
ホンダが2023年11月に発表した「リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載した電動バイク」が実際に登場した。当時は2025年に投入と予告されていたが、2025年度内の発表である。この「Honda UC3(ホンダ ユーシースリー)」は、タイおよびベトナムで順次発売され、ホンダは両国の主要都市における充電インフラの整備にも取り組むという。
●文:ヤングマシン編集部 ●外部リンク:ホンダ
モーターは独自開発のホイールサイドタイプを採用
ホンダは、タイおよびベトナム向けにICE(内燃機関)の110ccクラスに相当する動力を備えた電動二輪パーソナルコミューター「Honda UC3」を発売すると発表した。2026年春より順次発売とのことで、ホンダは両国の主要都市における充電インフラの整備にも取り組むとしている。
UC3は、「Expected life. Unexpected discoveries」というホンダの二輪電動事業の新しいブランドプロミスを具現化した初の電動二輪パーソナルコミューターであり、“Intelligent Urban Life Partner”を開発コンセプトとしている。
注目のメカニズムは、まずホンダで初めてとなる固定式LFP(リン酸鉄リチウムイオンバッテリー)を採用。これにホンダ独自の開発・生産となるホイールサイドモーターを組み合わせ、最大出力6.0kWを発揮する。また、また、回生制御や磁気回路構造の最適化により、高効率化を図ることで一充電あたりの航続距離122kmを実現したという。
このほか、さまざまな走行シチュエーションやユーザーの好みに応じて、STANDARD、SPORT、ECONの3通りから走行モードを選択できるとともに、リバースモードも装備することで駐車時や切り返し時の取り回しを容易にしている。充電方式はCHAdeMO(チャデモ)協議会が推奨する国際標準規格をベースとした「二輪CHAdeMO」とし、ユーザーの充電環境に合わせて1200Wと450Wの2種類の充電器を用意する。
| 充電時間 | 1200W | 450W |
| 0→100% | 約4時間 | 約9時間 |
| 20→80% | 約2時間 | 約5時間 |
LFP(リン酸鉄リチウムイオンバッテリー)の長所は、三元系と呼ばれる高性能リチウムイオンバッテリーに対し、高い安全性(燃えにく)、長寿命、高い耐熱性、環境負荷の低さ、そしてコストの安さが挙げられる。一方で三元系に対してはエネルギー密度が低いことから大きく重くなりがち、リサイクル性の課題(価値のある金属が少ない)といった短所がある。
これまでに海外製のEV(四輪)や、ホンダが一部機種で純正採用するエリーパワー製の始動&補器類用バッテリー、また一般的な用途のポータブルバッテリーといった用途で普及してきているが、ついにホンダもバイクの動力用バッテリーとして採用に至ったわけだ。
ホンダは2023年の時点で「電動二輪車の完成車のコストに関して、2030年には現在(2023年)の交換式バッテリー仕様の電動二輪車より、50%の削減を目指す」としており、その尖兵にもなるUC3は相応に廉価な価格での販売が期待できそうだ(日本に導入されるかどうかはわからないが)。
Honda UC3[2026 Thai and Vietnam model]
前述の基本装備に加え、走行中のエネルギーを回収する回生ブレーキシステム、前後輪のブレーキを連動させるコンビブレーキ(CBS)、Honda RoadSync対応の5インチTFTディスプレイ、スマートキーシステム、USBタイプCポートを備えたフロントインナーボックスなどを採用している。価格は未発表だ。
デザインはフロントからリヤまで曲線を取り入れ、テールまわりはアーチを描いたような特徴的なフォルムのスタイリングに。初の電動モーターサイクル「Honda WN7(ホンダ ダブリューエヌセブン)」にも採用した横一文字のシグネチャーライトや、ブラックを基調とした車体色にゴールドカラー部品によるアクセントを取り入れた、電動二輪車専用のカラーリングを設定した。また、プロダクトマークには、電動二輪車専用の新たなフォント「Honda」を採用している。
※以下の色名はベトナム公式HPより
Honda UC3[2026 Thai and Vietnam model]メテオライトブラック
