
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。この記事ではホンダCBX400Fの先進性について解説する。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHIVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
同時代の旗艦とは異なる改革の旗手としての資質
新技術はビッグバイクから。昨今の2輪業界ではそれが常識になっているけれど、’80年代は400ccが改革の旗手となるケースが珍しくなかった。CBX400Fはその先駆けと言えるモデルで、アルミスイングアームやプロリンク式リヤサスペンション、インボード式の鋳鉄製ブレーキディスク、アンチダイブ機構のTRACといった、後に他機種へ転用された最先端メカを随所に導入。
また、新技術とは異なるものの、並列4気筒らしさを強調するクロスマフラーや、日本仕様初の装備となるオイルクーラーも、デビュー時には大きな注目を集めた機構だった。 当時のクラストップとなる48psを発揮するエンジンにも新機構は数多く導入されていた。
Y字型ロッカーアームを用いた4バルブヘッドはもちろん、1次減速にハイボチェーン(=4軸構成のCB-F系と同様)を用いつつ、エンジン長短縮のためにプライマリーシャフトを省いた3軸構成や、そのレイアウト成立のために採用された逆回転クランクシャフト、コンパクト化促進のためにすべてのボアピッチが異なるシリンダーなど、当時のホンダとしてはかなり斬新な内容だったのだ。
しかし、この基本構成を踏襲したのは後継に当たるCBR400Fのみ。その背景には周辺技術の発達と高回転化の促進という事情があったようで、水冷化が図られた’80年代中盤以降のCBRシリーズのエンジンは、カム駆動のギヤトレイン機構(250/400/750が導入)を除けば、構成はオーソドックスと言えるものだった。
ENGINE:斬新な構成で小型化を推進
DOHC4バルブ並列4気筒という型式はすでに目新しさはなかったが、逆回転クランクやシンプルな構成のカムチェーンなど、CBX400FのエンジンはCB-F系(クランクは正回転でカムチェーンは2段がけ)とは異なる機構を随所に導入。水冷&カムギヤトレイン化されたCBR400R(’86年)や現行型CB400SFまで継承される55×42mmというボア×ストロークは、同時代の400cc4気筒車でもっともショートストローク。(兄弟車のCBX550Fはロングストローク寄りの59.2×52mm。)
クランク左端に発電機、右端に点火系ユニットを備える構成は、既存のホンダ製並列4気筒と同様。ただしスタータークラッチを右側に設置したのはCBX400Fが初めて。
CB-FシリーズとCBX(1000)のバルブ駆動が直押し式だったのに対し、CBX400Fはロッカーアーム式を採用。
日本車の国内仕様では初装備となるオイルクーラーは、運輸省の認可を取得する苦肉の策として、当時はオイルリザーバータンクと呼ばれた。
FRAME&CHASSIS:軽快さと扱いやすさに対するこだわり
前任のホークシリーズが、エンジンを強度部材として用いるダイヤモンドフレームだったのに対して、CBX400Fは当時の定番と言うべきダブルクレードルフレーム。軸間距離1380mm/装備重量189kg/キャスター26度/トレール97mmという車体寸法からは、既存の400cc並列4気筒とは一線を画す、軽快さと扱いやすさを追求した姿勢が伺える。
なお同時代のライバル勢は、Z400FX:1390mm/208kg/26度/98mm、XJ400:1405mm/193kg/27度/109mm、GSX400F:1415mm/195kg/27度/98mmだった。
一般的なステンレス製を上回る利き味をねらって鋳鉄ディスクを採用しつつ、鋳鉄特有の錆びを隠すためのアウターカバーを持つ前後ブレーキ。冷却対策でディスクはベンチレーテッドとし、カバーにも多数のダクトを設ける。ディスクを内側からまたぐ前後の片押し2ピストンキャリパーも独特。φ35mmFフォークはアンチダイブ機構TRACも装備。
リヤサスはモトクロッサーで実績を積んだプロリンク式で、ショックはエア加圧式。ニードルベアリング支持のスイングアームはアルミ鋳造製。いずれも当時のオンロードバイクでは画期的な機構だった。
ダブルクレードルというフレーム型式は同時代のライバルと共通。ただし、XJとGSXのバックボーンパイプが3本だったのに対して、FXとCBXは1本。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
「世界最良」を掲げた開発陣の執念。ホンダの衝撃を超えて生まれた奇跡 1960年代、米国で高まる4ストローク需要に応えるため、カワサキは1966年に750cc4気筒の開発に着手していた。しかし、1968[…]
