
屹立したシリンダーのヘッドから連なる4本のエキゾーストパイプ。いつの時代もライダーの心を熱くする“カワサキの直4”。打倒ホンダを誓って世界に羽ばたいたZ1こと900super4に始まり、兄貴たち憧れのゼッツーに、AMAで大活躍したローソン・レプリカ、世界のミドルと日本の400を牽引したザッパー&FX、そして新たな時代を切り開いたニンジャの水冷直4たち…。一度は乗っておきたいカワサキ直4を紹介する本特集。今回は空冷400系をお届け。
●文:伊藤康司(ヤングマシン編集部) ●写真:YM Archives
400cc4気筒ブームの立役者、第3世代の直4を実現したカワサキの戦略
Z1/Z2系からZ650のザッパー系に続くカワサキ直4の第3弾がZ400FX。1980年代初頭に日本で巻き起こった空前のバイクブームの中で「400cc4気筒」のジャンルを確立した立役者といえるバイク…だが、そこには時代の要望とカワサキの技術と戦略が密接に関係していた。
当時の4気筒戦略はホンダがリードし、CB750フォアに次いでCB500フォア、CB350フォアを発売。そして1974年には排気量を拡大したCB400フォアが登場し、カフェレーサースタイルに集合マフラー装備の“ヨンフォア”は人気を博した…が、2年半で生産終了してしまった。
理由は“4ストローク400ccなら2気筒がバランス良いから”とされたが、現実的には部品点数の多い4気筒は生産コストがかさみ、見合った収益を得られなかったことが要因。また性能的に2気筒と大差なかったのも事実だ。
【1979 Z400FX(E1)】ファイアクラッカーレッド
400クラス初の4気筒DOHCエンジン。レイアウトはザッパー系に似ており、プレーンメタル支持の一体型クランクシャフトからハイボ式チェーンでミッションに伝達。輸出車のZ500とはボア×ストロークともに異なる(Z500:55×52.4mm→Z400FX:52×47mm)。
パワーがあり、軽い。威風堂々スタイルのZ400FXは大ヒット
そして1975年10月からの中型二輪免許制度によって、当時は実質的に400ccが上限。その中で唯一の4気筒だったヨンフォアの消滅は、中型免許ユーザーを大いに落胆させた。
そんな状況のところに突如登場したのがZ400FXである。カワサキ第3世代の空冷直4は、ヨンフォアのSOHCに対してDOHCを採用し、最高出力は当時の400クラスで最強の43psを発揮した。
シャシーも新設計で車両重量はZ650より20kg以上も軽量に仕上げ、新潮流の角Z系のスタイルは威風堂々としていた。
そんなZ400FXが大ヒットしたのは言うまでもない。しかし、ヨンフォアが製造コストが要因で生産終了したのに、なぜカワサキはZ400FXの生産に踏み切れたのか? それは輸出モデルのZ500と部品を共通化してコストダウンに成功したから。ただし両車のエンジンはボア×ストロークともに異なり(これはコストがかかる)、この辺りはZ1とZ2の関係に近く、しっかりと性能を追及している。
【1979 Z400FX(E1)】エボニー
400クラス空冷直4の名機は、ゼファーへと続いていく
Z400FXによって400クラスに4気筒の波が押し寄せ、同車はZ400GP→GPz400へと進化した後に、GPZ400Rにバトンを渡す。
そしてレプリカ最盛期の1989年にゼファーが登場して、時代はネイキッドに突入するが、そのエンジンもまた、Z400FXを祖とする空冷直4なのだ。
【1982 Z400FX(E4B)】ファンの要望に応え、Z400GPと併売されたFXの最終モデル。
【1989 ZEPHYR】ネイキッドブームを創出。外観をリファインした直4は46ps。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
商品ではなく「こんなこと、できたらいいな」を描く 今回は見た瞬間にハートを鷲掴みにされてしまったモトクロス系のお気に入りバイクカタログをご覧になっていただきたい。 まずはアメリカホンダ製作によるモトク[…]
ヤマハXJ400:45馬力を快適サスペンションが支える カワサキのFXで火ぶたが切られた400cc4気筒ウォーズに、2番目に参入したのはヤマハだった。FXに遅れること約1年、1980年6月に発売された[…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
