新型となったBMW F900R、そして新たにラインナップに加わったF900XRを、モーターサイクルジャーナリストの鈴木大五郎氏がスペイン・アルメリアでテスト。激戦区に再参入するなか、譲れないというFシリーズのテーマとそのキャラクターの変化を探った。
●文:鈴木大五郎 ●写真:BMW ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
【TESTER:鈴木大五郎】様々なバイク遊び、レー ス経験を持つモーターサイクルジャーナリスト。自身のスクール主催のほか、BMWモトラッドの公認インストラクターも務める。
すべての面で比較しようがないほどの進化を遂げた
シングルエンジンからスタートしたBMWのFシリーズ。現在は並列ツインシリーズに付けられた名称であるが、その頭文字にはどういった意味があるのだろう。Funなのか? Freedomなのか?
しかし「これは単純に選別するためのアルファベットだよ。ボクサーはRで現在なら6気筒のモデルがK。特に意味はないんだよ」と肩透かしをくらったのであるが…。
このFシリーズにとっては、譲れないいくつかのテーマがあるという。ビギナーからベテランまで満足させるワイドレンジのキャラクターもそうであろうし、リーズナブルであることも非常に重要だと語る。
BMWに並列ツインエンジンが誕生したのが’06年。そこから細かいアップデートはありつつも、基本設計に変更はないロングセラーとなっていたのであるが、’18年に完全新設計となるエンジンに生まれ変わった。
大きなトピックは排気量アップ…ではなく、360度クランクから270度クランクへの変更とともに、それを逆回転駆動とする…と、全く異なる構造で刷新されたのだ。
このエンジンを先に搭載したのはGSのほうで、これは世界的アドベンチャーマシンブームの影響でもあるといえよう。しかし、F900Rにそのまま転用搭載するのではなく、さらなる排気量アップをはじめ、細かい熟成を行ってきた。
それは激戦となるこのカテゴリーのなかで、少しでも高いポテンシャルを得る必要性からという。
ストリートファイター的要素もありつつ、アグレッシブ過ぎないデザインのF900Rにまたがる。
クラッチをミートすると、従来型とは違う手応えでマシンが発進した。
GSに対してもそれは明らかにトルクフルでパワフル。どちらも驚くような類のものではないが、だからこそ使いやすく、操作している感覚も強い。
あり余るそれらを電子制御によって抑えるといった最近のトレンドではなく、ありのままの嫌味のないトルクでマシンをしっかりと走らせる。
270度クランクらしいVツイン的トラクションとビート感も、マシンによくマッチする。個人的には従来の360度クランク仕様の、ボクサーエンジン的なフィーリングが嫌いでなかった。それは昨年、GSに搭載されたときに強く感じ、そこに未練を感じたのも確かであるが、Rに関してはそんなセンチメンタルな気持ちには一切ならなかったのだ。
R800Rを愛車とする海外ジャーナリストが「すべての面で比較しようがない…」と嬉しさ半分、悔しさ半分といった面持ちであったが、それが理解できる。伸び切り感も非常にスムーズ。今回のテストには含まれなかったが、サーキットでもファンライドができそうだと感じた。
BMW F900R
モーターサイクルジャーナリスト・鈴木大五郎氏による、’20 BMW F900R/XRの海外試乗レポート。次ページでは新たにラインナップに加わったF900XRに試乗する。
(前ページより続く) 一方、車体周りはメインフレームとスイングアームを基本的にGSと共通とする。前モデルは鉄製トラスフレームのGSに対し、アルミ製ツインチューブフレームのRと、それぞれが専用のものを用[…]
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