
伝統と革新の狭間に立つハーレーダビッドソン。その日本法人を率いるのが、玉木一史氏だ。日産自動車、マセラティジャパンを経て、2025年1月1日付で代表取締役に就任。着任から1年以上が経過したいま、120年を超えるブランドをどう進化させるのか。「いつかはハーレー」を現実の選択肢に変えるために、何を考え、何を実行してきたのか。単独インタビューで、その戦略と狙いに迫った。
●文:青木タカオ ●写真:宮下豊史 ●外部リンク:ハーレーダビッドソンジャパン
「いつかはハーレー」で終わらせない、現実の選択肢へ!
WH:これまでウィズハーレーは、北海道ツーリングに同行させていただきましたし、全国のイベントでも玉木代表がハーレーに乗って走る姿を何度も拝見しています。就任直後、大型二輪免許を取得中だった頃には、教習所からそのままディーラーのイベントに駆けつける姿が印象に残っています。取材を重ねる中で、その情熱の強さを感じてきました。
玉木: ありがとうございます。自分自身も楽しみながら取り組んでいます。
WH:まず率直にお聞きします。なぜ、ハーレーダビッドソン ジャパンの代表を引き受けようと、決心されたのでしょうか。その動機を教えてください。
玉木:幼少期の頃、アメリカに住んでいたことがあり、人生の中でずっとどこかでハーレーダビッドソンとは接点があったような気がしています。二輪の免許を持っていなかった頃から「いつかはハーレー」と、憧れていたブランドでしたので、代表をやらせていただくというのは、本当に身が引き締まる思いでした。と同時にまた、120年以上もの歴史のあるブランドをどうやってさらに高めていくのか、すごく面白いチャレンジだなと思って、お引き受けしました。
WH : 就任される前、ハーレーに対してはどのような印象をお持ちでしたか?
玉木: すごく強いブランドだと思っていました。実際、アメリカに次いで2番目にユーザーが多く、コミュニティがとても大きい。ハーレーダビッドソンの世界観や価値に共感される方がたくさんいらっしゃって、やっぱりすごいブランドだなって、今も思いますね。
WH :登壇してスピーチされる際、販売店への感謝の気持ちを述べられている姿が、とても印象的です。「日本は世界的に見ても、非常に稀有なハーレー大国」と言い、その理由の一つとしてディーラーを高く評価していらっしゃる。販売店との関係構築で、意識していることや今後していくことは何かありますか? お考えをお聞かせください。
玉木:四輪車業界の頃からずっと思っていたことなのですが、我々はディーラービジネスですから、最も大事なのは人だと思っています。自動車であれ、モーターサイクルであれ、モノを売るビジネスです。けれど、最終的にはピープルビジネスだと、これまでもずっと感じてやってきました。商品をお客様にお届けされるディーラーさんももちろん人ですし、ディーラーを運営される経営者も人、お客様も人です。ですから、お客様と接点を持つディーラーさんというのは、我々にとってはすごく貴重なパートナーだと考えています。そのパートナーの皆さんの声を聞きながら、ブランド展開をどうやって図るのかというのは、とても大事だと思っています。
WH :四輪車の世界、つまり二輪業界の外から入ってきたからこそ、できたことが何かあるのではないでしょうか?
玉木:昨年の2025年1月に代表に就任して以来、全国のディーラーをまわってきました。一人一人との対話の量も質も良くしていき、今後のビジネスをどうやって発展させていこうかという意味で、本当に建設的な議論ができたと思っています。
WH:具体的にはどんな内容を?
玉木: ブランドに対する熱い想いをたくさん語っていただける中で、複数のディーラーさんから言われて印象に残っているのが『三方よし』という言葉です。売り手よし、買い手よし、世間よし。すごく良い言葉だなと思った一方で、私は『四方よし』じゃないかなという話を、全ディーラーさんを集めた会議で申し上げました。四つ目は『将来によし』ということで、やっぱり短期的に物事を考えるのではなくて、中・長期的に持続でき、利益ある成長をどうやって安定的に伸ばしていくのかという事が非常に大事。そのためにも、私から一方的に話すという事は基本的にはせず、皆さんの意見を取り入れながら、どうやってこのブランドを良い形で発展させていくのかという事を意識してきた1年だったと思います。
WH:今後はどのように?
