
環境性能が厳しく言われるようになって久しく、「ユーロ5」という文言もかなり一般化してきた。バイクの排出ガス規制が本格化した’98年から、厳しさ増す現代に至る規制の変化を振り返ってみよう。
●文:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●タイトル写真:山内潤也
’22年11月からユーロ5基準規制が施行。1台でも多く生き残ってくれ!
CB400SF/SBなどロングセラーの生産終了が相次いでいる。これは、’22年11月1日以降生産の全バイクに適用される「平成32年(令和2年)排ガス規制」(欧州のユーロ5と同等)が原因。50ccを除き、未対応のバイクは、10月末までに規制をクリアしないと日本で販売できなくなる。
特にエンジン設計が古い機種は、全面的にリニューアルしないと規制クリアが困難。人気や採算性などの関係で、そのまま殿堂入り=終売となってしまう可能性があるのだ。期限のリミットまでわずか2か月。何とか生き残って欲しい!
ちなみに規制に適合しているか否かは、スペック表や車検証に記載される「型式」で判別が可能だ。
排出ガスを低減するにはコストや労力がかかる!
大気汚染や地球温暖化など、環境問題に対応して排出ガス規制が強化されつつあるのは、あまりバイクに詳しくない方でも感覚的に理解しているだろう。
四輪車ではかなり以前から排出ガス規制が厳しくなっていたが、バイクに関しては’99年の平成11年排出ガス規制が大きな潮目。細かな数値はともかく、アフターパーツのマフラーが公的機関(JMCA等)が発行する証明書がないと合法的に交換できなくなった記憶がある方も多いだろう。
ついで平成18年排出ガス規制(’06年)では、従来と比較して炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)を75~85%、窒素酸化物(NOx)を50%削減することになり、この時点で2ストロークの原一スクーターや、4ストロークもキャブレター車はほとんどが姿を消した。この頃までは日本と欧州の排出ガス規制で異なる部分も少なくなかったが、’07年にスタートした欧州規制のユーロ3から、日本の規制も準拠するようになった。
平成24年排出ガス規制からは、試験方法にWMTCモードを採用。燃費の算出にも用いられ、従来の定値燃費よりずっと実燃費に近いため、これはこれで便利になったのだが…。
そして平成28年排出ガス規制はユーロ4にほぼ準じ、新規制の令和2年排出ガス規制はユーロ5とイコールと言って差し支えないグローバル化が進んだ。HC/CO/NOxの規制値も厳しさを増し、排出ガスの低減や診断に必要な部品やシステムの劣化などを監視/記録する車載式故障診断システム(ユーロ4はOBD‐I、ユーロ5では高度化した世界共通規格のOBD‐II)の装備が義務付けられた。他にもユーロ4からクランクケースのエミッション対策や燃料蒸発ガス規制(キャニスターの装備)などが加わった。
これらはバイクを構成する部品の増加、ECUやカプラー類の改良が必要になるためコストがかかる。また、規制をクリアしつつ性能も維持しないと商品性が低下するため、設計が古いと対応が難しい。人気のロングセラーモデルにも関わらず、継続せずに生産終了となる車種があるのはこれが理由だ。
【今回の新規制はユーロ5を参考につくられた】この表は平成28年排出ガス規制(≒ユーロ4)が適応されていた時期に、次期のユーロ5との相違点を挙げて令和2年(平成32年)排出ガス規制の内容を環境省が検討した時のモノだ。 [写真タップで拡大]
どうなるユーロ6!? より規制値が厳しくなり、200ps超マシンに影響が!?
欧州で実施が予定されている次期規制「ユーロ6」の詳細は未定。しかし、大まかな予想はできる。バイクの排ガス規制は、4輪の規制に基づいており、欧州で’25年からクルマに施行予定の「ユーロ7」と同等となるハズだ。となれば次期二輪規制のユーロ6は、有害物質をさらに15%減とし、新たに排出粒子数(PN)やアンモニアなどの規制が課される見込み。200ps超のSS等はパワーダウンが不可避だろう。英国のコンサルタント会社「RICARO」では、実施時期を「2030年以前」と予測。これまでと同様、1〜2年遅れて日本でも同様の規制が適用されるだろう。
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