
ホンダが2025年10月24日に発売した新型「CL250 E-Clutch」に試乗したのでお伝えしたい。シート内部の素材変更やメーターの視認性向上など細かい熟成も受けているが、なんといってもEクラッチ搭載仕様の追加が最大のトピックだ。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:楠堂亜希 ●外部リンク:ホンダ
抜群に上手い半クラッチ制御、しかも再現性は完璧
正直言って驚いた。兄弟車であるレブル250で先行してデビューしていた250ccクラスのHonda E-Clutch仕様だが、10月に発売されたCL250ではさらに異なる制御が感じられたのだ。
レブル250 Eクラッチから機構的に何かが変わっているわけでも、制御ベースが根本から変わったわけでもないようだが、筆者にとってはこれまでに乗ったEクラッチ搭載車の中で最も好ましいフィーリングだった。
実を言えば、12月24日に公開予定のヤングマシン電子版に掲載するため、岡崎静夏さんに試乗インプレッションをお願いしていたのだが、取材の合間に乗らせてもらったところ、あまりにも出来栄えが素晴らしかったので記事を書かずにいられなかった次第。なので筆者の写真はなく、岡崎静夏さんのライディングシーンなどを使わせていただくことをご了承いただきたい。
【CL250 E-Clutch】主要諸元■全長2175 全幅830 全高1135 軸距1485 シート高790(各mm) 車重175kg(装備)■水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 249cc 24ps/8500rpm 2.3kg-m/6250rpm 変速機6段 燃料タンク容量12L■タイヤサイズF=110/80R19 R=150/70R17 ●価格:70万4000円(Eクラッチなしは64万9000円・車重172kg)
乗りはじめて最初の数メートルで気付いたのは半クラッチの短さだ。加速のためにスロットルを開ける手前、スロットルケーブルの遊びを取ってケーブルの張りを感じるくらいの微細な操作の段階でEクラッチが反応し、アイドリングからわずかに回転が上がったところでクラッチミートがはじまる。これが本当に印象的で、余計な回転上昇を招くことなく即座に加速しはじめる。
スロットル開度が小さければ最小限の半クラッチで加速しはじめ、あっという間にクラッチが繋がり切る。単気筒ならではの強い低速トルクを活かした制御であり、これで発進に遅れを感じるようなこともない。
スロットルを大きめに開けて発進すれば、そのぶん半クラッチが長くなり、しっかり回転を上げながらクラッチが繋がっていく。この塩梅が最高で、エンジンのトルクを余すところなく加速力に変換しているようなフィーリングだ。
シフトアップしていくと、また感動する。発進加速以上に半クラッチが短く、驚くほど素早くスムーズにシフトアップすることが可能なのだ。駆動力の途切れは極めて小さく、これまでに乗ったことのあるクイックシフター搭載車の中でも1番といっていいかもしれないほど、筆者にとって好ましいフィーリングだった。おそらく多くのライダーにとっても同じように感じられるんじゃないだろうか。
また、あまり速度を出さず矢継ぎ早にシフトアップしていっても、低回転域でのクラッチの粘りが素晴らしく、アイドリング回転数を割り込む寸前まできっちり繋がったままをキープ。回転が下がりすぎて半クラッチになっても、少し再加速すればまたすぐにクラッチが繋がり、不必要に長い半クラッチで回転数が上がりすぎることもない。
このあたりは、4気筒ゆえにやや高めの回転数を保つようセッティングされているCBR650R/CB650Rとはかなり異なる味付けだ。
半クラッチが短いため、フラットダートをトコトコ走るときに使う低回転域でもトラクションが途切れる場面が少なく、ダイレクトなスロットルワークが楽しめた。
一方で、スロットル操作をしないシフトダウンに関しては、オートブリッパー(自動的にスロットルをあおって回転数を合わせる機構)こそないものの半クラッチで回転差を上手に逃がしてくれる。単気筒ゆえのエンジンブレーキの強さを緩和するため、半クラッチはやや長めだが、それでも最小限の半クラッチでスムーズなシフトダウンを体験させてくれる。
