バイクという乗り物を特徴づけるのは、2つの車輪でバランスを取りながら走らなければならないこと、傾けて曲がること、そしてエンジンと人間が近いことだ。いわばエンジンを懐に抱えて走るようなもの。それゆえエンジンの違いがバイクの個性の大きなウエイトを占める。本記事では単気筒、2気筒、3気筒、4気筒、6気筒をフィーリング主体で解説していきたい。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
振動、路面を蹴飛ばす感じ、エンジンで走らせる気持ちよさ
バイクはエンジンを懐に抱えて走るような乗り物だ。単純にライダーとエンジンの距離が近いことがエンジンの存在感を大きく感じさせるだけではなく、エンジンの性格と、それを扱うアクセル操作の仕方によって、バイクの曲がり方やタイヤのグリップなども変わる。バイクはバランスを取りながら走らなければならないため駆動力の影響がとても大きいこと、そしてクルマに比べれば軽く小さな車体ゆえ相対的にエンジンの質量(エンジン自体の重さだけでなく回転する部品の慣性力も)の及ぼす影響が大きくなることが理由だ。
のっけからちょっと小難しいが、ようするにバイクっていう乗りものはどんなエンジンを搭載しているかで、その個性が大きく左右されるってことである。今回はそのあたりをざっくりと解説してみたい。
※本記事は4ストロークエンジンを搭載した現行量産車を対象に書かれたもので、2ストロークエンジン搭載車や競技専用車両、現在市販されていない型式のものは割愛しています(2023年2月現在)
もっとも大きな違いを生むのは排気量
現在、新車でふつうに買える量産車であっても、原付一種の50ccから2000cc前後のビッグマシンまで、多種多様なバイクが生産されている。どんな排気量のバイクにもそれぞれの面白さがあるものだが、ざっくり言えば小排気量車はエンジンをブン回しながら人間がバランスを取る要素が大きく、対する大排気量車はアクセルでエンジントルクを操り車体を動かす、つまり右手のアクセル操作でバランスを取る要素が大きい。
アクセルをためらいなく開けて走れるのが小排気量車であり、アクセルを開け過ぎないように気を遣いながらコントロールしていくのが大排気量車、とも言えるだろうか。中間的な排気量では、その割合が車両ごとに異なると考えていい。これはサーキット走行などの大きな負荷がかかる走りだけでなく、街乗りで周囲の流れに合わせたようなペースでも変わらない。おおよその傾向としてそういうものなのだ。
『バイクの気持ちよさは全開時間の長さ』という考え方もあり、その立場からは小~中排気量モデルや、大排気量であっても低回転高トルク型が気持ちいいと言えるし、これが『扱いきれないパワーを手元に置くことに痺れる』となれば、そのライダーにとっての価値は逆転するかもしれない。
ちなみに、小排気量車はエンジンが小さいことから車体も小さく軽くつくることができ、大排気量車は基本的に車体が大きく重くなる。これも、軽量コンパクトな小排気量車と、手応えの大きさが操る醍醐味にもなる大排気量車という違いを生んでいる。
じゃあ、気筒数ってなに?
さて、気筒数のハナシである。エンジンの中ではピストンがシリンダーという筒の中を往復することでクランクという“はずみ車”のようなものを回し、これがいろいろ(省略)伝達していって最終的にタイヤが回る。このおおもとになるピストンの数がイコール気筒数になるわけだ。ちなみに排気量とは、ピストンがいちばん下からいちばん上まで上がる際に押しのける空気の体積のこと。理科の実験で使った注射器を思い出してもらうとイメージしやすいかもしれない。同じ大きさの気筒が2つあれば排気量は倍になる。
単気筒のバイクの性格は?
単気筒のキャラクターはというと、構造と同じくとてもシンプル。複数のピストンがあるとお互いに影響を与えあうが、単気筒はひとつしかない。低速からトルクがあり、シンプルにわかりやすい調子で回転を上げていき、公道向けモデルならそれほど高回転までは回らないのが一般的だ。排気量を問わずアクセル操作に対する反応がとてもわかりやすく、エンジンと車体も軽いことから、キビキビと軽快に走りたい人に向いている。排気量の分布は50cc~700cc程度。以下の2気筒の欄で触れる駆動パルスの関係と、アクセル操作に対する反応が極めてダイレクトなことにより、悪路でもリヤタイヤがグリップを失いにくく、またグリップを失いはじめてもコントロールできる余地が大きい。そのエンジン質量自体の軽さもあって、本格オフロードバイクのほとんどが単気筒を採用している。
ちなみに、ロイヤルエンフィールド各車や2021年に発売されたホンダGB350などは、単気筒の中でも“ロングストローク設定”、つまりピストンの直径よりもシリンダー内の往復距離のほうが大幅に長い設定のため、より低回転で高いトルクを発生する性格だ。
以下のように、スーパーカブシリーズのようなコミューターからGB350、ヒマラヤ、701スーパーモトなど趣味性の強いバイクまで、用途も車両タイプも幅広い。
※本稿は2019年7月13日公開記事を再編集したものです。※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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