
だんだん自由の国でなくなってきたアメリカですが、1960~70年代のクルマ界隈はそれこそ「なんでもあり」の様相を呈していたかと。なにしろ、船外機付きのボートに車輪を付けて公道を走ったり、ゴルフカートにバイクのエンジン載せて爆走したり、魔改造好きにとっては羨ましいことしきり。とりわけ、西海岸のお金持ちに愛されたデューンバギーは屋根もなければ窓もなし、走ってみれば軽量かつ走破性の高さに誰もが驚いたもの。おもちゃのような見てくれでも、その完成度はじつに高いものなのです。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
60年代から続くデューンバギーの草分け的存在
デューンバギーといえば、本家本元はブルース・F・マイヤーズが創立した「マイヤーズ・マンクス」ということに。
オープンホイールのバギーは星の数ほど生まれましたが、ほとんどはマイヤーズの亜流。それゆえ、マイヤーズ・マンクスは現代も新車が生み出されるばかりか、EV化したモデルまでリリースされるほどの大人気。
さらに、当時物とされるビンテージモデルの値段は年々上昇するありさまで、アメリカで栄誉ある「クルマの殿堂」入りしたのも当然といえば当然でしょう。
マイヤーズがデューンバギー「マンクス」を発売したのは1969年のこと。自身がボートビルダーだったことから、FRPの造形に長けていたこと、ビーチサイドを気軽に走れるバギーの需要に気づいたことが誕生の背景にあるようです。
当初は、イギリスでもおなじみのキットカーとして販売され、エンジンやミッションなど走りに関わるコンポーネントはVWビートルを流用。当時のことですから、4輪駆動ではなくビートルと同じくRRの2輪駆動とされています。
FRPのボディはシート以外が一体成型され、軽量、かつ簡単に付け外しができたとのこと。その結果、車重はビートルより250kgも軽い540~560kgとなり、砂地での走破性に大きく貢献しています。
1965~1971年まで製作されたマイヤーズのオリジナルバギー「マンクス」ボートづくりで培ったFRP技術を役立て、個性的なスタイルを作り上げています。
S・マックイーンの「華麗なる賭け」(1968)で西海岸の砂浜を疾走するマンクスは今でも男の夢として語られることが少なくありません。
バハ1000に初出場&優勝という快挙
また、マンクスの走破性にはバギーらしい太めのタイヤも貢献しています。
ベースとなった当時のビートルは、通常165R15または155R15といった比較的細身のタイヤを装着していました。一方でマンクスはフロントこそG60-14や145R15でステアを軽くさせていたものの、リヤにはL60-14や205/70R15、あるいはそれ以上のサイズ。
このチョイスもまた、マンクスのバギーらしさを形作っていたといえるでしょう。
ところで、遊びのビーチカーのようなマンクスが、これほどまでに走破性にこだわったのはマイヤーズ自身がアマチュアレーサーだったことが大きな理由です。
マイヤーズは自分で組上げたマンクスで、1967年に初開催されたメキシコ1000レース(バハ1000の前身)でバイクやトラック、その他のクルマを破って優勝をもぎ取っているほど。これはマンクスにとって最高の宣伝となり、翌年以降は売り上げが倍増したと伝えられています。
ところが、シンプルな構成のマンクスだけに模倣者も続出。対抗するために、マイヤーズはボディ形状がいくらか複雑になったマンクスMk.2をリリース。こちらも、一般ユーザーはもちろん、レーシングユースにも引っ張りだこだったようです。
ビートルのフラット4エンジンは1.2~1.6リッターなど数種が用意されていました。こちらは、後年のレストアで1.9リッター、ストレートパイプ仕様にカスタムされています。
EMPI製のシフターもレストアの際に装備されたもの。ビートルのキャルルックや、ドラッグではおなじみのカスタムパーツ。
S・マックイーンもマンクスで砂丘を爆走
マイヤーズ自身が関わったマンクスは、約6000台が販売されています。また、レプリカ的なクルマも多数発見されており、アメリカのオークションにはいつでもどこでも出品されている人気商品。
ですが、本家本元のマンクスはやはりレアであり、ご紹介しているフルレストア車ならば5~6万ドル(約780~940万円)と相場は高め。とはいえ、リペイント込みで修復されたボディや、懐かしいアメリカンレーシングのトルクスラストホイール、VWファンにはおなじみのEMPIトリガーシフターなど、ツボを押さえたレストアはとても魅力的です。
ステーィブ・マックイーンばりに、マンクスで浜辺を爆走してみたいと夢想するのは決して筆者だけではないでしょう。
外観イメージ
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