Honda UC3[2026 Thai and Vietnam model]タヒチアンパールブルー
Honda UC3[2026 Thai and Vietnam model]パールホワイト
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| モーター | ホンダ独自開発・生産のホイールサイドモーター、最大出力6.0kW |
| 最高速度 | 80km/h |
| 加速性能 | 0-20m加速は160ccクラスのガソリン車に相当 |
| 航続距離 | 約120km(1充電あたり、WMTC基準) |
| バッテリータイプ | 固定式LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリー |
| バッテリー容量 | 3174 kWh |
| バッテリー安全基準 | 防水規格IP67、国連規則UNR136(バッテリー・電気安全)準拠 |
| バッテリー配置 | フロア下に固定配置 |
| 収納スペース容量 | 26L |
| 充電規格 | 二輪車向け国際充電規格「CHAdeMO」に準拠 |
| 付属充電器 | 1200W |
| 充電時間 | 0%→100%:約4時間、20%→80%:約2時間 |
タイ・ベトナムでの充電ステーション設置によるインフラ整備
また、ホンダはUC3発売に合わせ、タイとベトナムで固定式バッテリー搭載車用の充電インフラの整備に取り組む。
タイではバンコク市内を中心にホンダの二輪販売店やショッピングモールに二輪チャデモ方式の充電ステーションの拡充を図る。同様にベトナムの主要都市(ハノイ、ホーチミン、ダナン)にあるホンダの二輪販売店に充電ステーションの設置を始め、2026年6月の稼働を目指すとしている。
また、ホンダはタイとベトナムで、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック イー)」を用いた電動二輪車の利用環境改善にも平行して取り組んでいく。バンコクとハノイのホンダ二輪販売店には「Honda e:Swap BATTERY STATION(ホンダ イースワップ バッテリーステーション)」の設置拡充を進めていく。
生産体制と電動車ラインナップの拡充
UC3はタイホンダで2025年12月から生産が開始され、同国およびベトナムへ供給。さらに、ベトナムでは2026年中にホンダベトナムでの国内生産への切り替えを予定しており、政府主導で電動化シフトが加速しているベトナム二輪市場にタイムリーに商品を届けるための生産体制を構築していく。
ホンダは、2050年にホンダの関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現を目指しており、二輪事業においてはICEの進化に継続的に取り組みながら、今後の環境戦略の主軸として二輪車の電動化も平行して進めていく。今後、ホンダはグローバルで電動二輪車を毎年投入する予定で、ユーザーのニーズに応える幅広い商品ラインナップを展開予定だ。多様化するユーザーのニーズや環境規制の強化にともなう二輪市場の変化に合わせ、商品と事業活動の両面から包括的なアプローチをとることで「自由な移動の喜び」をより多くの人々へ提供していきく。将来的には、バッテリーのリパーパスとリサイクルに取り組み、循環型バリューチェーンの構築を図り、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していく構えだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(新型EV/電動バイク)
兄弟車の「EM1 e:」よりも約10万円安い! ホンダは、原付一種の電動二輪パーソナルコミューター「ICON e:」を発表した。発売は2026年3月23日を予定しており、バッテリーと充電器を含めて22[…]
ホンダのバッテリーシステムを使った電動二輪車・ヤマハ「JOG E」 電動二輪車はもちろん、ポータブル電源や農業ロボット、投光器、小型建機などの使用実績がある着脱可搬バッテリー「Honda Mobile[…]
機敏なスポーツモードと安定感のある旋回性能 ʼ25年の全日本ロードレース選手権では、J-GP3クラスで自己最高のシリーズランキング3位を獲得。応援ありがとうございました!! このシーズンオフは、「奥の[…]