このほか、スロットルを開けたままのシフトダウンや、スロットルを戻しながらのシフトアップもソツなくこなし、1時間足らずの試乗では隙を見つけることができなかった。切れてほしいところで切れ、半クラッチになり、繋がってほしいところで繋がる。そのメリハリがとても利いているとともに、ちょっと引くぐらい緻密なことをやっている、そんな印象だった。
おそらく、ごく一部のエキスパートを除いて、これよりも上手なクラッチワークを手動で実現するのは困難だろう。また、クラッチワーク以外に意識を取られているような場面でも全く同じ動作を毎回再現してくれる点については、エキスパートでもそうそう真似ができないものだと思う。
こうしたフィーリングをもとに、ホンダに『CL250はレブル250に比べてEクラッチの制御をどのように変えているんですか?』という質問を送ったところ、下記の回答を得た。
<回答>
CL250の制御プログラムはRebel250と共通化しつつ、CL250専用にセッティングすることで個別のキャラクターを表現しています。
主な特徴は以下の2点です。
ゆったりとした乗り味を重視したRebel250に対して、比較的キビキビとした走りを表現することを目指したCL250は、変速時の半クラッチ制御の繋ぎ方を強めにセッティングすることで、メリハリの利いた変速フィーリングとしています。
また、もともと両者には吸排気仕様の差異によるENGトルク特性や二次減速系の丁数、タイヤ周長などの違いがありますが、その中でもCLの狙いである『キビキビとした走り』を演出するために、CL250は発進時のエンジン回転を少しだけ上ずらせることで高揚感のあるフィーリングとしています。
というわけで、CL250に合わせて練り込まれたEクラッチ制御は、ストリートの普通の走りにフォーカスしながら元気のいいキャラクターを演出しているのである。
ちなみに、他の機会にホンダのエンジニアに聞いたところでは、DCTについては(特に発表はしていなくても)毎年のようにデュアルクラッチの制御をアップデートし続けているという。
Eクラッチも同様になるかはわからないが、開発者の中にもノウハウは毎年のように蓄積していくはず。今後日本への導入が期待されるEクラッチ搭載車としては、CB750ホーネット/XL750トランザルプやCBR400R/NX400(欧州ではCBR500R/NX500)がEICMAで発表されており、重慶ショーではCB500SFやCBR500R FOURもデビューしている。今後の展開がますます楽しみだ。
そのほかのマイナーチェンジ部分は?
ついでのようになって申し訳ないが、内部素材が変わったというシートは体重81kgの筆者にとってちょうどいいストローク感になっていた。従来型だとやや沈み込みが早く、筆者の体重だと残ストロークが少ない印象だった。
メーターに関しては視認性を向上したというが、直接比較できたわけではないので前作よりもいいとかの結論めいたことは言えない。それでも、映り込みは少なめで視認性良好だったことは確かだ。
レブル250ではEクラッチユニットがスネに当たった(それをホールドに利用できた)
プロライダーの岡崎静夏さんによる試乗インプレッションは、12月24日公開の電子版ヤングマシンに掲載予定。そちらもお楽しみに!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ホンダ [HONDA] | 試乗インプレッション/テスト)
ダートや自然や冒険も気軽に楽しめる秀逸作! 1960年代から展開されてきたハンターカブの発展形として、日本では1981年10月から約2年間販売されたのがホンダのCT110。このモデルをモチーフとしなが[…]
バイクはお兄さんの影響 メグミさんは昔からバイクに興味があったのだと言います。 「兄が二人いて、どちらもバイクに乗っていたんです。小さいときからその様子を見ていたので、自然に自分も乗りたいと考えるよう[…]
丸山浩直伝! ホンダCB1000Fの嗜み やっぱりCBはストリート=公道のヒーローだった。 まず何が素晴らしかったかと言えば、低速域におけるトルク感とかあのドロドロっとした大排気量直4CBならではのフ[…]
