
2週間のマン島TT期間中、ざっと1万3000台のバイクがやってくる。その中から記者が見つけたレアなバイクを厳選してご紹介!
●文/写真:ヤングマシン編集部(山下剛)
日本車と欧州車がおおよそ半々
マン島をバイクで訪れるには、リバプールやヘイシャムなどの港まで自走し、「スチームパケット社」が運行しているフェリーを利用するのが一般的だが、小型ボートをチャーターしてバイクを運ぶ人もいる。また、モーターホームと呼ばれるキャンピングカーでバイクを運んでくる人もそれなりに多い。イギリスは日本のおよそ2/3の面積しかないし、道路も駐車場も決して広くはないのだが、大型のモーターホームがけっこう走っているし、オートキャンプ場が各所にあるのはもちろんのこと、高速道路のサービスエリアにはコインランドリーを設置しているところもある。
それだけイギリスの人々はクルマやバイクを使った旅を楽しんでいるのだろう。
さて、マン島へやってくるバイクを眺めていると、ざっと半分が日本4メーカー、半分が欧米メーカーだ。年式はかなり広範囲にわたっていて、’50~’70年代の旧車もそこそこ走っているし、’80~’90年代のネオ旧車、’00年代あたりのバイクも多い。
マン島TTレースを観に来るのだからスーパースポーツ勢も目立つのだが、それよりもマン島までの長旅を楽しむためか、アドベンチャーツアラーのほうが多勢だ。
メーカーでいうと、ヨーロッパ勢は圧倒的にトライアンフが多い。日本で見るよりもざっと2~3倍多く、年式も幅広い。やはりお膝元のメーカーは強い。
ナンバープレートを見るとイギリスが多勢で、次いで目立つのはフランスとドイツ、そしてオランダあたりで、なぜか今年はイタリアやスペインのナンバープレートをあまり見かけなかった。また、フランスやドイツの人たちは5~6台の集団でいることが多く、さらにキャンプで長期滞在するためか大荷物を積載しているケースが目立つ。
彼らはまずユーラシア大陸からグレートブリテン島(イギリス)へわたるためにフェリーか列車にバイクを積載するから、2度も海を越えなければならない。だからきっと日本人にとっての北海道ツーリングのように、ヨーロッパのライダーにとってもマン島ツーリングは格別なのだろう。
実際に使われているバイクと、博物館で見た日本の珍車
イギリスでは意外と日本の250ccが人気だ。CBR250RR(MC22)もそんなモデルのひとつだが、そうお目にかかれるものでもない。
ベベル系ドゥカティは、900MHR、900SS、750SSあたりがメジャーで、この900SDダーマはなかなか見られないレアなモデルだ。サイドカバーとテールカウルのマスキングテープは、荷物を積載する際にキズつかないようにしているのだろうか。
日本では650ccがプロダクト1、400ccがプロダクト2として販売されたブロスだが、ヨーロッパではアルミだったフレームをスチールに、チェーンドライブをシャフトドライブに変更したNTV650として販売されていた。まさに日本ではほぼ見かけることがないレアモデルだ。
XJR1300は日本でもとくにめずらしい部類ではないが(最近はそうでもない?)、トライクに改造したものはめったに見られるものではないだろう。テールカウルがそのままのせいか、かつて流行したスカチューンを思い出してしまう。
M1000RRもめずらしいバイクではないが、なんとこちらはスーパーストックレース用にフルチューンされた車両で、パドックで展示販売されていたもの。気になるお値段は2万4250ポンドで、円換算(1ポンド≒195.2円)すると473万2387円。レーシングチューンしてあることを考えるとお買い得!?
