
1980年代に巻き起こったバイクブーム、およびその源流となった2ストレーサーレプリカブーム。その起爆剤となったモデルこそ、ヤマハRZ250/350である。4ストローク全盛期に、1960年代までは自らの本分としていた2ストをあえて再興させたヤマハ。その経緯を振り返ろう。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
ヤマハRZ250:4スト化の時代に降臨した”2ストレプリカ”
1970年代、国内における250ccクラスの人気は低迷していた。
車検がないためコスト的に有利だが、当時は車体設計が400ccと共通化されるのが普通で、多くのモデルに350ccや400ccの上級モデルが存在していた。
そのため、どうしても格下グレードの印象が拭えず、250ccは魅力に乏しかったのだ。
さらに2ストロークにも逆風が吹いていた。1970年に米国で制定されたマスキー法に倣い、日本でも1978年に排ガス規制が施行。
2ストは軽量で加速性能に優れるものの、クリーン性能では明らかに不利だった。
そんな時代背景だった1979年の東京モーターショーに、RZ250は鮮烈デビューを果たした。
【1980 YAMAHA RZ250】■水冷2スト並列2気筒 ピストンリードバルブ 247cc 35ps/8500rpm 3.0kg-m/8000rpm ■139kg ■タイヤサイズF=3.00-18 R=3.50-18 ●発売当時価格:35万4000円
強烈なパワーは「事故率ナンバー1」「初心者には無理」
ロードレーサーTZ250をベースにした2スト水冷パラツインに、量産ロードモデル初のモノサスペンションを搭載。常識外れのハイスペックに発売当初から注文が殺到した。
リッター換算140psのハイパワーと、俊敏なシャーシが生み出す速さは強烈かつピーキーで、「事故率ナンバー1」「初心者には無理」と言われながら、ヒット街道を驀進。
翌1981年には+10psとフロントダブルディスクを与えたRZ350を追加。痛快な加速でナナハンキラーの異名を誇り、大型ライダーがあえて乗り換える例もあった。
RZ以降、各社から2スト250が投入され、250ブームが到来。また、レーサー譲りの技術をダイレクトに反映させる手法は、後のレーサーレプリカの先駆けとなった。
RZはバイク史を塗り替えた、記念碑的なモデルだったのだ。
RZ250透過図。
市販レーサーTZ250。RZはこちらをベースに開発された。当時としては驚きの35psを発生し、軽量化も追求した。
雑誌の広告には、当時WGP500の帝王だった「キング」ケニー・ロバーツが登場。
【1981 YAMAHA RZ350】■水冷2スト並列2気筒 ピストンリードバルブ 347cc 45ps/8500rpm 3.8kg-m/8000rpm ■143kg ■タイヤサイズF=3.00-18 R=3.50-18 ●発売当時価格:38万9000円
ヤマハRZ250の系譜
1980 ヤマハRZ250
【1980 YAMAHA RZ250】初期型は赤ライン×パールホワイト、黒の2色。前はシングルディスク、リヤはドラムとなる。初代は日の丸カラーが目印。1983でRZ-Rにフルチェンジし、以降も完成度を高めた。
1982 ヤマハRZ250
【1982 YAMAHA RZ250】カラーのみ変更。350と共通のライン入りソリッド白と黒を投入した。型式名は変わらず。
1983 ヤマハRZ250R
【1983 YAMAHA RZ250R】ビキニカウルのRに進化。43psとなり、フレームも変更。排気デバイスYPVSも備えた。
1984 ヤマハRZ250RR
【1984 YAMAHA RZ250RR】ハーフカウルとセパレートハンドル、別体サイレンサーでレプリカムードを高めた追加モデル。
1984 ヤマハRZ250R
【1984 YAMAHA RZ250R】RRのカウルレス仕様。丸目とセパハンが特徴だ。前期型のみ赤シート、翌年に色変更。
1986 ヤマハRZ250R
【1986 YAMAHA RZ250R】TZR250の登場後もモデルチェンジ。フレームやホイール、外装の変更で136kgに減量。
1988 ヤマハRZ250R
【1988 YAMAHA RZ250R】最終型。前後17インチとデジタル点火方式で熟成。アルミ鍛造ハンドルも採用した。
RZ350ならではの仕様もあった
1982 ヤマハRZ350 YSP限定モデル
【1982 YAMAHA RZ350 LIMITED VERSION】YSP販売店限定モデルとして、海外版の真紅の外装を採用。同様のカラーで250版も販売された。
1982 ヤマハRD350
【1982 YAMAHA RD350】登場2年目に、当時WGPでヤマハのスポンサーだった煙草の「ゴロワーズ」カラー仕様を投入。深い青が特徴。
1984 ヤマハRZ350RR
【1984 YAMAHA RZ350RR】350にのみフルカウル仕様を追加。海外では継続生産されたが、国内版の350はこれが最終型となる。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載]青春名車オールスターズ)
