十分なエンジン出力を持ち、高速道路も走れて普通二輪免許で運転できる400ccのバイクは、普通二輪免許の最高峰であると同時にベテランの“ちょうどいい”にも応えるクラス。ところで、やっぱり愛車選びにはやっぱり足着きって気になりますよね?
●文:ヤングマシン編集部
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc
400ccクラスは、普通二輪免許を取ってから間もないビギナーも選ぶことができる排気量帯で、16歳から乗ることができる。
そんな400ccクラスだが、250cc以下に比べると車重もそこそこあるため、足着き性はけっこう気になるところ。ここがとっつきやすければ、ビギナーには大きな不安をひとつ取り除けることになるはずだ。
もちろんビギナーだけではなく、小柄なライダーや体力に自信のない方などにも、シート高は気になるところだろう。そこで本記事では、シート高で区切った愛車選びをお届けしてみたい。
シート高が低いことのメリットは?
足着きがいい!
まず地面が近い安心感があって、停止する際に路肩などを探す必要がなくなる。足着きがよければ停止時に車体を支えやすく、またグラッときたときにも踏んばりが利いたり、怪我を避けて飛び降りる際にも余裕が生まれる。
シートからステップが近い!
普通に乗っているとさほど気にならないかもしれないが、たとえばハングオフなど下半身をオフセットした乗り方では外側のステップに足が届くか届かないか、シートとステップ間の距離がけっこう大事になる。もちろんリヤブレーキ操作やギヤチェンジ操作も安心だ。
マシンとの一体感を得やすい
ライダーが車体の重心に近付くため、スポーティな走行において上半身を伏せなくても一体感を得やすいのがメリット。また、ハングオフ時なども路面が近くて安心感がある。
シート高が低いことのデメリットは?
シートからステップが近い!
メリットのところと同じ文言になってしまうが、体格によっては膝の曲がりがきつくなって長時間の走行で脚が疲れやすくなることも。また、ツルシの状態ではペダル位置が合わないこともあるので、バイクショップで調整してもらうといい。
視点が低い
上半身の前傾度にもよるが、シート高が低いとそのぶんライダーの視点も低くなり、見晴らしや周囲への視野という意味ではやや不利になる。
ダイナミックさには欠ける
スポーティな走行においての話だが、シート高が高いほうが倒し込みの鋭さやダイナミズムを感じやすい傾向になる。
シート高にまつわるお話
ライダーのスキルが高くなっていけば、シート高はほとんど気にせず乗れるようになる。無理をして両足ツンツンになるよりは、お尻の位置を着きたいほうの足側にオフセットして、片足でしっかり体重を支えられるようにしたほうが安心。また、信号での停止時などは路肩の縁石を利用するといった手も定石だ。
跨る際にシートに膝などが当たってしまう場合は、上半身をなるべく前に倒したほうが脚を高く上げることができる。ただ、人によっては上半身直立でも顔を後ろに向けたほうが上がりやすいなど、身体のクセによっても異なるので自分自身を観察しながらいい方法を見つけてほしい。
ちなみにシート高でおおよその足着き性は想像できるが、シート自体の形状やフレームの幅、ステップ位置などによって同じシート高でも足着き性はけっこう変わってくる。走っているときの快適性を求めればシートは幅広になっていく傾向だ。これは実際に跨って試すのが一番早い。
【2024年9月版】シート高780mm以下の400ccバイク10選!
