●文:高橋剛 ●写真:楠堂亜希 ●取材協力:ホンダモーターサイクルジャパン 茂原ツインサーキット
ストリートもこなすのに、限界は恐ろしく高い…
「手強い…」 CBR600RRに乗り始めた初日は、そう思っていました。
ライダーが乗っているところ=いわゆる居住空間はコンパクトですが、車格は大きく感じます。具体的に言うと、リヤタイヤが遠くにあるという印象ですね。最近のスーパースポーツ系モデルは、高速安定性を高めるためにスイングアームを長く作るのがセオリー。落ち着いていますが、街中を小気味よくクリクリと走れる一般的なストリートバイクとは対極にあります。
マスがギュッと集中している分、重みにも凝縮感があります。スペックを見比べて驚いたんですが、CBR650Rよりも12kgも軽いんですね! そうとは思えない手応えがあって、ちょっとひるみました。
パワーも当然あります。街中を走っていても、エンジンのポテンシャルのうち6〜7%ぐらいしか使ってない感じ。そんなこんなで「手強いな…」と思った初日でした。
ところが、2日目からだいぶ印象が変わりました。乗り手である自分がCBR600RRに馴染んだんだと思います。
エンジンはポテンシャルを引き出す手前の段階でも十分に扱いやすいし、スピードが出ず荷重がかかっていなくてもサスペンションがよく動いてくれるから、接地感もあります。ニーグリップしやすいからホールド感もあって、ライディングが楽しい! すぐにスピードが出てしまうので自制心は大事ですが、「こんなに楽しめるのか〜」と、初日とは印象がガラリと変わったことに、我ながら驚いてしまいました。
これ、バイクのポテンシャルがものすごく高いからこそ起きる現象です。一般的なストリートバイクなら、バイクの側がライダーに寄せてくれているから、ライダーは何も意識せず、時間もかからずにそのバイクの良さを引き出すことができます。
でもCBR600RRともなると、そう簡単じゃありません。あまりにも限界値が高いから、本当の力を知るためにはいろいろ意識しながら時間をかける必要があります。
これは面白くなってきたぞ! やっぱりサーキットを走ってみなきゃ。そうすればもっとCBR600RRに近付けるはずだぞ……!
というわけでお邪魔したのは、千葉の茂原ツインサーキットです。その名の通り1周700mの西コースと、1170mの東コースがある施設。東コースはビッグバイクでも走ることができ、安価で1日楽しめるので人気です。
…とは言っても、お邪魔した日はどよ〜んと曇っていて、雪が降ってもおかしくなさそうな寒さ…。そして走らせるのは600ccスーパースポーツモデルということで、ちょっとおっかなびっくり走り始めました。
するとすぐに、”おっかなびっくり”はどこかに行っちゃいました(笑)。2〜3周してタイヤが温まったら、あっという間にザーザーとヒザを擦って走ってました。
路面温度が低くスベスベで、アクセルを開けるとスライドしてしまうんですが、それでも全然怖くありません。サスペンションの動きがいいので、一応は女子の私の体重でも(男子よりは軽い、という意味ですよ!)ちゃんと荷重がかかっていて、タイヤが路面を掴んでいることが伝わってきます。
全長1170mの東コースはスーパースポーツにはコンパクトで、それほどアクセルは開けられません。でも中間域のトルクが扱いやすいフィーリングで出てくれるので、回さなくてもスピードが乗っていきます。
’20年モデルにはトルクコントロール(トラクションコントロール)が装備されました。だからスベスベ路面でも怖くなかったんでしょうね。作動性のいいサスペンションと相まって、真冬でも楽しめました。
感動したのはポジションです。タンクは前モデルよりコンパクトで、ヒジやヒザでホールドしやすく、一体感が高い。驚いたのはステップバーが水平ではなく、少し角度が付いていること。足を乗せるだけで自動的にある程度のニーグリップができるんです。
新型は元世界GPライダーで全日本チャンピオンでもある小山知良さんが開発ライダーとして携わっているんですが、「さすが!」と思いました。このステップ、絶対に小山さんの意思が込められてると思うんだけどな〜。
世界レベルの小山さんが作り込んだからか、CBR600RRには本当にハイポテンシャルです。このバイクを乗りこなして、限界のさらに先まで行こうと思ったら、どれぐらいの技量が必要なのか…。今の自分にはちょっと想像がつきません。
モチベーションのある人なら、ビギナーにもオススメできる扱いやすさを備えているCBR600RRですが、サーキットを走らせてみて、自分はもっともっと技量を高めないとダメだな、と思いました。今年も頑張らないと!
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