
カワサキが誇る「W」の血統。その象徴である空冷バーチカルツインエンジンを搭載したW800は、環境規制という荒波を乗り越え、今なおラインナップに名を連ねるヘリテイジモデルだ。360度クランクが奏でる独特の鼓動感と、クラシカルな佇まいは、多くのライダーを魅了してやまない。新車で手に入れるか、それとも豊富な歴代モデルから自分だけの一台を探すか。W800の世界へ足を踏み入れようとしているライダーのために、最新情報からモデル変遷、そして実際の走りまで、購入前に押さえておくべき重要情報を厳選してまとめた。
●文:ヤングマシン編集部 ●写真/外部リンク:カワサキ
最新モデルについて知るなら…最新モデル発売記事を読もう
これから新車での購入を考えているなら、まずは最新の2026年モデルをチェックしておこう。W800の2026年モデルはカラーリングを一新し、2025年11月1日に発売された。最大のトピックは、これまでのW800にはなかった「パールクリスタルホワイト」の登場だろう。
サイド面にシルバーをあしらったこのツートーンカラーは、クラシックな車体に新鮮な風を吹き込んでいる。もう一色の「メタリックディープブルー」は、深みのある青をベースにタンク上面にストライプを配した仕様で、往年の名車を彷彿とさせる仕上がりだ。
スペック面に目を向けると、空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブエンジンは最高出力52psを維持しており、主要諸元に変更はない。現代の厳しい排出ガス規制に対応しながらも、ベベルギヤ駆動のカムシャフトや360度クランクといった「W」のアイデンティティはしっかりと継承されている点は安心材料だ。装備面でも、φ170mmの大径LEDヘッドライトやアシスト&スリッパークラッチ、ETC2.0車載器などは引き続き標準装備される。
ただし、昨今の物価高の影響もあってか、価格は2025年モデルから6万6000円アップの130万9000円となった。
青ベース、白ベースそれぞれのツートーンが登場 カムシャフトの駆動にベベルギヤを用いた、美しい外観の空冷バーチカルツインエンジンを搭載(バーチカルは垂直に立ったシリンダーを指す)するW800は、360度[…]
歴代モデルを比較するなら…変遷を追う図鑑記事を読もう
中古車も含めて検討するなら、2019年の復活以降の変遷を理解しておくことが重要だ。一度は生産終了となったW800だが、2019年モデルとして「W800ストリート」と「W800カフェ」の2本立てで国内復活を果たした。この時点ではフロントホイールが18インチ化されており、より現代的なハンドリングを目指した仕様だったことが特徴だ。
しかし、往年のファンが求めていたのは、やはりフロント19インチのクラシカルなスタイルだったのだろう。翌2020年モデルで、正統派と言える無印の「W800」が復活する。メッキパーツを多用した外観にフロント19インチホイールを組み合わせ、1966年のW1をモチーフにしたその姿は、まさにWの真骨頂と言える存在だ。ここからしばらくは、スタンダード、ストリート、カフェの3ラインナップ体制が続くことになる。
その後、2022年モデルで令和2年排出ガス規制に対応し、型式が変更されるとともに燃費などの数値がわずかに変化した。このタイミングで価格改定も行われている。そして大きな転機となったのが2024年モデルだ。バリエーションモデルであったストリートとカフェが廃止され、ラインナップは無印のW800のみに集約された。つまり、セパレートハンドルのカフェレーサースタイルや、アップハンドルのストリートスタイルを求めるなら、2019年から2023年までの中古車を探す必要があるということだ。
カラーリングも年式ごとに特徴がある。たとえば2022年モデルのキャンディーカラーの赤や、2025年モデルの黒×金の重厚なカラーなど、好みの色で年式を絞り込むのも面白い。空冷エンジンの造形美はどの年式も共通だが、ハンドルの高さやホイールサイズによる乗り味の違い、そしてカラーリングの変遷を知ることで、自分に最適な一台が見えてくるはずだ。
2019年モデル:2本立てで復活 一時は2017年モデルのファイナルエディションを最後に、一部マーケット(インドネシア等)向けを除き、生産が終了していたが2019年モデルから国内でも復活。 空冷773[…]
乗り味を知るなら…インプレ記事を読もう
スペック上の数値だけでは分からないのがバイクの面白さであり、とくにW800のような趣味性の高いモデルでは「味わい」こそが重要だ。現行モデルでも引き継がれている、2022年の排出ガス規制適合によって、その魅力が削がれてしまったのではないかと懸念するライダーもいるかもしれないが、その心配は無用だ。実際に規制適合後のモデルに試乗してみると、低中回転域の艶っぽいフィーリングは健在であることがわかる。
具体的には、2500〜4000rpm付近での独特の蹴り出し感や濃密な脈動感は、規制前のモデルと寸分違わぬものだ。交差点からの立ち上がりや、高速道路を80〜100km/hで流すようなシチュエーションにおいて、このエンジンの心地よさは際立つ。スロットルを開ければ7000rpmまで吹け上がるが、美味しいところはその半分以下の回転域に詰まっている。ECUの変更などで巧みに環境対応しつつ、Wらしいフィーリングを維持したカワサキの開発陣には拍手を送りたい。
ハンドリングに関しては、フロント19インチホイールを採用するスタンダードモデルの場合、取り回しや極低速では多少の重さを感じるものの、走り出せばその安定感に救われる。ストリートやカフェの18インチ仕様が現代的なネイキッドに近い挙動を示すのに対し、19インチの無印W800は、リーンウィズでゆったりと曲がっていく旧車らしい旋回特性を持っている。これこそが「W」を操る醍醐味と言えるだろう。
ブレーキは前後ディスクでABSも標準装備されており、制動力に不安はない。高速道路ではサスペンションに若干のダンピング不足を感じる場面もあるが、法定速度内で流す分には許容範囲だ。総じて、W800は絶対的な速さを競うバイクではない。エンジンの鼓動を感じながら、景色を楽しみ、ゆったりと流す。そんな大人の走りを楽しみたいライダーにとって、この乗り味は唯一無二のパートナーとなるはずだ。
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