カワサキ エリミネーター/S:735mm
ニンジャ400/Z400(シート高785mm)と共通のスポーティな並列2気筒エンジンを搭載し、往年の車名が復活したモデル。カテゴリー的にはクルーザーだが乗り味は低く長いネイキッドといった感じで、非常に扱いやすくロングランも疲れない特性になっている。ニンジャ400/Z400ほどスポーティではないかもしれないが、ワイディングロードも得意分野だ。シート高735mmという数値から期待する通り足着き性は抜群にいい。2024年モデルで追加されたプラザエディションは、SE並みの装備としながらスタイリングはスタンダードに準じたもの。
主要諸元■全長2250 全幅785 全高1140 軸距1520 シート高735(各mm) 車重178kg(装備)■水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 398cc 48ps/10000rpm 3.8kg-m/8000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量12L■タイヤサイズF=130/70-18 R=150/80-16 ●価格:81万4000円~91万3000円 ●色:黒/SE=黒×濃緑、青×黒/プラザエディション=カーキ、灰 ● 発売日:2024年3月23日 ※諸元はSE
ホンダ CB400スーパーフォア/スーパーボルドール:755mm
1992年に初代が登場して以来、400ccの代表格にして扱いやすい教習車としても採用されてきたCB400スーパーフォア/スーパーボルドール。2022年10月末をもって生産終了となっているが、ホンダの公式サイトには今も〔生産終了〕の但し書き付きで掲載されている。きわめて扱いやすい並列4気筒エンジン、乗車状態でサスペンションが沈み込むため数値以上にいい足着き性など、今も名車として復活が期待されている。ネイキッドがスーパーフォア、ハーフカウルでツーリング適性を高めたのがスーパーボルドールだ。
主要諸元■全長2080 全幅745 全高1160 軸距1410 シート高755(各mm) 車重206kg(装備)■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 398cc 56ps/11000rpm 4.0kg-m/9500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量18L■タイヤサイズF=120/60R17 R=160/60R17 ●価格:88万4400円~108万4600円 ●色:赤、トリコロール、黒 ●発売日:2018年11月26日 ※諸元はスーパーボルドール
スズキ バーグマン400:755mm
前身の「スカイウェイブ400」から「バーグマン400」にモデルチェンジして2021年に登場。エンジンを最新排出ガス規制に適合したほか、トラクションコントロールシステムやスズキデュアルスパークテクノロジー、スズキイージースタートシステムを採用した。LEDの左右2眼ヘッドライトやリンク式モノショックリヤサスペンション、容量42Lのシート下トランクスペース、12Vのアクセサリーソケットなど装備も充実している。足着き性はほぼ数値通りだが、スクーターゆえサイドカバー周辺にはややボリューム感がある。2024年モデルで価格改定。
主要諸元■全長2235 全幅765 全高1350 軸距1580 シート高755(各mm) 車重218kg(装備)■水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 399cc 29ps/6300rpm 3.6kg-m/4900rpm 無段変速 燃料タンク容量13L■タイヤサイズF=120/70-15 R=150/70-13 ●価格:89万5400円 ●色:マット銀、黒、灰 ●発売日:2024年9月6日
ヤマハ YZF-R3:780mm
毎日乗れるスーパーバイクを標榜するだけあって、同クラスのなかでもユーザーフレンドリーな造りになっている。YZF-R1譲りのディテールを持つトップブリッジや倒立フロントフォーク、LED2眼ヘッドライトといった装備も魅力だ。足着き性もかなり安心感がある。
主要諸元■全長2090 全幅730 全高1140 軸距1380 シート高780(各mm) 車重169kg(装備)■水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 320cc 42ps/10750rpm 3.1kg-m/9000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量14L■タイヤサイズF=110/70R17 R=140/70R17 ●価格:72万6000円 ●色:紫、青、黒 ●発売日:2023年5月10日
ヤマハ MT-03:780mm
シート高は兄弟車のYZF-R3と同じ780mmで、ライディングポジションは上半身が立ち気味になる。フル液晶メーターや倒立フロントフォーク、250cc版がバイアスなのに対しラジアルタイヤを装着するなど装備も充実している。R3と同じく足着き性にはかなり安心感がある。2024年7月30日に新色が価格据え置きで発売予定だ。
主要諸元■全長2090 全幅755 全高1070 軸距1380 シート高780(各mm) 車重167kg(装備)■水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 320cc 42ps/10750rpm 3.1kg-m/9000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量14L■タイヤサイズF=110/70R17 R=140/70R17 ●価格:68万7500円 ●色:灰、青、艶消し灰 ●発売日:2024年7月30日
ヒョースン GV300S ボバー:710mm
水冷60度Vツインエンジンを搭載する韓流クルーザーで、シート高はクラスで最も低い710mmを誇る。車体がスリム、かつフラットハンドルはミッドコントロールのステップ位置などもな足着きにはかなり有利な構成といえそうだ。
