンドリーさを併せ持つ、CB400SFの人気は現在でも衰えていない。
【カタログにはスペンサーが登場】初代のカタログには、後に世界GP500/250チャンピオンとなるフレディ・スペンサーが登場。ただしCBX400Fが登場した’81年秋の日本では、スペンサーは知名度抜群のライダーではなかった。
【’80年代初頭のTT-F3/SS400レースを席捲】HRCの前身となるRSCがレーシングキットパーツを発売したこともあって、’80年代初頭のTT-F3/SS400クラスでCBXは大活躍。’82年の鈴鹿4耐では27台のCBXが決勝に進出(予選通過は60台)。
ライバルとの比較テストで総合首位を獲得
CBX400Fの実力を把握するべく、ヤングマシンでは’82年7月号でライバル勢との比較テストを敢行。筑波サーキットのラップタイムとゼロヨン加速では2サイクルのRZ350と僅差の2位を、一般道での1000kmテストではZ400GPと同票の首位を獲得。高性能と快適性を高次元で両立していたことが分かる。
筑波ラップタイム
| 順位 | 車両 | タイム |
|---|---|---|
| 1 | Y.RZ350 | 1分 12秒 31 |
| 2 | H.CBX400F | 1分 12秒 72 |
| 3 | K.Z400GP | 1分 13秒 60 |
| 4 | Y.XZ400 | 1分 14秒 91 |
| 5 | H.SUPER HAWK Ⅲ | 1分 15秒 42 |
| 6 | S.GSX400E | 1分 15秒 63 |
| 7 | Y.XJ400D | 1分 16秒 07 |
| 8 | S.GSX400F | 1分 16秒 88 |
0-400m 加速(到達速度)
| 順位 | 車両 | タイム(到達速度) |
|---|---|---|
| 1 | Y.RZ350 | 13秒 77(150㎞/h) |
| 2 | H.CBX400F | 13秒 79(148㎞/h) |
| 3 | K.Z400GP | 14秒 13(142㎞/h) |
| 4 | Y.XZ400 | 14秒 27(141㎞/h) |
| 5 | H.SUPER HAWK Ⅲ | 14秒 57(143㎞/h) |
| 6 | S.GSX400E | 14秒 59(141㎞/h) |
| 7 | Y.XJ400D | 14秒 81(139㎞/h) |
| 8 | S.GSX400F | 14秒 99(138㎞/h) |
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