カワサキは欧州で、125ccクラスに相当する新型電動バイク「ニンジャ e-1」および「Z e-1」を発表した。専用バッテリー2個を通常の燃料タンク位置に収納でき、充電方法はバッテリーを着脱してもしなくてもできる3通り。走行モードはロード/エコを備え、歩行モード、加速と最高速を強化する「e-boost(イー ブースト)」などを採用している。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
スタートダッシュは400ccクラス並み?! 車重はわずか140kg/135kg
国産初のモーターサイクル型電動バイクをカワサキが正式発表した! まだ欧州での出来事に過ぎないと思うかもしれないが、続いて日本にも導入されることは確定的。フルカウルスポーツタイプの「Ninja e-1」とネイキッドスポーツの「Z e-1」は、日本でいう原付二種クラスにあたるが、400cc並みのスタートダッシュを披露するとの情報も。英国では10月に発売するという。
欧州においてもニンジャ e-1およびZ e-1は125ccクラスの扱いとなり、定格出力は6.8ps/2800rpm、最高出力は12ps/2600-4000rpmだが、最大トルクは400ccクラスと同等の4.1kg-mを0rpmから1600rpmまで発生する。パワーモードはECO(エコ)とROAD(ロード)の2種類が用意され、エコモードの最高速は64km/h(Z e-1は62km/h)、ロードモードでは88km/h(Z e-1は85km/h)だ。
ここで注目したいのは、以前の記事でもお伝えした「e-boost」というエクストラパワーを提供する機能。なんと加速と最高速の両方を向上し、最高速はエコ=75km/h(Z e-1は72km/h)、ロード=99km/h(速度リミッターいっぱい)に達するという。加速力については具体的な数値こそないものの、400ccクラスと同等の加速を得られるとの噂はこのeブーストあってのものだろう。
なお、右ハンドルにあるスイッチで起動(走行中でも停止中でも可能)するeブーストは、スロットルを一定以上に開けると作動し、15秒のカウントダウンタイマーが切れると機能が解除される。一定時間が経過したのちに再び有効にすることができる。
回生システムを持つ動力モーターは、通常のモーターサイクルでいうトランスミッションあたりの位置にあり、プライマリーギヤを介したあとエンジン車と同様にドライブチェーンで後輪を駆動。クラッチ機構はなく、モーターを生かした歩行モードを備える。これはスロットル正回転では“歩く速度で”前に進み、全閉からさらに前に回すと後ろに進んでくれるという便利な機能で、停止するとわずかに回転抵抗を発生するモーターの違和感を解消する意味もありそうだ。車重は軽いが、狭い場所での駐車などで役立つに違いない。
システム用には通常の12Vバッテリーを搭載し、動力用には着脱可能な専用バッテリーを2個パラレルで搭載するが、エコモードでは1個ずつ使用することも可能。これによってバッテリー上がりの不安も解消できそうだ。バッテリー自体は通常でいう燃料タンクの位置にあり、タンクカバーを開けることで取り出すことができる。走行コストはガソリン車よりも安く、またモーターが発生する熱もガソリン車より小さいという。
動力用バッテリーはリチウムイオンで1個あたりの重量11.5kg。電圧は50.4Vで容量は各30Ah、20→100%の充電時間は1個あたり3時間、また20→85%の充電は1.6時間(条件による)だ。充電方法は、(1)バッテリーを搭載したまま、または取り外して (2)専用ドック使用、(3)ドック不使用の3通り。バッテリー搭載の場合はタンデムシートを開けたところにアダプターの差し口がある。ちなみに、バッテリー収納スペースの上部は容量5Lの小物入れとしても機能する。
車体はニンジャ400/Z400ベースか
フレーム、サスペンション、ブレーキは400ccクラスをベースにしたとしており、48psを発揮するニンジャ400/Z400とほぼ同等のディメンションに27kg~31kgも軽い車重が与えられた。モーターはエンジンに比べてジャイロモーメントが小さいことが予想されるため、ハンドリングはかなり機敏なものになりそうだ。
灯火類はニンジャe-1、Z e-1いずれもフルLEDを採用。メーターは4.3インチTFTカラーディスプレイで、カワサキオリジナルの「Rideology The APP Motorcycle」とBluetoothで接続可能だ。メーターには速度計、時計、オド/ツイントリップ、航続レンジ、パワーモード、e-boost、シフトポジションインジケーター(N、D、F、R)などを表示できる。
※N=ニュートラル相当、D=Drive Ready(走行可能)、F=歩行モード前進、R=歩行モード後進
このほか、アクセサリーとしてUSB電源ソケット、ハイシート(+30mm)、シングルシートカウルなどが設定される。車両/アクセサリー価格は未発表だ。
なお、カワサキモータースジャパンは2車の国内導入に向けて準備を進めていると明らかにした。価格やスペック等の詳細は後日、公式HPにて発表される。
KAWASAKI Ninja e-1[2024 EU model]
KAWASAKI Z e-1[2024 EU model]