主要諸元■全長2080 全幅750 全高1050 軸距1425 シート高710(各mm) 車重172kg(装備)■水冷4ストロークV型2気筒SOHC4バルブ 295.9cc 29.4ps/8500rpm 2.61kg-m/6500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量12.5L■タイヤサイズF=120/80-16 R=150/80-15 ●価格:69万3000円 ●色:艶消し黒
ロイヤルエンフィールド メテオ350:765mm
インドで受け継がれた英国ブランドによる空冷単気筒クルーザー。シートはボリュームがたっぷりあるのでやや脚が広がり気味になり、シート高の数値ほど足着きに余裕があるかは実車で確認の必要があるだろう。ロングストローク設定のエンジンによる味わい深い走りや長時間のライディングでも疲れにくいシートや車体特性など、快適性は満点だ。同じエンジンを搭載する前後17インチホイールのネイキッド、ハンター350はシート高790mmだ。
主要諸元■全長2140 全幅845 全高1310 軸距─ シート高765(各mm) 車重191kg■空油冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 349cc 最高出力20.2ps/6100rpm 最大トルク2.75kg-m/4000rpm 変速機5段リターン 燃料タンク容量15L■ブレーキF=ディスク R=ディスク タイヤサイズF=100/90-19 R=140/70-17 ●価格:71万600円~74万3600円 ●色:4シリーズ全9色 ●発売日(オーロラ):2024年3月15日
イタルジェット ドラッグスター300:770mm
シート高で選ぶ……というコーナーにふさわしいのかわからない異端のスクーターがドラッグスターだ。標準モデルの2色のほか、スペシャルバージョンのマロッシ(Malosso)がある。エンジンは水冷4ストローク単気筒で、S.I.S.フロントサスペンションによって衝撃緩衝と操舵機能を分離することでブレーキングでほとんどノーズダイブが起こらない特性になっている。車体は比較的スリムだが、足まわりがハードめなので乗車してもあまりサスペンションは沈まず、足着きは数値よりもやや不利か。2024年7月1日より価格改定(96万8000円/99万5500円→106万7000円/109万4500円)される。
主要諸元■全長1870 軸距1345 シート高770(各mm) 車重128kg(乾)■水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 278cc 23.8ps/8250rpm 2.65kg-m/6250rpm CVT無段変速 燃料タンク容量11L■タイヤサイズF=120/70-12 R=140/60-13 ●車体色&価格:96万8000円(白×黄、黒)/99万5500円(マロッシ) ●発売:2024年3月 ※価格は2024年6月現在
ハーレーダビッドソン X350:777mm
中国QJモーターサイクルとコラボレーションして誕生した、『普通二輪免許で乗れるハーレー』がX350だ。1970年代初頭から40年以上にわたってフラットトラックレースで活躍してきたXR750をセルフオマージュしたようなデザインが与えられている。エンジンは並列2気筒で、フレームはスチール製トレリス。フルLEDの灯火類やφ41mm倒立フロントフォーク、ウェーブタイプのフロントダブルディスクブレーキなどを装備する。車体がややハードめなのとシートもやや幅広なので、数値から期待するよりも地面は少し遠く感じるかもしれない。
主要諸元■全長2110 全幅─ 全高─ 軸距1410 シート高777(各mm) 車重195kg(装備)■水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 353cc 36ps/9500rpm 3.16kg-m/7000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量13.5L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=160/60ZR17 ●価格:69万9800円 ●色:黒、橙、銀、白 ●発売日:2023年10月20日
ベネリ インペリアーレ400:780mm
1911年にイタリアで創業し、現在は中国のQJグループの傘下にあるベネリ。このインペリアーレ400は、他のベネリモデルと異なる雰囲気のネオクラシックで、374ccの空冷単気筒エンジンを鋼管ダブルクレードルフレームに搭載し、1950年代の雰囲気を演出。エンジンは歯切れよく鼓動感が十分にあり、低回転域の粘り強さや穏やかな振動特性を持っている。意外にも滑らかな走行感覚、ABSの装備など、中身は現代のバイクながら旧車感覚を強く味わえる1台だ。足着き性はだいたい数値のイメージ通りだろう。
主要諸元■全長2170 全高1120 軸距1440 シート高780(各mm) 車重205kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 374cc 21ps/5500rpm 2.9kg-m/4500rpm 変速機5段リターン 燃料タンク容量12L■タイヤサイズF=100/90-19 R=130/80-18 ●価格:66万8800円 ●色:黒 銀
まとめ
車重170~200kg前後に分布する400ccクラスだけに、足着き性が優れているかどうかで扱いやすさのイメージがけっこう変わってくるはず。とはいえ、走っているときの快適性やライディングポジションが身体に合っているかなど、シート高と合わせて実車を触って検討できればベストだろう。
足着きの改善方法としてはサスペンションのプリロードを弱める手もあるが、前後サスペンションのバランスを考慮しないと乗りにくくなる可能性もあるので、ノウハウのあるショップにアドバイスを求めるといい。また、シートを薄く加工(アンコ抜き)するという手法も知られているが、上面を削ったぶん内ももへの角の当たりがきつくなり、期待したほど効果が得られないこともあるので注意が必要だ。
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