スズキの名車ハスラー250は、マフラー形状から察するに1977年の最終型。オリジナルに忠実なレストアを施されたようで、エンジンや足まわりの調子も良さそうだ。
スーパーカブとモンキー125が並ぶ光景は日本ではとくにめずらしくないが、ここがマン島であることを考えると、それぞれのカブのカスタムも含めてなかなか感慨深い。
マン島TT期間中にBSAを見かけることはそうめずらしくはないものの、ゴールドスター以外のモデルはその限りではない。こちらは2ストローク空冷175ccエンジンを搭載したD5バンタム スーパーと思われる。U字ロックをしっかりとかけて盗難対策もバッチリだ。
日本ではナイトホーク250の車名で販売されていたが、こちらではCB250 Two Fiftyの名で販売されていた。同じ車体色で2台並んでいると、どことなく微笑ましい。エンジンは4ストローク233cc空冷並列2気筒OHCを搭載。
イギリスの名車ヴィンセント、こちらはラパイドCか。博物館などでは見かけるものの、実動しているヴィンセントを見ることはかなりめずらしい。オーナーはTTレースのマーシャルで、これから仕事現場へ向かうところだ。
ラヴェルダはイタリアのメーカーで、1873年に農業用エンジンメーカーとして設立。第二次大戦後の1949年にバイクメーカーとなった。50~60年代はレースでも活躍したが日本メーカーの台頭により斜陽化、2000年にモトグッツィと共にピアッジオグループに買収されたが、車両生産は行われずブランドの権利だけが残っている。写真は買収される直前の’90年代後半に発売された750Sフォーミュラで、エンジンは747cc水冷並列2気筒を搭載していた。
日本ではPCIが輸入販売を手がけているモトモリーニだが、なかなか遭遇できないレアバイクだ。それはマン島でも同様で、これ以外に発見することはできなかった。こちらは1187cc87度V型2気筒エンジンを搭載するコルサーロ1200。
イギリスはジャパニーズネイキッドがわりと人気だが、ゼファー550(日本で売られていた400の排気量違い版)はなかなかのレアだ。車両状態はなかなかいいので、日本でも高値で販売されるレベル。湿度が低いイギリスやヨーロッパは、状態のいい車両が少なくない。アメリカで聞いた話では、ガレージのエアコンを365日稼働しっぱなしにしているコレクターもいるそうだ。
かなり状態のいいCB400FOUR。BSAマニアでもあるオーナーにこのバイクの魅力を聞いたところ「エキゾーストパイプがセクシー!」と笑顔で答えてくれた。
まったく詳細不明なカスタム車、その名もドゥカティ・248。916をモチーフとしていることはわかるものの、エンジンやフレームはいったい何がベース……? お分かりになる方、ヤングマシンのXアカウントまでご報告ください!
良好なコンディションのNS400R。レーシングスタンドで駐車しているところから推測するに、ほとんど走らせずにガレージ保管している車両でしょうか。
なんてことのないCRF1100Lアフリカツインだが、ナンバープレートをよく見ると、なんとアメリカのテキサス州。ハードケースをフル装備しているほかタンクバッグやフレームバッグも装着していることを考えると、世界一周中にマン島へ立ち寄ったのかな?
ブラック塗装の空冷エンジンとボディが印象的なカスタムネイキッド、ベース車両がわかりにくい。それもそのはず、このバイクの正体はFZ600。日本では販売されなかった海外仕様車だ。
フルカバードが時代を感じさせるドゥカティ・パゾ907 I.E.を正面から見ると、スーパーロボット レッドバロンを思い出すのは私だけではないはず!? それはさておき、雨のマン島を走ったせいかホイールに汚れはあったもののかなりきれいな車両で、オーナーの愛情を感じさせる一台だった。
エンジンの空冷フィンの無骨さが興味を引くこのバイクは、旧東ドイツのメーカーMZのETZ 250。手の込んだチャンバーとのギャップにも目を引かれる。
この写真ではわからないものの、エンジンはなんとスバルの水平対向4気筒を搭載するトライク。ハンドルバーの幅広さもものすごい!
K100系をフラットトラッカーにしたカスタム。こういう手の込んだカスタムはドイツ人に多い傾向を感じる。
揃ってグロムに乗るカップルは、なんとスイスから自走してきたそうで、900km以上の道のりをたった3日間で走ってきたというからすごい!
