
元MotoGPライダーの青木宣篤さんがお届けするマニアックなレース記事が上毛グランプリ新聞。1997年にGP500でルーキーイヤーながらランキング3位に入ったほか、プロトンKRやスズキでモトGPマシンの開発ライダーとして長年にわたって知見を蓄えてきたのがノブ青木こと青木宣篤さんだ。WEBヤングマシンで監修を務める「上毛GP新聞」。第39回は、ついに開幕した2026年のMotoGP・開幕戦タイGPを取材すべく、現地ブリラムサーキットへ飛ぶ!
●監修:青木宣篤 ●まとめ:高橋剛 ●写真:Michelin, 青木宣篤
アコスタの初勝利、ベゼッキの独走
行ってきました、2026MotoGP開幕戦タイGP! タイは昨年半ばからカンボジアとの間で国境紛争があり、ブリラムサーキットは市民の主要避難所として使用されていた。だが実際に行ってみるとそういった様子は跡形もなく、今年も3日間で22万人のお客さんが入ったとのことだ。
実はブリラムを訪れるのは今回が初めて……どころか、タイに行くこと自体が初。想像した以上に過ごしやすい国で、ちょっと驚いた。アメリカの文化と日本の産業が融合しているような雰囲気で、居心地がよかった。
コースレイアウトは、凝ったものが多い近年としては珍しく、単調だ。それだけにタイムの詰め所がなく、逆に難しいだろうな、と思う。開業は’14年と比較的新しく、そこかしこにアジアンクオリティが見え隠れするものの、設備も想像以上に整っていた。
スプリントではマルク・マルケスが強引な追い抜きを取られてペナルティを課され、競り合っていたペドロ・アコスタが最高峰クラス初勝利を収めた。
そして結果はご存じの通り、2月28日(土)のスプリントレースはペドロ・アコスタ(Red Bull KTM Factory Racing)が初優勝を挙げ、3月1日(日)の決勝レースはマルコ・ベゼッキ(Aprilia Racing)が優勝した。
ベゼッキはレースウィークを通して頭ひとつ抜けた安定感を見せていたが、土曜日になると朝転び、予選で転び、スプリントレースでも転び……と、1日で3転倒。さすがに凹むかと思いきや、日曜のレースはぶっちぎった。
アプリリアもKTMも今のところは非常によい仕上がりのようだ。アプリリアに乗る小椋藍くん(Trackhouse MotoGP Team)もスプリントレースが4位で決勝レースは5位。主に最終コーナーで走りを見ていたが、同じタイミングで同じ量だけスロットルを開ける、ということを毎周変わらず繰り返す、という職人的な走りが光っていた。
「毎周同じ走り」と言うのは簡単だが、実行するのは極めて難しい。しかも藍くんの場合はフリー走行から決勝レースまで一貫している。本人に聞くと、「まさにそういう走りをめざしています」とのことだったが、この並はずれた安定感は間違いなくレースの強さに結びついている。
小椋藍のマシンはガルフカラーに。
本人もかなり悔しがっていたが、スプリントレースはスタートのミスが大きく影響してしまった。たぶん彼にとっては相性のいいコースで表彰台も狙えただけに、本当に惜しい。金曜、土曜と各ライダーのスタート練習をチェックしたが、みんな動き出してしばらくしてから盛大にホイールスピンしていた。特にハデだったのはファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP Team)。モーレツに白煙を上げていたので、エンジンブローしたかと思ったほどだ(笑)。
それぐらい難しい路面コンディションだということを分かっていたからこそ、慎重になりすぎてしまったようだ。クラッチミートに最大限の注意を払ったものの、ナーバスになりすぎてのミス……。惜しい……。
タイは暑かった。写真はクアルタラロ。
決勝レースもスタート直後の1コーナーのポジション取りがうまく行かず、出遅れてしまった。決勝に関しては不可抗力だから致し方ない。全体的には好調と言えそうだから、昨シーズン以上の活躍に期待!
ところで、今回のタイGPでは“教え子”のひとりである三谷然(Honda Team Asia)がMoto3フル参戦デビューを果たした。決勝レースは完走24台中22位。「頑張れば頑張るほどタイムが出ないんです……」と、普段は明るい然もさすがに落ち込んでいた。チームメイトのベダ・プラタマ(Honda Team Asia)が5位だったから、なおさらだったようだ。
しかし彼はコツコツと積み上げていくタイプ。青山博一監督は「僕に似ている」と苦笑いしていた。「チームメイトのダニ・ペドロサはすぐにできるタイプだった」と。確かにペドロサは瞬く間に中間排気量のチャンピオンを獲得したが、博一くんだって追随して’09年にはチャンピオンの座に就いている。直近のライバルであるチームメイトが高いポジションにいるのは、とてもいいことなのだ。この刺激をバネに、いっそう頑張ってくれるだろう。
ほろ苦いフル参戦デビューになったけど、またグランプリのスターティンググリッドに連れてきてくれてありがとな、然!
三谷然(Honda Team Asia)と一緒にスターティンググリッドへ。
決勝ではリヤホイール破損によりリタイアを喫したマルク・マルケス。詳細は次回の上毛GP新聞でお伝えします!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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