電化政策は失敗したが、静かに浸透するEV二輪車 かつてEICMAをあげて後押ししていた電動バイクたちは、いま会場にはない。代わりに中国ブランドやインドブランドが台頭し、かつて電動バイクブランドやそれを[…]
日本発のトランスフォーマブル・バイク「タタメルバイク」 タタメルバイクは、日本のものづくりの精神と、自由な発想が融合して生まれた「持ち運べるパーソナルモビリティ」だ。最大の特徴は、その名の通りの折り畳[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA] | 新型EV/電動バイク)
兄弟車の「EM1 e:」よりも約10万円安い! ホンダは、原付一種の電動二輪パーソナルコミューター「ICON e:」を発表した。発売は2026年3月23日を予定しており、バッテリーと充電器を含めて22[…]
機敏なスポーツモードと安定感のある旋回性能 ʼ25年の全日本ロードレース選手権では、J-GP3クラスで自己最高のシリーズランキング3位を獲得。応援ありがとうございました!! このシーズンオフは、「奥の[…]
風のように静かで、1000㏄並みにトルクフル! ホンダは昨年のEICMA2024で「EV Fun Concept」を出展したが、今回のEICMA2025では「WN7」を発表。基本スタイルは踏襲するもの[…]
電動車ならではのレイアウトの自由度の高さを活かした新設計の二輪駆動EVバイク「EV OUTLIER Concept」世界初公開 10月30日(木)から11月9日(金)まで東京ビッグサイトにて開催されて[…]
Honda CUV e:(2025) Hondaが「2050年カーボンニュートラル社会の実現」に向けた取り組みの一環として進めている、2輪車の電動化。その歴史は1994年の「CUV-ES」から始まり、[…]
人気記事ランキング(全体)
簡単取り付けで手間いらず。GPS搭載でさらに便利に バイク用品、カー用品を多数リリースするMAXWINが開発したヘルメット取り付け用ドライブレーコーダー「MF-BDVR001G」は、ユーザーのニーズに[…]
型崩れを防ぐEVA素材と整理しやすい内部構造 布製のサドルバッグにおける最大の欠点は、荷物が入っていない時に形が崩れ、見た目が損なわれることにある。しかし、本製品はマットフィルムとEVAハードシェル素[…]
スーパースポーツの魂を宿した優美なる巨躯「CB1000F」 ホンダのプロダクトブランド「CB」の頂点として君臨する新型CB1000F。その最大の魅力は、なんといっても歴代CB750Fを彷彿とさせる流麗[…]
初代バットサイクルはヤマハの250バイクがベース 今回ご紹介するのは1966年に全米で放送されたバットマンのテレビドラマシリーズに登場したバイク。その名も「バットサイクル」と呼ばれる側車付きバイク、い[…]
YKKと組んだ“固定力革命”。ねじれに強いPFバックルの実力 今回のシェルシリーズ刷新で最も注目すべきは、YKKと共同開発したPF(ピボットフォージ)バックルの採用だ。従来の固定バックルは、走行中の振[…]
最新の投稿記事(全体)
伝説のヨンフォアを凌駕するX字にクロスしたエキパイが輝く最高峰のプライド! 1981年の終わりに近い11月、ホンダはCBX400FというCBに「X」を加えた新機種をリリース、その内容はまさにありったけ[…]
開幕戦タイGPを前に WRCで大活躍している勝田貴元選手と食事をしました。彼は’24年からモナコに住んでいるんですが、なかなか会う機会がなかったんです。実はMotoGPもかなり好きでチェックしていると[…]
1992年モデル:新世代のホンダロードスポーツ 滑らかな曲線と面で構成された、力強くボリューム感のある18Lの燃料タンク形状に、独立したサイドカバー、そして躍動感ある跳ね上がり気味のリアカウル。すっき[…]
色褪せない魅力で進化を続ける「CT125ハンターカブ」 スーパーカブシリーズのなかでも、ひときわ異彩を放つアウトドアマシン「CT125ハンターカブ」。2020年の登場以来、その人気は留まるところを知ら[…]
華やかなパレードの裏に隠された「究極の即応性」 皇宮警察は、天皇皇后両陛下をはじめとする皇室の護衛や、皇居などの警備を専門とする警察組織である。彼らの任務において、ひときわ異彩を放っているのが側車付き[…]
- 1
- 2





