Specifications
車名 | Ninja e-1 | Z e-1 |
全長×全幅×全高 | 1980×690×1105mm | 1980×730×1035mm |
軸距 | 1370mm | ← |
最低地上高 | 160mm | 170mm |
シート高 | 785mm | ← |
装備重量 | 140kg | 135kg |
モーター | 空冷 永久磁石同期モーター | ← |
定格出力 | 6.8ps/2800rpm | ← |
最高出力 | 12ps/2600-4000rpm | ← |
最大トルク | 4.1kg-m/0-1600rpm | ← |
変速機 | なし | ← |
バッテリー | リチウムイオン(30Ah)×2個/各11.5kg | ← |
WMTCモード電費 | 49Wh/km(クラス1) | ← |
航続距離 | 72km | ← |
キャスター/トレール | 24.4°/93mm | ← |
タイヤサイズ前 | 100/80-17 | ← |
タイヤサイズ後 | 130/70-17 | ← |
ブレーキ前 | φ290mmディスク+2ポットキャリパー | ← |
ブレーキ後 | φ220mmディスク+2ポットキャリパー | ← |
価格 | 未発表 | ← |
発売時期(英国) | 2023年10月 | ← |
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
”PREPARE FOR TAKE-OFF”って……オイ! 最初に言っておきたい。これは光栄にもバイク界の東●ポと呼ばれるヤングマシンが、妄想力を逞しく発揮した記事である。カワサキが直列6気筒ターボ搭[…]
"ゼロエミッション東京"実現に向け、非ガソリン化を推進 多くのライダーが知っての通り、東京都は'50年の世界のCO2排出量実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を目指し、'30年までに温室効[…]
惚れるぜカワサキ! ガソリンエンジンは作り続ける! エンジン好きには何とも嬉しいニュースだ。カワサキは電動車やハイブリッド、水素エンジンの投入展望など、カーボンニュートラルへのビジョンを明確に述べたう[…]
より操作に忠実な過給機付きエンジンを実現する! ホンダがアフリカツインに過給機を搭載?! そんなニュースが現実味を帯びてきたかもしれない。2020年の特許公開時には海外メディアを中心に話題となったが、[…]
車体姿勢の制御に不可欠な“忠実なレスポンス”を具現化する “ユーロ5”や“令和2年排出ガス規制”といった文言を見かける機会がずいぶん増えてきた。今後ますます厳しくなっている一方の環境規制と大型バイクら[…]
最新の関連記事(新型EV/電動バイク)
電動二輪パーソナルコミューター×2機種発表に加え、バッテリーシェアリングサービスも展開 ホンダはインドで、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック […]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
新エンジン、電動スポーツ、電動都市型バイク、全部やる! ホンダは新しい内燃機関と電動パワーユニットの両方で行く! そう高らかに宣言するかのような発表がミラノショー(EICMA 2024)で行われた。ひ[…]
123年以上の歴史で迎える大きな節目として電動バイクの新ブランドを構築 250~750ccのミドルクラスバイクで世界的に存在感を放っているロイヤルエンフィールドが、新しい電動バイクブランド「FLYIN[…]
タイトル争いを制したのはエンジン車の「RTL301RR」 11月3日、全日本トライアル選手権(JTR)の最終第8戦、City Trial Japan 2024 in OSAKA 大会が大阪市中央公会堂[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
“ヨシムラ”がまだ世間で知られていない1970年代初頭のお話 世界初となる二輪用の集合マフラーが登場したのは、1971年のアメリカAMAオンタリオでのレース。当時のバイク用マフラーは1気筒につき1本出[…]
復活の軽二輪レトロは足着き性抜群、エンジンは大部分が専用設計だ 現在の国内メーカー軽二輪クラスでは唯一となるネオクラシック/レトロスタイルのモデルが待望の登場を果たした。 カワサキが以前ラインナップし[…]
モデルチェンジしたKLX230Sに加え、シェルパの名を復活させたブランニューモデルが登場 カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やS[…]
欧州で登場していたメタリックディアブロブラック×キャンディライムグリーンが国内にも! カワサキモータースジャパンが2025年モデルの「Z900RS」を追加発表した。すでに2024年9月1日に2025年[…]
1位:2024秋発表のヤマハ新型「YZF-R9」予想CG 2024年10月に正式発表となったヤマハのスーパースポーツ・YZF-R9。2024年2月時点で掴めていた情報をお伝えした。これまでのYZF-R[…]