共通の仕様変更はわずかだがその効果は想像以上だった 2017年4月に発売され、翌2018年から軽二輪クラスのベストセラー街道をばく進中なのが、ホンダのレブル250だ。今年は一部の仕様変更とともに、待望[…]
フロントまわりの軽さも操縦しやすさに大きく貢献 猛暑が続いていても、やっぱりバイクに乗りたい…というわけで、今月はCB750 HORNETでプチツーリングしてきました! このバイクは、アドベンチャー系[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA] | 新型軽二輪 [126〜250cc])
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
通勤からツーリング、サーキット走行まで使えるカウル付き軽二輪スポーツ 日本の道に最適といえるサイズ感や、通勤/通学からツーリングまで使える万能さが軽二輪(126~250cc)の長所。スクーターやレジャ[…]
共通の仕様変更はわずかだがその効果は想像以上だった 2017年4月に発売され、翌2018年から軽二輪クラスのベストセラー街道をばく進中なのが、ホンダのレブル250だ。今年は一部の仕様変更とともに、待望[…]
10/1発売:カワサキ「Ninja ZX-25R SE/RR」 250ccクラスで孤高の存在感を放つ4気筒モデル、「Ninja ZX-25R」の2026年モデルが早くも登場する。今回のモデルチェンジで[…]
126~250ccスクーターは16歳から取得可能な“AT限定普通二輪免許”で運転できる 250ccクラス(軽二輪)のスクーターを運転できるのは「AT限定普通二輪免許」もしくは「普通二輪免許」以上だ。 […]
人気記事ランキング(全体)
KTMの進化ポイントを推測する 第17戦日本GPでマルク・マルケスがチャンピオンを獲得した。ウイニングランとセレブレーションは感動的で、場内放送で解説をしていたワタシも言葉が出なかった。何度もタイトル[…]
ナナハン並みの極太リヤタイヤに見惚れた〈カワサキ GPZ400R〉 レーサーレプリカブーム真っ只中の1985年。技術の進化に伴い、各社はレースで培ったテクノロジーをフィードバックさせたモデルを多く打ち[…]
前バンクはクランクリードバルブ、後バンクにピストンリードバルブの異なるエンジンを連結! ヤマハは1984年、2ストロークのレプリカの頂点、RZシリーズのフラッグシップとしてRZV500Rをリリースした[…]
ボルドールカラーのCB1000Fがアクティブから登場 アクティブが手掛けるCB1000Fカスタムが発表された。CB-Fといえば、純正カラーでも用意されるシルバーにブルーのグラフィックの、いわゆる“スペ[…]
超高回転型4ストローク・マルチのパイオニアはケニー・ロバーツもお気に入り 今回ご紹介するバイクは1985年春に登場した超高回転型エンジンを持つヤマハFZ250 PHAZER(フェーザー)です。 フェー[…]
最新の投稿記事(全体)
抜群に上手い半クラッチ制御、しかも再現性は完璧 正直言って驚いた。兄弟車であるレブル250で先行してデビューしていた250ccクラスのHonda E-Clutch仕様だが、10月に発売されたCL250[…]
アイルトン・セナ 1992年 ショウエイX-4 1992年のベルギーGPでアイルトン・セナがレースで着用した本物。お値段は驚愕の1億4360万円で落札されています。ヘルメット自体はショウエイX-4レー[…]
バイクは、心と身体をひとつにするスポーツ。心の健康法そのものです。 アメリカは情報革命の最先端を行く国です。そのアメリカの製薬業界が今、開発にもっとも力を入れてるのは心の病=うつ病の薬と聞きます。 医[…]
新型「ニンジャZX-10R」は国内導入は2026年夏か まずは欧州と北米で発表されたスーパースポーツの旗艦、新型「ニンジャZX-10R/RR」の話題だ。 最大の特徴は、フロントカウルに設けられた大型の[…]
[プレミアム度No.1] エボリューション集大成モデル。スプリンガースタイルがたまらない!! ストック度の高さはピカイチ!! 取材時に年式が最も古かったのが1998年式ヘリテイジスプリンガー。この車両[…]
- 1
- 2





































