
もうすぐ二輪メディア歴50年を迎えるベテランライターが、日本におけるバイク黄金時代のアレコレを実体験と共に振り返る昭和郷愁伝。今回はモンキーと共にミニ&レジャーバイクの先駆けとなった初代ダックスについて回想します。
●文:ヤングマシン編集部(牧田哲朗) ●写真:YM Archives 本田技研工業株式会社
オモチャの延長から生まれたミニ&レジャーバイク
自分がバイクに乗り始めた1970年代前半の日本は、ちょうど戦後の高度成長期が真っ盛りの頃。バイクが働く乗り物から楽しむ乗り物へと移り変わった時代で、そこで生まれた象徴的なモデルがミニ&レジャーバイクといったオモチャのような楽しいバイク達だった。
そのルーツは当時のアメリカで流行っていた子供用ギフトバイクで、これに保安部品を付けて国内販売を開始したのが最初。今はなき多摩テックの遊具から市販車へと発展した1967年の初代ホンダ・モンキーZ50Mからとなる。元が子供用だから小さくて軽いのは当然として、ディフォルメしたスタイルがまぁ~とにかく可愛いかったね。そして、4年後の1971年にモンキーに追加する形で登場したのが最初のダックスホンダST50/70。2022年にひとまわり大きくなって復活したダックス125の元祖となるバイクでした。
1967年の初代モンキーの登場により、小排気量クラスのレジャーバイクが人気に。この写真は本誌1973年1月号のレジャーバイク特集のもので、左からダックスST50&モンキー、右はスズキ・バンバン125。揖影地は山中湖周辺と思われる。
ダックスが打ち出した「ガソリンタンク内蔵&クラッチ操作レス」
世界的なヒット作となった往年のダックスは、とにかくエポックメイキングでね。独自のプレスバックボーンフレーム内にガソリンタンクを内蔵することで、タンクを抱え込まない新しいスタイルを提案したんだ。見た目もシームレスでスマートだから、バイクの予備知識がない人でも抵抗なく跨いでみることができた。こういう気配りって大事なんだよね。
さらには、今のスーパーカブと同じくクラッチ操作がいらない自動遠心クラッチだから、初心者にはありがたい。いきなりクラッチ付きから始めると、まず半クラ発進ができないからね。先輩から乗り方をレクチャーされても、「半クラとかエンブレってドコに付いてるんですか?」っていう、笑い話になるような会話も普通にあった。自分も子供の頃に50ccながらいきなりクラッチ付きでデビューした(裏庭でね)から大変だった記憶がある。どんなベテランライダーでも、入口には半クラッチ操作という壁があった訳で、自動遠心クラッチから始めるってのは1つの正解なんですね。
車体が小さくてクラッチ操作もないから、初めて人でも気楽に楽しめたダックスシリーズ。いつの時代もホンダの自動遠心クラッチはバイク入門の敷居を低くしてくれるんだよね。ダックスの広告展開では、女性への訴求が積極的だった。
新車で6万円台、中古なら1万円切り
さらには、価格設定も魅力でした。1969年当時の新車価格は50ccで6万6000円、70ccで+3000円の6万9000円。たくさん売れたので中古車も必然的に多く、さらに安い。極めつけは友達間での個人売買価格。知り合いの知り合いで~といった繋がりで適応された当時のお友達価格は、スーパーカブ系が3000円ぐらい、ダックスやミニトレあたりで5000円~1万円ぐらいと超破格だったw。物価が今とは違ったとはいえ、現在の感覚なら3万円内の世界観ですよ。とにかく安かったから、これでバイクに乗り始めたってライダーも多かったよね。
そうして当初は人気のダックスだったけど、他メーカーからも多くのミニ&レジャーバイクが登場したことで、徐々に人気は薄れていったかな。そこで1979年のダックスでは、当時のアメリカンブームにあやかってクルーザー風としてみたけど長続きはせず、いったん歴史に幕を閉じることに。1995年には12V電装+初期型テイストのフォルムで復刻したけど、排ガス規制もあってこれも1999年に終了となってしまった。
1995年に復活したダックスは、パッと見は旧作と同イメージながら、フレームから作り直されたオールニューモデル。カタログにはモチーフとなっているダックスフントも登場した。
初代の魅力は現代版に継承&拡張されている
そうして記憶の彼方へと消えていたダックスだったけど、現行のモンキーに追従して125ccで現代に蘇ってくれたのはうれしいね。当時のシルエットを再現したスタイリングで、前後12インチタイヤとした車格も実用的なサイズ感。昔の8インチ時代のダックスやモンキーに乗っていた時は、よく「サーカスの熊さん」って言われたけど、この大きさならそんなこと言われないで済みそうだw。そもそも、タンデム対応の車格だしね。
初代と同様に自動遠心クラッチを組み合わせている点もダックスならでは。5速マニュアル仕様の追加を期待する人も多いだろうけど、ダックスといえばクラッチレバーレスが基本だし、なによりも敷居が低く設定できる。可愛くて手軽なサイズでエンストなしとくれば鬼に金棒。ベテランの道楽用にもいいけれど、娘や孫達の入門バイクにもうってつけだよね。これなら初期型ダックス同様に、新型も多くのライダーを生んでくれそうだな~。
右が初期系の’70sダックスで、左が現行型のダックス125だ。サイズ感は一回り違うが、新型でもわざわざプレスフレームを新造するなど、ユーザーフレンドリーなコンセプトと個性的なスタイルは見事に継承されている。
こちらは後ろ姿の比較。
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