「今見ても美しい…」誕生から24年を経ても色褪せない、レトロモダンなシルエットが印象的なモデル[アルピナ・ロードスターV8]を紹介

「今見ても美しい…」誕生から24年を経ても色褪せない、レトロモダンなシルエットが印象的なモデル[アルピナ・ロードスターV8]を紹介

ドイツのアルピナが、独立メーカーからBMW傘下となったことを嘆いている方は少なくないのかと。なにしろ、クルマの真髄そのものを磨き上げる手法は世界を見渡しても唯一無二。数あるカスタムファクトリーが束になっても敵うものではありません。そんなアルピナが無双を誇っていた頃の名車といえば、2002年にリリースされたアルピナ・ロードスターV8一択。ストックのBMW Z8とは似て非なるものとして、中古市場で5000万円ほどのプレミアカーとなるのも当たり前なのです。


●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys

独自にチューンしたF5型V8ユニットを搭載

ご存じの通り、ストックのZ8がサーキットの匂いを感じさせるスパルタンな仕立てだったのに対し、アルピナが目指したのは「どこまでも快適に、エレガントに長距離を走るクルーザー」でした。そのためにアルピナは、BMW M社が手がけた超高回転型のS62型エンジン(M5に搭載されたV8)をあえて降ろしています。代わりに搭載されたのは、常用域のトルクを重視して独自に375馬力までチューンした4.8リッターのF5型V8ユニット。

当初はV12を積む計画もありましたが、エンジンベイが狭く、あえてクルーザー的なキャラをもつV8へと変更されています。

さらに硬派な6速MTを廃止し、ステアリングのボタンで変速が可能な5速AT「スイッチトロニック」を装備しています。こうしたキャラにあわせて、足まわりもランフラットタイヤを捨ててしなやかなセッティングが選ばれるなど、パワートレインとシャシーの味付けこそが、ロードスターV8を語る上での最大のトピックといえるでしょう。

「大人の機能美」が随所に散りばめられ、らしさを演出

一見するとZ8の美しいレトロモダンなシルエットをそのまま残しているように見えますが、ディテールにはアルピナらしい「大人の機能美」が散りばめられています。ストックのZ8は肉厚な18インチホイールを履いていましたが、アルピナはこれを繊細なマルチスポークが特徴の「20インチ・アルピナ・クラシック」へと大径化しています。

ストックの18インチから20インチホイールへの変更と、いくらか下がった車高によってオリジナルとは佇まいが違ってきました。

フロントには控えめなアンダースポイラーが追加され、高速巡航時の安定性を巧みに向上させました。また、ストックには設定のない、アルピナの象徴である深みのある「アルピナブルー」や「アルピナグリーン」を纏った個体を選択できたことも、エクステリアにおける識別点であり、アルピナのユーザーをニンマリさせるポイントでしょう。

控えめなリップスポイラーに見えるものの、高速域での安定感には大きく貢献しているとのこと。

センターメーターを配置したZ8独自のクラシカルなダッシュボードデザインを踏襲したインテリアも、乗員が触れるすべての部位にアルピナによる贅沢なデコレーションを施すことでグレードアップ。シートやトリムには、手触りが格段に柔らかく上質なアルピナ専用のラヴァリナレザーが惜しみなく奢られたほか、3本スポークのステアリングは、裏側に変速用のボタンが埋め込まれ、アルピナ独自のブルーとグリーンのステッチで美しく仕上げられています。

さらに、センターメーターの文字盤は、アルピナの伝統である鮮やかなブルーアイズへと変更。シート後方の隔壁部分には、世界限定555台であることを示すシリアルナンバー付きのプロダクションプレートが誇らしげにセットされています。

アルピナの職人技が光るインテリア。カラーコーディネートはアメリカ人好みの派手なチョイスが多いようです。

ブルーフェイスのメーターはアルピナのアイコン。スピードメーター内の液晶でスイッチトロニックのインフォメーションを表示します。

北米でも高い人気を誇ったロードスターV8

ところで、ロードスターV8には、もうひとつ重要な歴史的背景があります。それまでヨーロッパ中心の独立メーカーだったアルピナが、初めて「BMW北米の公式ディーラー網」を通じて直接販売を行ったモデルがこれだったのです。555台のうち実に450台が北米へと渡り、その高い完成度をもって、後のアルピナB7などがアメリカで確固たる信頼を勝ち得るための先駆けとなったのです。

2022年にアルピナが世界限定555台でリリースしたロードスターV8。このうち、450台が北米で販売され、いうなればアメリカ初上陸モデルということに。

過激に速くするのではなく、独自の審美眼で「豊かさ」を上乗せする。そんなアルピナの哲学が、ドラマチックに表現されたロードスターV8は、四半世紀近くが経過した現在も、コレクターズ市場で破格の扱いを受ける至高の1台となっています。実際、北米での新車価格は1600万円程度だったものが、前述の通りオークションでは5000万円までプレミアがついているわけで、わかっている方はわかっているのだと痛感。ストックも名車ではあるものの、ここはやはりアルピナが輝いていた頃の1台が大きく上回るのではないでしょうか。

2000年代から採用しているホイールデザインですが、北米の好みに合わせてクローム仕上げとなっています。

ストックのZ8もラグジュアリースポーツゆえ、ロールバーまでレザーで包み込まれています。

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。