玉木:いろいろなブランドに携わってきて考えるのは、強いブランドって何なのかっていうことです。私は唯一無二であることだと思います。唯一無二ってことは、お客様が選ぶということなんですね。そういった意味だと、ハーレーダビッドソンのモーターサイクルやアパレルを売るというような発想ではなくて、いかに選んでいただけるかというのが、すごく大事だと思います。なのでハーレーダビッドソンの今後も、どうやって選んでいただけるかというのを、常に意識していきたいと思います。
玉木:そのためには、お客様から逆算して考えるというのは大事だと思いますね。昨年、いろんなお客様と雑談を含めて、たくさんお話をしましたし、かなり広範囲な顧客調査もやらせていただき、生の声をたくさん拾い上げてきました。いま、ハーレーに乗っておられるお客様はある意味、選ばれたわけですね。その選ばれる過程は、どういったものだったのか、どのような生活文脈の中で、悩みながらハーレーに行き着いて、選ばれたのかというのが分かれば分かるほど、そのストーリーを多くの方に伝える事ができると思っています。選ばれるブランドとして、選ばれる理由を探して、それを我々がどうやって日本の社会に対して広めていくか、というのが大事だと考えています。
日本にとってハーレーは必要なもの
WH:玉木さんにとって、ハーレーに乗るとは、どういう体験だと思いますか?
玉木: 就任直後に免許を取得し、ハーレーに乗っていて感じるのは、もちろん楽しいってこともあるのですが、自分と向き合う時間だなって思います。不思議なんですけど、ハーレーに乗っていると、ずっと独り言をしゃべっているような感じがしています。日常から少し離れて、自分が何を大切にしたいのかと、考える時間であったり、自分と向き合える時間なんだと思いますね。
WH :なるほど。それでは、ハーレー乗りって、どんな人だと思いますか?
玉木:一つは、自分らしい生き方をされている方が多いなと、感じています。ハーレーを通じて、いろいろな所へ行けるというのもあるかもしれませんが、本当に自分らしい生き方を追求している方が多い。そういった生き方を、大切にされている方が多いなと思いますね。私のように免許取り立てでも、自分の生き方をどうしたいのかと、振り返るきっかけをつくってくれた存在でもありますし、そういった意味では、日本全国の皆さんへ、免許をお持ちでない方はぜひモーターサイクル、大型二輪というものを選択肢に考えて頂きたいなと思います。そして、すでにハーレーにお乗りになられている方は、その選択に誇りを持っていただきたいと思いますね。
WH:さまざまな年齢層のユーザーさんを取材していく中で、ハーレーに乗るっていうのは、若さを取り戻すものなのかもしれないなって、アッパーエイジの方と喋っていると感じます。もしかすると、ハーレーというオートバイではなくて、ハーレーに乗る自分を、ユーザーは求めているのかもしれません。ミラーに映る革ジャンを着てサングラスをかけた自分を欲しているのかなと思うことがあります。このように、製品よりライフスタイルを提供していくのは、ブランドビジネスやプレミアム商品をずっとやってきた玉木さんの一番の強みなんじゃないかなと思うのですが、いかがでしょうか?
玉木: ありがとうございます。私もお客様との対話や顧客調査を通じて、現在ハーレーにお乗りの方が最終的にどういった報酬を得ているのかを考えたとき、おっしゃったように「自分をもう一度取り戻す」ですとか「若い頃を思い出す」「本来の自分と、もういちど向き合う」「もし元気がなかったとしても、再起動してくれる」など、そういった時間や気持ちをつくってくれるものが、ハーレーなんだとわかりました。また、多くのお客様が、このようにコメントしてくださるということは、私たちにとってもすごく誇りなので、そういった意味では、大袈裟な表現かもしれませんけど、日本にとってハーレーって、必要なものなんじゃないかなって、思うところもあります。
WH :いま玉木さんがおっしゃったような熱い思いを語り合う場所が、ハーレーの場合はディーラーになっていて、コミュニケーションの場になっているっていうのが、他のブランドとは大きく違うなって、ファンとしてもメディアとしても感じます。今後、ディーラーの役割は、ますます大事になってきますね。
玉木: 我々の方針なり戦略を、現場でお客様に伝えていただく非常に大事なパートナーの皆さんですから、私がいま申し上げたようなメッセージをお客様に伝えやすくするために、我々として何ができるのかというのを日々考えながらやっております。また、日本の二輪マーケットは、まだまだ伸びる余地があると感じています。1億2000万人の中で、大型二輪免許を持っている人が数百万人しかいないということは、パイとしてまだまだ広げられます。ハーレーを通じて得られる報酬は、こういうふうに沢山あるのですとお伝えし、免許を取って、ハーレーに乗っていただける方をどんどん増やしていきたいと思います。教習所などを通じて、免許を取得される方との接点を増やすことができますし、それぞれのお持ちのマーケットの中で、どうやって新しい接点をつくっていくのか、我々もどういうことができるのか考えて参ります。
WH :ナイトスターですとか、幅広いラインナップになってますが、ポイントはやはり若年層だと思います。若い世代にとって、ハーレーはどんな存在であって欲しいと願っていますか?
