バイクに乗って砂漠を走りたい、そんな願いから生まれたパリ・ダカールラリーを舞台に進化し続けたヤマハ「テネレ(Ténéré)」シリーズが、2023年で誕生40周年を迎えた。これを記念して、ヤマハは欧州全土で記念展示ツアーが行う。歴史的なテネレ(1983~2010年)のコレクションとパリダカマシンが展示されるという。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
XT500で第1回、第2回を連覇したシリル・ヌヴーに続け!
ヤマハSR400/500のベースにもなった「XT500」は、1976年に誕生したビッグオフロードマシン。これを一人の情熱的なフランス人、ジャン・クロード・オリヴィエがアフリカ大陸の砂漠に持ち込み、“アドベンチャー”というカテゴリーが生み出していった。オリヴィエは当時フランスのヤマハインポーター・ソノート社に勤務し、のちにヤマハモーターフランスの社長になった人物だ。
彼や、のちにパリ・ダカールラリー(通称パリダカ)を主催するティエリー・サビーヌたちは1977年にアビジャン・ニースレースに参戦し、1979年の第1回パリダカでXT500が上位を独占する礎をつくっていく。
シリル・ヌヴーが第1回、第2回を連覇したあと、FIA・FIM公認レースとなった1981年からはBMW/GSの水平対向2気筒エンジンが覇権を握る。これに追いすがるべく生まれたのが、1983年の「XT600 Ténéré」だった。
2本の吸気ポートそれぞれにキャブレターを設置するヤマハ デュオインテークシステム(YDIS)を採用した空冷エンジンに容量30Lのビッグタンク、ヤマハオフロード車初のフロントディスクブレーキ、ベルクランク型のモノクロスサスペンション、アルミ製スイングアームなどを装備し、多くのライダーがパリダカに出場した。このXT600 Ténéréは10年にわたり欧州で6万1000台を販売、フランスだけでも2万台を超えたという。
ヤマハは1989年に次世代モデルとして水冷2気筒エンジン搭載の「XTZ750 Super Ténéré」を発売し、これをベースにパリダカへのファクトリー参戦が加速。ワークスマシンの「YZE750T Super Ténéré」は1991年に表彰台を独占し、ヤマハにとって10年ぶりのパリダカ制覇を実現した。
同じく1991年に水冷5バルブ660ccエンジン搭載の「XTZ660 Ténéré」が市販され、1994年にはデュアルヘッドライトを採用。これは1996年モデルまで販売された。
1994年にパリダカが市販モデルだけの出場に限定されたことから、ヤマハモーターフランスはパリダカ用に市販モデルを製作。2気筒の「XTZ850R」と単気筒「XT660R」をそれぞれ15台、合計30台を販売した。
このように第1期テネレとも言える1990年代までのテネレは終わりを告げたが、2008年に単気筒モデル「XT660Z Ténéré」、2010年に2気筒モデル「XT1200Z Super Ténéré」が発売されて復活を遂げることに。現行「Ténéré700」は2019年より欧州で発売、日本仕様は2020年モデルとして登場している。
そんな歴史を持つ「Ténéré」の誕生40周年に当たる今年、欧州全土で記念展示ツアーが開催されることになった。このツアーでは、新しいテネレ700ワールドラリーの一般公開も行われるという。1993年にペテランセルを優勝に導いたYZE850にインスパイアされたファクトリーレーシングカラーが印象的だ。
今後のツアーの予定
MaxlRIDEモトフェスティバル | 8月25~27日 | ドイツ
アルプス アバンチュール モトフェスティバル | 9月8日~10日 | フランス
テネレ スピリット | 9月24日 | イタリア
テネレ スピリット | 8月5日 | ラトビア
過去のイベントは以下
テネレ トラベル トロフィー | 6月10日~17日 | フランス-アンドラ-スペイン
アドベンチャーバイクライダーフェスティバル | 6月23~25日 | イギリス
テネレ スピリット アギラール デ カンプー | 6月31日~7月1日 | スペイン
マシンのディテールほか
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