ノルウェーからやってきたオーナーは「もともとスピードを出さないからこれくらいがちょうどいい」と単気筒エンジンのCBR250Rがお気に入り。彼とは帰りのフェリーの乗船時に会ったのだが、その後の高速道路のサービスエリアで偶然再会し、1時間もおしゃべりを楽しんだ。
オメガフレームに片持ち式スイングアームのフロントサスペンションを持つレアバイク、GTS1000。国内販売はされず逆輸入車しかなかったため、このバイクのことを知らない人も多いかも。この車両も状態は良好で、オーナーは「美しいし、手放すつもりはないよ」と話していた。
TTレースのスタート/フィニッシュであるグランドスタンドにあるアライヘルメットの物販ブースに展示してあったギャグ。スクリーンにつけられたポップには「またがっちゃダメだよ。売るかもしれないから」と書かれていた。さて、売れたのかな?
ここからマン島モーター博物館に展示してあるバイクからユニークなものを厳選してご紹介。こちらはアメリカのロコン社が’50~’60年代に販売していた二輪駆動車トレイルブレーカー。最大登坂角60度で、ホイールはタンクになっていて水や燃料を入れることができるという、実にワイルドなバイクだ。
日本でもお馴染みのサイドカーのウラルだが、これは燃料供給がまだキャブレターで、ブレーキもドラムだった時代の車両。かなりの年代物と思いきや、なんと2000年式。この頃までは本当に「生きる化石」という表現がぴったりだった。
バイクにロータリーエンジンを積んだのは、このDKW ハーキュレスW2000のサイドカー/ツアラー仕様。エンジンの設計はザックス社で、排気量294cc、最大出力27~33psとされる。ペイントは前オーナーが施したとのこと。
かつてブラジルに存在したメーカー、アマゾナスのツーリズモ1600(1985年)。エンジンはフォルクスワーゲンの1600cc水平対向4気筒をギアボックスごと搭載しているためリバースギアも装備。当時はハーレーダビッドソンを採用していたブラジル警察用に開発されたそうだ。
日本を代表するタイヤメーカーのブリヂストンがバイクを製造していたことを知らない人も多いかもしれない。1970年製350GTRは輸出専用車だったそうで、日本にもあまり現存していないレアバイクだ。
BSAが1953年から1957年までの間に2万9000台も製造していたというウィングホイール。一般的な自転車の車輪と交換することでモペッド化でき、最高速度45km/hで走れたそうだ。
ぴかぴかにレストアされたVFR400R(NC30)とVFR750R(RC30)がこうして並んでいる光景は、日本のバイクファンとしては思わずニンマリしてしまう。ちなみにRC30はTT期間中のマン島でよく見かけるレアバイクのひとつだ。
Z1かと思いきや、なんと海外なのにZ2(1973年)を展示しているところがめずらしい……と思ったものの、考えてみれば海外のバイクファンからすれば日本仕様だったZ2のほうがレアバイク。とはいえこの車両はアメリカから輸入されたそうで、ヨーロッパの一部の国でもZ2は販売されていたとのこと(イギリスでは販売されていなかった)。
さて、ここからはオマケ。マン島モーター博物館には地上を走る動力付きの乗り物なら何でも展示していて、戦車まで置いてある。そんな中でも異彩を放っているのが、日本の霊柩車(キャデラック)。海外から見ればこれが葬儀用のクルマとはにわかに信じがたいだろうし、昨今の日本でも見られなくなっていることを考えれば博物館での展示も当然!?
こちらも日本の独創性が表現されたバス。マン島モーター博物館は2015年にこれを購入したそうだが、どこの幼稚園で使われていたものかは不明。ネット検索してみると機関車トーマスや新幹線、ネコなどを模した送迎バスもあり、なるほど、デコトラにも通じる日本独特(いや、インドのトラックなどもあるからアジア全体かも)の文化なのかと思わされた。
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