●監修:青木宣篤 ●写真:Yamaha MotoGP.com
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何を狙っての契約か?:クアルタラロ
ヤマハがファビオ・クアルタラロとの契約更新を発表したのは、去る6月2日。’23〜’24年の2年間ということだが、「久々に通常通りの契約スタイルに戻ったな」と妙な安心感があった。「いい時季だな」という意味で。
過去を遡ると、だいたいシーズン半ばのオランダGPあたりで契約について表沙汰になることが多かった。しかし昨今のモトGPライダーの契約は、下手するとシーズン開幕前だったりと、さすがにちょっと早すぎだったのった。
開幕して、少なくとも6〜7戦はこなしてみないと、チームはライダーを評価できないだろうし、ライダーもマシンを評価できないだろう。お互いある程度一緒に戦ったところで、初めて将来について話し合える素材が集まるはずだ。
クアルタラロはかなり好条件で契約したと思う。今のヤマハで勝てるのは彼だけ。ヤマハとしては何としてでも引き留めたかったはずで、その思いは契約金という形で示されたに違いない。
圧倒的に有利な立場での契約。ライダーなら一度はしてみたいものだ…。
クアルタラロのひとり勝ちになると、すぐに「ヤマハのマシンはクアルタラロスペシャルで作り込まれている」という話になるが、ワタシはあまりそうは思わない。やはりクアルタラロのスキルが一歩抜け出ているのだろう。
サテライトチームとはいえ同じヤマハながら、今季まったく目立たないベテラン格、アンドレア・ドヴィツィオーゾがこんなことを言っていた。「今のミシュランタイヤは、一度ホイールスピンし始めると止まらない。それをコントロールするのは大変なんだ」
これ、バレンティーノ・ロッシも言い続けていたこと。つまりヤマハがずっと抱えている課題なのだが、クアルタラロはしっかりと乗りこなせている。ということは、やはり乗り方の問題ではないかと思われるのだ。
先日出向いた全日本ロードの現場で、こんな話を聞いた。
「最近のレーシングマシンはみんな4ストFIだけど、エンジンがツイてこない時、2ストキャブレター育ちの我々はついスロットルコントロールでどうにかしようと四苦八苦しちゃうんだよね。
でもFI育ちの若手は、『早めに開けて待ってりゃいいじゃん』と、我々よりはるかに早いタイミングでスロットルをパチッと開けて、ホントに待ってるんだよ。
それって、2ストキャブ育ちの我々には、怖くてできないこと。急にパワーが出てくるかもしれないから。でも4ストFI育ちの若手は、『怖いって、何が?』てなものでさ。昔と今とじゃ、走り方が全然違うんだよ」
ドヴィツィオーゾとクアルタラロの間には、13歳の年齢差がある。昭和後期と平成中期。そりゃあ乗り方も違うだろう。昔ながらの経験、すなわち「レガシーエクスペリエンス」が邪魔をしているところは、少なからずあるだろうとワタシは睨んでいる。
その根拠のひとつは、クアルタラロだけがなぜ速いのか、本当のところを理解できていないことだ。自分が育ってきた環境や経験してきたことが、今の自分の礎になっている。それはつまり、過去から逃れるのが非常に難しい、ということでもある。
’22年、KTMのサテライトチームには、モト2からステップアップしてきた若手がふたりいる。いずれも実力派だが、予想以上に苦戦している。彼らはモト3でこそKTMを走らせているが、モト3とモトGPは遠い。より近いモト2で鉄フレームの経験をしていないから、戸惑っているのだ。
モト2でKTM経験のあるファクトリーチームのふたりは、言わば鉄フレームの生え抜き。最初から違和感はなかったはずだ。
ファクトリーとサテライトという違いやキャリアの違いよりも大きな、“生まれ”の違い。そう考えると、ヤマハ継続を選んだクアルタラロの選択は、契約金アップ以上の価値がありそうだ。
KTMの生え抜きか否か?
ビンダーはモト2で3年、オリベイラは2年のKTM鉄フレーム経験者。一方のフェルナンデスとガードナーは、’19年をもってKTMがモト2を撤退したあおりで未経験。モト2とモトGPが接近しているだけに、この差が大きく影響している。
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