公道モデルにも持ち込まれた「ホンダとヤマハの争い」 1980年代中頃、ホンダNS250Rはヒットしたが、ヤマハTZRの人気は爆発的で、SPレースがTZRのワンメイク状態になるほどだった。 しかしホンダ[…]
2ストエンジンの新時代を切り開いた名車 1980年代中頃、スズキのガンマ、ホンダのNSと、高性能レプリカが矢継ぎ早に出揃い、大ヒットを記録していた。 この潮流をみたヤマハはRZ250Rにカウルを装着し[…]
「その時、スペンサーになれた気がした」 MVX250Fの上位モデルとして400版の発売が検討されていたが、250の販売不振を受け計画はストップ。この心臓部を受け継ぎ、NS250Rの技術を融合したモデル[…]
“2スト最強”と呼ばれた栄光のレプリカ ヤマハのRZV500Rと並び立つ不世出の500レプリカが、このRG500ガンマである。 1976〜1982年までスズキはWGP500でメーカータイトルを7年連続[…]
ケニー・ロバーツが駆るYZR500のフルレプリカ 400レプリカが隆盛を極める1984年、ヤマハから究極のレーサーレプリカが送り込まれた。当時最高峰のWGP500王者に輝いたYZR500のフルレプリカ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
2003年モデル概要:MotoGP直系の先進技術を取り入れたSSとして登場 2003年当時、最先端のMotoGPマシンだった「RC211V」で培った先進技術とスタイリングを随所に取り入れ開発された。初[…]
レジャーバイク人気の主役となった初代ダックスホンダ(1969年~) 国産レジャーバイクの元祖と言えば、ホンダが多摩テックで子供向け遊技用に用意したモンキーバイクZ100、それに続く市販車のモンキーZ5[…]
実は”ホンダエンジン”時代からの愛車だった マンセルがF1のパドックで乗っていたのは、ホンダのダックス70(CT70)でした。1988年モデルとも、1987モデルとも言われていますが、いずれにしろ当時[…]
ライトウェイト&ハイパワーな400が装いを新たにした 2022年モデルの発売は、2021年9月10日(一部カラーは10月15日)。並列2気筒エンジンを採用し、ニンジャ250とほぼ共通の167kgの軽量[…]
カワサキW800(2022) 試乗レビュー カワサキW800(2022) 概要 ■全長2190 全高1075 軸距1465 シート高790(各mm) 車重226kg ■水冷4スト2気筒SOHC4バルブ[…]
人気記事ランキング(全体)
【ご注意】本記事は、エンジンオイルの過剰注入がエンジンに与える影響を確認するための実験であり、一般使用車両での実施や再現を推奨するものではありませんのでご了承ください。 オイルの規定量は守らなくちゃイ[…]
インフレの今、価格破壊王のワークマンがまたやってくれた! 春から初夏にかけ、ツーリングのシーズンがやってきた。爽やかな空気を全身に浴びてのライディングは最高だ。しかし…この期間はジメジメ・シトシトの梅[…]
その姿、まるでGB400TT MkIIの正統後継者! 欧州ホンダは、2025年も例年通りカスタムコンテスを開催。これは正規ディーラーがホンダ車をベースにカスタムを手がけ、オンライン投票で最優秀マシンを[…]
圧倒的に軽いCB1000Fコンセプト。足着き性も良好だ CB1000FコンセプトをCB1300スーパーフォアと比較すると、前者の方がコンパクトで引き起こしも圧倒的にラク。ただ跨ってみると意外と大柄な印[…]
フェイスリフトと前後サスペンションの再設定 ホンダが「XL750トランザルプ」の国内2025年モデルを発売する。CB750ホーネットに似た2眼ヘッドライトを新たに採用し、センターダクトを設けたウインド[…]
最新の投稿記事(全体)
1位:CB400FOURは前期型→後期I型/II型でなにがちがう? 1974年に初登場したホンダCB400フォアは、初代とそれ以降でなにが違うのかを紹介した。ご存じ初代モデルは全車408ccのために発[…]
“Neo Retro”ロードスポーツ:2016年モデル 発売は2016年4月15日。現代的ストリートファイターのMT-09をベースに、アルミタンクカバーなど金属の質感を活かした専用外装などでネオレトロ[…]
2003年モデル概要:MotoGP直系の先進技術を取り入れたSSとして登場 2003年当時、最先端のMotoGPマシンだった「RC211V」で培った先進技術とスタイリングを随所に取り入れ開発された。初[…]
歴史的な価値のあるパーツに使われることが多いマグリコート ホイールやエンジンカバー、といっても一般的な市販モデルではなく、アフターマーケットパーツやレース用のホイールやカバー類に使われることの多い、マ[…]
ネオクラシックながら”新しさ”で対抗 ヘリテージやネオクラシックと呼ばれるカテゴリーで、登場以来絶対的な人気を誇るカワサキのZ900RSシリーズ。現代スポーツネイキッドをベースに、名車Z1を絶妙にアレ[…]
- 1
- 2