’70年代初頭に起こった国産4社の熾烈な戦い 昨今ではほとんど皆無になってしまったけれど、’70〜’90年代の2輪の世界には、フラッグシップと共通の機構を備える350〜400ccが数多く存在した。その[…]
通常の量産車とは異なる限定車ならではの手法 近年の日本製スーパースポーツの上級仕様は、基本設計をスタンダードモデルと共有しながら、足まわりや電装系などに豪華な装備と機構を採用するのが通例になっている。[…]
4スト4気筒に匹敵する扱いやすさを目指して ’69年末から開発が始まった新世代のGTシリーズは、同年10月の発表と同時に世界を震撼させた、ホンダCB750フォアを仮想敵に設定していた。 もちろん、直接[…]
【1950〜60年代】初任給の15倍!? 有力チームだけに許された伝説の「CRシリーズ」 市販レーサーではあるものの(CR110/93は保安部品付きも存在)、この4台を入手できたのは有力チームのライダ[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
通常の量産車とは異なる限定車ならではの手法 近年の日本製スーパースポーツの上級仕様は、基本設計をスタンダードモデルと共有しながら、足まわりや電装系などに豪華な装備と機構を採用するのが通例になっている。[…]
疾走するモンキーに視線釘付け! ゆるっと着られる「MonkeyビッグシルエットTシャツ」 体のラインを拾いにくく、トレンド感のあるスタイルが叶うビッグシルエットTシャツ。ライディングパンツやデニムにも[…]
【1950〜60年代】初任給の15倍!? 有力チームだけに許された伝説の「CRシリーズ」 市販レーサーではあるものの(CR110/93は保安部品付きも存在)、この4台を入手できたのは有力チームのライダ[…]
カフェレーサーから市販レーサーへの変化 今後の主役はイレブン。ヤマハが’78年に発売したXS1100が、欧米で大ヒットした時点で、おそらく他の国産3社はそう感じたに違いない。 事実、当時のスズキとカワ[…]
フルカウルスポーツ『CBR400R FOUR E-Clutch』が目指すものは? 待望の復活を遂げた新型400ccネイキッドCB400 SUPER FOUR E-Clutchと同時に、エンジンや基本骨[…]
人気記事ランキング(全体)
三輪ソーラーEV「スリールオータ」 スリールオータは、電気だけで動く極めて実用的な小型三輪モビリティだ。ドアがない仕様は「側車付き軽二輪車登録」、ハードドアを装備した仕様は「ミニカー登録」と、ユーザー[…]
ガソリン代ゼロ!50cc原付やキックボードを凌駕する圧倒的な経済性 この高い経済性は、毎日の通勤や通学における移動コストを最小限に抑え、家計を大きく助けてくれる。車体重量の面でも、重いエンジン部品を多[…]
スマートさでエレクトロタップを圧倒するのがギボシ端子による接続 スマートフォンより大きな画面で情報が読み取りやすく、ドライブレコーダー一体式の製品もあり、価格的にもスマホよりリーズナブルなものも多いこ[…]
際立つ「3つの特別装備」とグラフィックの所有感 日本では2017年に生産終了して以来、復活が待たれているタフ125ccスクーターのBW’S。実は現在でも台湾では販売が続いている。このたび、現地で登場し[…]
7.0リッターV8ツインターボ×軽量カーボンボディ まずは、750馬力を絞り出すエンジンこそサリーンの真骨頂かと。フォード製の巨大な7.0リッターV8エンジンに、ギャレット製のターボをツイン装備。しか[…]
最新の投稿記事(全体)
鳥の翼から紡がれる伝統のS字シルエットと現代機能のスマートな統合 いわずと知れた日本を代表し、世界で愛される名車スーパーカブ。そのプレミアムモデルであり、長兄となるのが125ccエンジンを積んだC12[…]
「世界最良」を掲げた開発陣の執念。ホンダの衝撃を超えて生まれた奇跡 1960年代、米国で高まる4ストローク需要に応えるため、カワサキは1966年に750cc4気筒の開発に着手していた。しかし、1968[…]
作品の舞台となった山梨の魅力を訴求する企画展「ゆるキャン△と山梨▲」 本展を担当する山梨県立博物館学芸課の海老沼真治さん自身も『ゆるキャン△』ファンで、今回の企画も「いつか博物館とコラボした展示をやり[…]
’70年代初頭に起こった国産4社の熾烈な戦い 昨今ではほとんど皆無になってしまったけれど、’70〜’90年代の2輪の世界には、フラッグシップと共通の機構を備える350〜400ccが数多く存在した。その[…]
際立つ「3つの特別装備」とグラフィックの所有感 日本では2017年に生産終了して以来、復活が待たれているタフ125ccスクーターのBW’S。実は現在でも台湾では販売が続いている。このたび、現地で登場し[…]
- 1
- 2













