玉木: 年齢に関わらず、やはりハーレーは自分と向き合う時間とか、本来の自分と内省していただける時間をつくってくれるものなんだと思います。これはバリュー(価値)として、すごく高い。新車だけじゃなく、中古車も販売させていただいておりますけど、どちらもハーレーはハーレーです。
WH:まずは中古のハーレーを買って、皆さんのコミュニティの輪に入ってもらうのも、大歓迎っていうことですね?
玉木: はい。ディーラーさんで展開している認定中古車は、もちろんきちんと整備された車両で、安心して購入していただけます。中古車も視野に入れて、いろいろと見ていただきたいと思います。
WH:悩んでおられましたが、愛車を決めたそうで。何を選んだのですか?
玉木:ファットボーイにしました。
WH:決め手は何ですか?
玉木:ぜんぶ乗らせていただいて、自分が一番しっくりきたのがファットボーイでした。私の中では、乗りやすいモデルだったかなと思います。あと、幼少期に観た映画『ターミネーター2』を改めて観たのですが、アーノルド・シュワルツネッガーさんが乗ってる姿がまた格好良くて、憧れていたバイクでもあったので、最終的に選ばせていただきました。
WH :ハーレー乗りの皆さんに向けて、メッセージをお願いいたします!
玉木: 日々ハーレーを愛し、乗ってくださって、本当にありがとうございます。皆さまにとって、ハーレーは特別な存在なのではないかなと思います。我々も、その一助を担っているという意味で、誇りに思って日々取り組んでいます。ぜひまた、いろんな場所でお会いできるのを、楽しみにしております。
WH :それではですね、ハーレーにまだ乗っていない人にもお願いいたします!!
玉木: まだ乗る前の方々には、いろいろなバリアがあることが分かってきました。それは物理的なバリア、例えば駐車場の問題だとか。また、心理的なバリアがあるというのも分かってきたんですね。「まだ自分にはハーレーは早い」とか「贅沢すぎる」とか、躊躇されてしまう何かの要因があるというのが、分かってきました。そういった心理的ハードルの壁を下げていただくための施策を、これからも多くやって参りますので、ディーラーへ行く前に、そういった場にぜひご参加いただいて、ハーレーをいちど体験として試していただいて、ハーレーがご自身のライフスタイルに合うのかどうなのかを見極めてもらいながら、ぜひご検討いただきたいと思っております。
WH:5年後、ハーレーダビッドソンというブランドが、日本でどのようになっていて欲しいと思いますか?
玉木:「ハーレーにいつかは乗りたい」「憧れている」っていう言葉を、よく聞かれると思うんですよね。私もそうでした。その「いつか」っていうのが、逆に買うのを妨げているのではないかと考えています。なのでハーレーは、現実的にそのお客様の選択肢の一つでありますよという事を、我々は強調していきたいと思います。ハーレーは人生の中の選択肢なんだと思っていただける方が、今に比べてもっともっと増えて、大型二輪のパイももっと広がるという姿にしていきたいと思います。そういった意味において、競合他社と市場を奪い合うのではなく、いかに市場規模を増やしていくかといった活動をしていきたいなと思っています。5年後はさらに二輪免許を持つ人が増えて、「ハーレーをぜひ買いたい」と、選択肢の一つと思っていただける方が多い世界になっていることが、私の夢です。
WH :ブランド力を高めたまま、より身近なものにするということなんですね?
玉木: はい。すごく強いブランドであるのは認識しています。ただし強ければ強いほど、どうしても憧れで、ちょっと距離があるというケースがあると思います。ですが、免許がなくても、例えば私が今日着ているようなアパレルもそうですけれども、違う接点でハーレーを体感できるということもありますので、「いつかはハーレー」って人でも、まずはアパレルからっていうのもありますし、いろいろな意味で、ハーレーとの接点をまだまだつくっていけると思います。
ハーレー乗りに向けてメッセージ! インタビューの様子は動画でも!!
ハーレーダビッドソン ジャパン玉木一史代表取締役をウィズハーレー編集長・青木タカオが質問攻め。単独インタビューの様子は、ぜひ動画でもご覧いただきたい!
