
現在、世界で生産されるバイクは年間6000万台に迫り、そのうち日本メーカーが半分近くのシェアを握っている。全体の3%強にあたる約200万台を生産し、日本4大メーカーの一角に数えられるのがスズキだ。乗るとどんな特徴がある?
●文:ヤングマシン編集部
“鈴菌”と呼ばれて
二輪と四輪を両方とも継続的に量産しているメーカーは、世界を見渡してもホンダ、BMW、そしてスズキの3社のみだ。1920年(大正9年)に個人経営だった織機向上が鈴木式織機株式会社へと生まれ変わり、1937年に最初の自動車用試作エンジンを開発、1939年に小型四輪セダンを数台製作したのが、スズキの自動車産業への挑戦のはじまりだった。
のちに自動車開発は戦争の影響でいったん中止されたが、1952年に自転車用補助エンジン「パワーフリー」を発売して二輪車メーカーへの第一歩を踏み出した。
その後、1954年に完成車「コレダ」を発売し、同年6月1日には社名を鈴木自動車工業株式会社に変更。続く1955年10月に初の軽四輪「スズライト」を発売した。
1960年にマン島TTレースに初出場したことがきっかけで欧州への輸出が伸び始め、同じく1960年代にアメリカにでの販売も軌道に乗っていった。
レースでは1962年にマン島TTレースの50cc部門で優勝したのを皮切りに小排気量クラスで強さを見せ、1974年にはバリー・シーンとジャック・フィンドレーをライダーとしてロードレース世界選手権500ccクラスに参戦開始。以降、MotoGPに至るまで最高峰クラスで6人・7度のチャンピオンを獲得してきた。
初期は2ストロークエンジンのメーカーだったが、1976年に初の4ストローク、しかも空冷4気筒DOHCエンジンを搭載したGS750、同じく2気筒のGS400を発売し、大型スポーツバイクでも存在感を増していった。
そんなスズキのバイク、やや地味めな機種と先鋭的なデザインの機種が入り混じり、“真面目”と“変態”が両立したメーカーと語られることが多い(ですよね?)。一部のユーザーからは『鈴菌』という言葉も生み出され、一度乗ったら病みつきになる(=熱狂的なファンになる)ことがわかりやすく表現されている。
電子制御パワーモードS-DMSを量産二輪車で世界初採用したのは2007年型GSX-R1000。
というわけで、スズキのバイクに乗ったらどんなことを感じるのか? 編集部の独断と偏見で選んでみた。下記のほかにももっとある! というご意見もあるだろうが、ここではスズキ車の印象を5つに集約してみたい。
1.真面目な造り込み
この“真面目さ”というのはエンジン特性から感じられることが多いが、ケレン味のない実直な造り込みで回転域を問わず素直にトルクを発生し、実用域での扱いやすさがそのまま高回転域でも印象を大きく変えることなく発揮される。
高回転域の元気のよさをアピールするために中間域にトルクの谷をつくるといった過剰な演出は皆無と言ってよく、小排気量から大排気量までスズキらしい特性が相似形で与えられている。
スロットル操作に対する反応が1対1で過不足なく得られ、低中回転の実用域を使った街乗りもしやすい。
Hayabusa
2.何を隠そうハンドリングのスズキ
「ハンドリングの○○」といえば昔はY社の専売特許のように言われたが、じつはスズキも素直で扱いやすいハンドリングのマシンが多い。旧車になると機種によって個性があるものの、特に2000年代以降はH社にも似た車体の素直さと前述のトルクのあるエンジン特性が相まってとても扱いやすい。キャラクターはY社と異なるもののスズキならではのハンドリングへのこだわりが感じられるはず。
フロント寄り/リヤ寄りの荷重を意識しなければならないようなこともなく、多くのライダーにとって馴染みやすいのがスズキのバイクなのだ。
ちなみに、素直だが気分が高揚しても反応が想像の延長線上にあるH社と、乗り手の高揚感に合わせて反応も変化していくY社と比べるなら、どちらかといえばH社寄りのキャラクター。その中に、絶妙に角が落とされた優しさも垣間見える。
GSX-8R
3.ライダーが触れる部分の優しさ
小排気量から大排気量まで機種を問わず馴染みやすいライディングポジション構成になっている。ここでもアグレッシブさを表現するために過度な演出をするようなことはなく、どの機種も一貫している。
それはニーグリップのしやすさからシートの着座位置への据わりのよさ、ステップやハンドルの位置関係などが自然だからこそなのだが、違和感がないゆえに意識されにくい部分でもある。
4.我が道を征く
真面目な造り込みで周囲に流されないということも『我が道を征く』ではあるが、デザインでは“変態”的な側面が出てくることも。1981年に誕生した「GSX1100S KATANA」で独創的なマシンを生み出したスズキは、1984年の3型カタナや1986年のGSX400Xインパルス(東京タワーフレームのやつ)などで他社が真似できないデザインを具現化していった。
現代においても最新のKATANAやVストロームシリーズの怪鳥デザインは当時のマシンをオマージュしたものと認識されているはずだ。
また、1999年のHayabusa(GSX1300R)から始まった縦目2灯デザインは最新のGSX-8シリーズやDR-Z4シリーズでもアイコンになっているし、2000年代のジェンマ(スクーター)やB-KING(ハヤブサベースのハイパーネイキッド)なども記憶に新しい。
一方で、スズキは新技術の採用にも意欲旺盛だ。現在は一般化してきたパワーモード設定を最初に量産バイクに投入したのはスズキのS-DMS=スズキドライブモードセレクター(現在はSDMSと表記)。初採用は2007年型のGSX-R1000(K7)で、ダブルバタフライのスロットルバルブは電子制御スロットルの一種であり、いち早くパワーモード切替を実現できたのだった。
世界耐久選手権(EWC)では2024年、他社に先駆けていち早くサステナブルアイテムを用いたGSX-R1000Rを「チームスズキCNチャレンジ」として鈴鹿8耐で走らせ、8位完走している。
Team SUZUKI CN CHALLENGE
5.安い!
2024年から2025年にかけては物価上昇の影響で次々にバイクが値上がりしており、発売時期によって値ごろ感があるのかどうか把握しにくい面もあるが、総じてスズキのバイクは良心的なプライスタグが付いていることが多い。
特に250cc以下のクラスはこの傾向が強く、ジクサー150のように『高速道路を走れて40万円切りのギヤ付きマシン』といった唯一無二の存在も。四輪では軽自動車や小型車で庶民の足を支えてきたが、バイクもそうした意味でのスズキらしさを持ち合わせている。
まとめ
スズキの個性を語ろうとするとどうしてもマニアックになってしまう部分が出てくるが、それも情熱的なスズキファン=鈴菌感染者を生み出す原動力のひとつなのかも。
バイクメディア界隈でも、比較的マニアックな嗜好を持つジャーナリスト/ライダーがスズキを高く評価する傾向にある。言ってみれば「乗ればわかる」のがスズキらしさであり、派手なわかりやすさを求める志向の人にはスルーされがちな面もなきにしもあらず。
それでも、一度乗ったら長く愛せるのがスズキなのである。
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