マイノリティ好きにはたまらない2スト250で3気筒、走りに刺激はなかったけれど海外でもファンが少なくなかった! カワサキが世界進出の勝負球として、500ccで2ストローク3気筒のマッハIIIをリリース[…]
空冷エンジンのノウハウを結集【カワサキ GPz1100[ZX1100A]】 航空機技術から生まれたハーフカウルとレース譲りのユニトラックサスを装備。デジタルフューエルインジェクション効果を高めるために[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
全身ブラックアウト! 国内ではスタンダード的な位置づけに 「Z900RSブラックボールエディション(Black Ball Edition)」を初生撮り! カワサキがジャパンモビリティショー2025で展[…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
マイノリティ好きにはたまらない2スト250で3気筒、走りに刺激はなかったけれど海外でもファンが少なくなかった! カワサキが世界進出の勝負球として、500ccで2ストローク3気筒のマッハIIIをリリース[…]
空冷エンジンのノウハウを結集【カワサキ GPz1100[ZX1100A]】 航空機技術から生まれたハーフカウルとレース譲りのユニトラックサスを装備。デジタルフューエルインジェクション効果を高めるために[…]
11/1発売:カワサキ カワサキ ニンジャH2 SX SE カワサキの最高峰スポーツツアラー「ニンジャH2 SX SE」の2026年モデルが、11月1日に発売された。スーパーチャージャー搭載のバランス[…]
人気記事ランキング(全体)
最新の安心感と46worksテイストを両立した「究極のコンプリートモデル」 この『#02』は、2024年に限定販売された初代モデルに続くコンプリートカスタムモデル。今まで46worksが得意としてきた[…]
スズキCNチャレンジのファクトリーマシンと同じウイングを装着(一部地域でオプション設定) スズキは今回、初代GSX-R750から40周年にあたる今年、「GSX-R1000」「GSX-R1000R」の復[…]
鮮やかなブルーでスポーティな外観に グローバルサイトでの2026年モデル発表、北米での正式発表に続き、英国でもスズキ「ハヤブサ」の2026年モデルが正式発表された。2026年モデルとしてレギュラーカラ[…]
距離もブランドも関係なし!50人同時通話を実現 EVA Rモデルは、EVANGELION RACINGをモチーフとした特別デザイン(初号機A/B、2号機A/Bの全4モデル)をまとい、ナイトランでも存在[…]
3気筒と変わらない幅を実現した5気筒エンジンは単体重量60kg未満! MVアグスタはEICMAでいくつかの2026年モデルを発表したが、何の予告もなく新型5気筒エンジンを電撃発表した。その名も「クアド[…]
最新の投稿記事(全体)
インホイールモーターなど車体のベースはホンダ製 ヤマハが原付一種の電動スクーター「JOG E」を市販する。2002年に量産初の電動二輪車「パッソル(Passol)」を日本国内で発売して以降、原付一種E[…]
全身ブラックアウト! 国内ではスタンダード的な位置づけに 「Z900RSブラックボールエディション(Black Ball Edition)」を初生撮り! カワサキがジャパンモビリティショー2025で展[…]
今季初の雨、「行くしかねぇ!」の代償 レースも残り3周となったS字コーナー2つ目、転倒を喫した長島哲太の姿がサーキットの大型ビジョンに映し出された。コースサイドで撮影していた私は、思わず「あぁぁ」と空[…]
トータルバランスに優れた走れるオールラウンダー ライダーの年齢やスキルを問わず多様な道でライディングを楽しめる「新時代のスズキスポーツバイク」として、ʼ24年型でデビューしたのがGSX-8R。遅ればせ[…]
幅広いライダーを満足させる扱いやすさと優れた旋回性 日本では2025年4月に発売となった’25年型のヤマハYZF-R25は、デザイン刷新と機能充実化を中心とした変更を受けています。 外観上の大きな特徴[…]
- 1
- 2













































