現在開催中のミラノショー(EICMA)にて、EVやハイブリッド車、eフューエルなどでカーボンニュートラルに対応しつつ、なんと約30機種ものガソリンエンジン車の投入計画を明かしたカワサキ。さらに、現在開発を進めている水素エンジン車のイメージイラストまで公開したぞ!
●文:ヤングマシン編集部(マツ)
水素燃料を使うと、超ハイレスポンスエンジンが出来上がる!?
カーボンニュートラルに挑みつつも、我々ライダーが大好きな内燃機関も新規開発を進めるとEICMAで発表したカワサキ。4輪のトヨタを筆頭として、オールジャパンで研究開発を進めているプロジェクトではあるものの、2輪用としては現在唯一の水素エンジンを公開しているメーカーでもある。
今回のEICMAでは水素エンジンに関しても、伊藤浩社長自らが「インフラ次第ではあるが、2030年代初頭に水素エンジン2輪車の実用化を目指す」と発表、実現に向けてのスケジュール感を提示したうえで、イメージイラストではあるものの車両の全体像も公開した。このイラスト、ベース車両はニンジャH2 SXをイメージしているのは一目瞭然だが、注目は車両後部のパニアケース。ここに筒状の水素タンクを片側に5本、合計で10本搭載するというアイデアをお披露目しているのだ。
水素エンジンの実用化で障壁となるのは、インフラを除けば航続距離の短さだ。トヨタが研究中のレーシングカー・水素カローラは、180Lの水素タンクを積んですら鈴鹿サーキット10周程度で“給水素”が必要になる。当然、バイクの燃料タンク程度では絶対的に容量不足となるため、このようなアイデアも検討されているのだろう。
水素なら、2サイクルの復活もあり得る!?
カーボンニュートラルを目指すモビリティ界では、基本的に水しか排出しない水素エンジンは“内燃機関の最後の砦”とでも言うべき存在。しかも技術者に話を聞くと、ガソリンより燃焼速度が8倍も速い水素燃料には、ガソリンでは実現不可能なツキの良さ、圧倒的なハイレスポンスといった面白さまで存在するのだという。それは4輪なら、普通の乗用車がスポーツカーに変身してしまうほどの差だそうで、2輪であればライダーの感性に訴える“究極の意のまま感”を実現できるポテンシャルを秘めているのだ。
もちろん、燃焼の速さはノッキングなどの異常燃焼を招きやすいという問題もある。燃焼のコントロールが難しく、最もパワーの出る混合比だと異常燃焼が起きやすくなるため、ややリーン(=薄め)としてマージンを取るのだが、ここでも“カワサキに風が吹いてるな!”と思わされるのが、同社が過給エンジンを既に持っていること。マージンを取ることでパワーが落ちても、ニンジャH2のスーパーチャージドエンジンなら過給で補うことができるというわけ。水素もバイクもどっちもH2だし…と、名前合わせで選んだわけでは決してなく、水素と過給エンジンはそもそも非常に相性がいいのだ。
とある技術者は「ガソリンエンジンは開発し尽くされていて、ドラスティックな進化はもう難しい。性能だって行き着くところまで行っています。しかし水素エンジンはまだまだ謎だらけ。大きな進化の余地が眠っているし、ひょっとしたらロータリーや2サイクルが最適解となり得るかもしれない。内燃機関最後のフロンティアなんです」と語ってくれたが、水素エンジンには、ガソリンエンジンにはない“ワクワク感”が潜んでいることは間違いない。実用化は10年以上先になりそうだが、内燃機関の未来に繋ぐべく開発を進めている“ニッポン水素連合”に敬意を払いつつ、その推移を注視していきたい。
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