
目覚ましい発展を見せる電子制御技術。自動クラッチ/電子制御スロットル/ACC/ABS/トラクションコントロール…しかし「いや俺のテクが上だろ」と思うライダーも少なくないのでは? そこで改めて現状の電制について実力や使い方を論じてみたい。ここでは各社が一斉に力を入れ始めた、自動クラッチを解説。
●文:宮田健一
ホンダはEクラッチとDCTの二面展開作戦だ
自動クラッチブームの火付け役として、まず一番目に挙げられるのが今のところホンダCB/CBR650Rとレブル250に採用されている”Eクラッチ”。機構としては既存クラッチのシャフト部分を人力によるワイヤーの代わりにモーターで駆動するというもの。これを電子制御で緻密な半クラ制御も行えるようになっている。
ホンダ E-Clutch
ユニークなのはクラッチレバーも残しておくことで、自動クラッチと従来からの手動クラッチをシームレスに切り替えられる点だ。磨きぬいたライテクを駆使して本気のスポーツ走りをしたい人にも対応してくれる。レバーがあるため自動クラッチ車の中では唯一AT限定免許での運転が不可だったり、シフトの自動チェンジ(AT)を持っていないという面もあるが、バイクに”操る楽しさ”を一番に求めている人には特に弱点とはならないはずだ。
どうしてもATが欲しい人のために、ホンダには”デュアルクラッチトランスミッション(DCT)”もある。NC750シリーズやアフリカツイン、レブル1100など幅広く展開しているこちらは登場してから早13年目でクラッチの繋がり方やシフトタイミング制御も当初と比べると劇的に熟成。ほぼショックなしで瞬時にギヤが切り替わるフィーリングにファンも多い。弱点としては約10kg増となってしまうシステム重量。その点、Eクラッチは2〜3kg増で済むのが強みだ。
ホンダ DCT
開発者コメント:小野惇也さん
小野惇也さん
“マニュアルミッションの進化とは”を根底に、開発に10年かかりました。クラッチを押さえつける力の加減具合はほぼ無段階と言えます。クイックシフター以上の機能、DCT未満の価格とすべく頑張りました。DCTとの棲み分けは、お客様の選択肢を増やしたかたちだと考えています。
搭載モデル
CB650R
ヤマハは未来像に自信。Y-AMTに見るヤマハの矜持
次にヤマハのMT-09と07およびトレーサー9GT+に設定されている”Y-AMT”。自動クラッチ部分はホンダと同じくレバーでワイヤーを引く代わりにモーターを使うというもので、これにミッションのオートマ(AT)機構もプラス。クラッチ部分はレバーが存在せず自動制御オンリーだが、AT部分は完全自動任せのほかに左手元スイッチでマニュアルによるシフトチェンジも可能となっている。
ヤマハ Y-AMT
ATの切り替えにはモーターアクチュエーターを使用するが、シフトロッド内にスプリングを挿入することで変速時間の短縮を実現。小気味よいフィーリングでスポーツさを演出しているのも特徴のひとつだ。
なお、足のシフトペダルをオプションでも用意しないのは、左足の意識はマシンホールドと体重移動のみに専念すべし=その方が上手く走れるというヤマハの矜持だ。
開発者コメント:福嶋健司さん
福嶋健司さん
YCC-Sから技術的なブラッシュアップをしてAT機能を追加。それがY-AMTです。例えばMT-09においては、シフトロッド内にスプリングを仕込み、ギヤのドッグ数を6つに増やしました。駆動切れの時間を短くするためです。Y-AMTは、オートバイの楽しさをもっと広げるものだと考えています。
搭載モデル
TRACER9 GT+
今後に期待のカワサキ
国産ではカワサキもNinja7/Z7 Hybridに”マニュアル機能付きオートマチックトランスミッション”という名称でシステムを搭載。操作的にはヤマハY-AMTとほぼ同じで、クラッチレバーなしの完全自動クラッチ+シフトペダルなしのATだ。やはり手元スイッチによるマニュアルシフトチェンジも可能となっている。
カワサキ マニュアル機能付きオートマチックトランスミッション
ただこちらはハイブリッドエンジンということもあり、走行モードごとのATタイミング条件に慣れるまで、ちょっと時間が必要かも。またエンジン停止状態だとギヤがニュートラルと同じ状態になる上にパーキングブレーキがないので、坂道に駐車する際は勝手に動き出してしまわぬよう、フロントブレーキレバーをゴムバンドで固定するなどの工夫をしておきたい。もっともハイブリッドという市場調査の意味合いが大きいマシンなので、熟成を重ねればまだまだ化けるはず。
エンジンはNinja/Z400系の並列2気筒をベースとしているため、将来的にこれらに転用するのも難しくないと思われる。今後の展開に期待大だ。
搭載モデル
輸入メーカーも黙ってねえ! BMWやKTMも次世代の覇権を狙う
そして外国車勢。BMWは”ASA(オートメイテッドシフトアシスタント)”と名付けたシステムをまずはR1300GSアドベンチャーに搭載。こちらもモーターアクチュエーターでクラッチとミッションをそれぞれ自動制御。特徴的なのは、マニュアル変速モードにヤマハやカワサキのようにハンドレバーを使用するのではなく、従来通りのフットペダルを採用しているという点。このあたりの考え方は自動クラッチ時代に合わせた新しい操作方法を前面に推しているヤマハとは真逆で、BMWは既存の操作体系の延長で違和感なくライディングを楽しめることを一番に考えているようだ。
BMW ASA(オートメイテッドシフトアシスタント)
直近ではKTMも”AMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)”を1390スーパーアドベンチャーSエヴォに搭載して殴り込みをかけてきた。自動遠心クラッチを採用しているのが特徴で、シフトパターンも一般的な「1-N-2-…6」ではなく「P-N-1-2-…6」と坂道駐車も怖くない「P(パーキング)」が用意されている。マニュアル変速モード用には好みに応じてどちらも使えるようハンドスイッチとシフトペダルを両方装備しているあたりも実際に使う側の気持ちをしっかり考えて製品化してきたという印象だ。
KTM AMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)
代表者コメント:大隈武さん
大隈武さん
ASA、要はクラッチレバーが付いていない車両です。しかしBMWの場合はまだシフトペダルを残しております。自分でも操作できるように、ということです。したがって、変速をすべてお任せするDモードに加え、ペダルを踏んでギヤチェンジするMモードも用意しました。
BMW ASA 搭載モデル
KTM AMT 搭載モデル
1390 SUPER ADVENTURE S EVO
各車の自動クラッチの仕様一覧
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