PCXシリーズのフルモデルチェンジに伴い、125ccのハイブリッド版も4バルブのeSP+エンジンへと進化。車名は「e:HEV」に改められた。アシストモーターのスペックは不変。はたしてその進化とは?
[〇] 自然なアシストは健在。重量増も気にならない
’21モデルチェンジを機に、4輪と共通の「e:HEV」に名称を変更したPCXのハイブリッドモデル。エンジンが4バルブのeSP+ベースとなったのをはじめ、刷新されたフレーム、リヤホイールの13インチ化、リヤブレーキのディスク化などはシリーズ共通だが、ACGスターター兼用アシストモーターのスペックは先代からそのまま引き継いでいる。
まずは動力性能から。モーターによるアシスト時間は、開始から約3秒間は最大トルクを継続し、その後の1秒間で徐減させる仕様となっている。そのため、特定の回転域や速度でガツンと力強さが増すのではなく、どこからでもスロットルの動きに対して自然に反応する。走行モードは先代と同様にDとSがあり、低〜中開度でのレスポンスを強めたSモードは、同シリーズの160に匹敵するほどの速さを見せる。それもそのはず、モーターの最大トルクは0.44kg-mなので、単純に足し算すると160の最大トルクを上回るのだ。なお、アシストの働かない領域での印象は、先代と直接比べていないので断言はできないが、新型の125と160に共通する静粛性や振動の少なさは十分に感じられた。
続いてハンドリング。同じ排気量の125が車重132kg(160も共通)なのに対し、e:HEVは先代から1kg増えて136kgとなっている。だが、この重量差はモーターのアシスト力によって相殺されており、全く気にならない。新型フレームと前後タイヤのワイド化によって接地感が高まり、フロントからグッと旋回する印象が強まった。その一方で、リヤのホイールトラベル量が10mm増したことでギャップ通過時の吸収性も向上しており、スポーティさと快適性の両面で進化したと言えるだろう。
そのスポーティな走りをさりげなく支えているのがリヤのディスクブレーキで、ドラムよりもタッチが良く、同等の制動力を軽い入力で引き出せる。なお、フロントは引き続きABSを装備しており、作動性に不満なし。この新型からトラクションコントロールも採用されたので、さらに安全性が高まったと言えよう。
[△] 公称燃費に大差なし。元を取るのは難しい
実際の走行状態に近いとされるWMTCモード値を見ると、125の47.4km/Lに対してe:HEVは51.2km/Lと、4輪ほど燃費に差はない。元を取れるかよりも、125と同じ維持費で160並みの力強さに魅力を感じる人向けだろう。
[こんな人におすすめ] まずは普及を。そこに存在意義を感じる1台だ
4輪ではたびたびハイブリッドで元は取れるのか、という話題が出るが、ホンダはまず普及させることを第一にPCXで先手を打った。販売計画台数は125の12分の1で、儲け度外視なのは明らか。それでも新型を用意した心意気こそホンダらしさだ。
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