
鉱物油/化学合成油を問わず、現代のエンジンオイルはベースオイルと添加剤を混合して製造されている。基本性能を決めるのはベースオイルだが、摩擦調整剤/粘度指数向上剤/洗浄剤などの添加剤も重要であり不可欠だ。ケミカル製品やオイルを数多く販売しているエーゼット(AZ)がリリースした4ストロークバイクエンジン用オイル最大の特長は、同社独自の添加剤配合技術である「AET」を用いている点だ。
●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:エーゼット
独自の添加剤配合技術でフリクションロスを低減
“エーゼットエステルテクノロジー”の頭文字から「AET」と名付けられたこの技術は、文字通り添加剤にエステルを活用している。
エステルと聞くと高性能化学合成油を思い浮かべるサンデーメカニックもいるはず。アメリカ石油協会(API)が5グループに分類するベースオイルの中で、最も高性能とされるグループⅤのベースオイルがエステル結合を持つ合成系基油を指すので、その認識は正しい。
一方で、添加剤として用いる成分にもエステルがある。エステルは元来摩擦を低減させる能力が高く、これを添加剤に用いることでグループⅤ以外のベースオイルにも強力な摩擦低減能力を発揮させるのがAETということになる。
新たにリリースされたバイク用オイルは、ベーシック/サーキット/オフロード/レーシングの4カテゴリーに分類され、粘度違いは多岐に渡る。それぞれの特長は各製品の紹介に譲るが、どれもベースオイルと添加剤を厳選して開発されており、ベーシック以外はベースオイルにもエステルを使用する。その上で従来からAZオイルの利点であるリーズナブルな価格も維持されているのだから、満足度は高い。
「単なる潤滑油ではなくエンジンパーツのひとつ」と断言するエンジニアもいるほど重要なエンジンオイル。幅広いラインナップが揃うAZのオイルで、AETによる摩擦低減能力を体感してみてほしい。
サーキットシリーズは外気温を意識して2タイプを開発
「サーキット」シリーズの冬タイプは、MEC-017~019のベースオイルをグループIV+V、それより高温側の粘度が高いMEC-023~025はグループIV+V。夏タイプは全品グループIII+IV+Vを使用する。基本的には両方ともオールシーズン使用できるが、夏タイプは冬タイプに比べて高温時の油膜が強化されており、熱ダレやシフトタッチに違いが出るエンジンにおすすめ。
摩擦低減能力の高いエステル100%のレーシングオイル
「レーシング」シリーズは、高温高負荷下でも優れた油膜形成能力を持ち、分子が持つ極性によって金属面に吸着することで保護性能も発揮するグループⅤのエステルのみをベースオイルに使用する。エステル単体では変質しやすい弱点をAETによって補い性能安定性を高めているのが特長で、フリクションロスの低減と熱ダレの少なさを両立。
せん断安定性を重視して油膜切れを防止するオフロード向け
サーキットシリーズが高速走行時の負荷に対する油膜保持性を重視しているのに対して、「オフロード」シリーズはスロットルのオン/オフと半クラッチを多用する際の衝撃によって油膜が切れないよう、AETによってせん断安定性を重視。ベースオイルはグループIII+IV+Vのブレンドだが、特にグループIVのPAO(ポリアルファオレイン)をベースとすることで、温度変化に対して優れた潤滑性能を発揮する。
高負荷に耐える小排気量車向けのベーシックシリーズ
リーズナブルな「ベーシック」シリーズは唯一AETを採用していないが、グループIIIオイルをベースオイルに用いることで粘度指数の高さを獲得。粘度指数が高いほど温度変化による粘度変化が少なく、添加剤に頼らなくても性能を出しやすいという特長がある。5W-50や10W-50といった広いレンジができるのも粘度指数の高さゆえ。
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