最新の関連記事(ウィズハーレー)
バイク好き必見! 大ヒット上映中!! 『あぶない刑事』のタカこと舘ひろしといえば、ハーレーにまたがりショットガンをぶっ放す永遠のダンディー。そんな日本を代表するスター俳優が、現代社会のリアルなテーマ「[…]
MANAKAのファーストアルバム『UntilNow』をリリース 2026年1月7日のCD 発売開始と同時に、音楽制作会社・レーベルとしてVenus Inspire Promotion 株式会社(V.I[…]
CVOロードグライドST/2024 キムさん スポーツスターSから一度は国産大排気量車へ乗り換えたものの、「やっぱりハーレーがいい」とロードグライドを探していたオーナー。そこで出会ったのが、CVO25[…]
B+FLEXならツーリング仲間を誰も取り残さない! ハーレーの魅力は、ひとりで走る自由と仲間と走る一体感。その両方をより深く味わわせてくれるのが、今やライダーにとって欠かせないアイテムとなっているバイ[…]
夜間ツーリングや悪天候走行時に大活躍まちがいなしのLEDフォグ 最近のバイク用ライトやウインカー、補助灯はどんどんとLED化されていき、小型化や形状変更、明るさの向上など目まぐるしい進化を遂げている。[…]
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ウィズハーレーの最新記事
バイク好き必見! 大ヒット上映中!! 『あぶない刑事』のタカこと舘ひろしといえば、ハーレーにまたがりショットガンをぶっ放す永遠のダンディー。そんな日本を代表するスター俳優が、現代社会のリアルなテーマ「[…]
MANAKAのファーストアルバム『UntilNow』をリリース 2026年1月7日のCD 発売開始と同時に、音楽制作会社・レーベルとしてVenus Inspire Promotion 株式会社(V.I[…]
CVOロードグライドST/2024 キムさん スポーツスターSから一度は国産大排気量車へ乗り換えたものの、「やっぱりハーレーがいい」とロードグライドを探していたオーナー。そこで出会ったのが、CVO25[…]
B+FLEXならツーリング仲間を誰も取り残さない! ハーレーの魅力は、ひとりで走る自由と仲間と走る一体感。その両方をより深く味わわせてくれるのが、今やライダーにとって欠かせないアイテムとなっているバイ[…]
夜間ツーリングや悪天候走行時に大活躍まちがいなしのLEDフォグ 最近のバイク用ライトやウインカー、補助灯はどんどんとLED化されていき、小型化や形状変更、明るさの向上など目まぐるしい進化を遂げている。[…]
人気記事ランキング(全体)
【魅力1】30年ぶりの4気筒フルカウルに最新「Eクラッチ」を融合 「4気筒の高周波サウンドを響かせながら、風を切って走りたい」。そんなフルカウルファンの渇望を満たすCBR400R FOUR E-Clu[…]
繊維強化プラスチック×高密度リブで「軽さと強さ」を両立! まず注目したいのが、そのタフな骨格だ。 トッププレートには高強度の繊維強化プラスチックを採用。裏面には緻密な高密度リブ構造を巡らせることで、積[…]
【魅力1】新設計4気筒エンジンと「Eクラッチ」の融合によるイージースポーツ 「あの甲高いエキゾーストノートをもう一度味わいたい」。そんなライダーたちの熱い想いに応えるように、ホンダは完全新規の直列4気[…]
再現という行為の本質 第18回モンキーミーティングの会場には数多のモンキー系カスタムが集まり、綺羅星のごとく会場を埋め尽くしたカスタムモンキーの中に一際目を惹く1台があった。 それは伝説的名車であるホ[…]
青春のバイブル『バリバリ伝説』と憧れの「しび子ちゃん」 しげの秀一氏が描いた『バリバリ伝説』は、単なるモータースポーツ漫画にとどまらず、一つの時代を象徴するバイブルだった。アマチュアの峠の走り屋から、[…]
最新の投稿記事(全体)
「いつかはハーレー」で終わらせない、現実の選択肢へ! WH:これまでウィズハーレーは、北海道ツーリングに同行させていただきましたし、全国のイベントでも玉木代表がハーレーに乗って走る姿を何度も拝見してい[…]
【主要諸元】 サイズ:全長 2130 全幅 820 全高1120 軸距 1492 シート高 775 [ローシート+ローサスペンション] (各mm) 車重:175kg(燃料ナシ) エンジン[…]
注目は「S.I.R.S.」の進化! 脳波と直結する超インテリジェント電子制御 今回の目玉は、ライダーの走りを全方位でバックアップする最新の電子制御システム「S.I.R.S.(スズキインテリジェントライ[…]
爽やかなブルーが街に映える「Z900RS」の新色 「Z900RSのスタイルと性能には文句のつけようがない。あとは、自分好みのカラーリングに出会うだけだ」。そんな風に購入のタイミングを見計らっていたライ[…]
憧れのGPマシンをガレージに。所有欲を満たす特別なレーシング・カラー 「ハイエンドなスポーツバイクに乗るなら、誰が見ても特別な1台だとわかるオーラが欲しい」。そんなライダーの欲求を完璧に満たしてくれる[…]
- 1
- 2

































