’22年4月19日、電動キックボードに関する改正道路交通法が衆議院本会議で可決したことについて、各地の会議体などで委員を務めているモビリティジャーナリストの楠田悦子氏に、二輪業界の外から広い視点で話を聞いた。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
- 1 法律を変えられた日本人のマインドは歓迎したい
- 2 あなたにおすすめの関連記事
- 3 二輪車利用環境改善部会に関連する記事
- 4 [高校生のバイク問題] 静岡県飛龍高校にOBらがカブを寄贈〈背景には整備士資格検定の改正〉
- 5 [バイク駐車場問題] アキッパが調査結果を報告〈8割以上が駐車場不足を実感〉
- 6 [バイク駐車場問題] 駅近の駐輪/駐車場事情:小田急電鉄編〈高架下や法面脇に駐車場を設置〉
- 7 [高校生のバイク問題] 埼玉県は“特定原付”の周知/啓発に自転車講習会の場を活用
- 8 [高校生のバイク問題] 三ない運動を廃止し、交通安全講習会を始めて6年。埼玉県の目的と思いとは?
- 9 [バイク駐車場問題] 北海道ツーリングの拠点・札幌の、雪国ならではの課題と対応
- 10 [高校生のバイク通学] スクールバス廃止などの環境悪化に、ふくらむ電動原付への期待
- 11 [バイク駐車場問題] 国交省が条例等を見直し? “駐車場政策のあり方検討会”で議論される施策の近未来
- 12 最新の記事
法律を変えられた日本人のマインドは歓迎したい
田中(筆者):道交法改正についてお考えを。
楠田:新しい移動手段が生まれることは日本では最近なかった。10年ぐらい前に超小型モビリティというのがあって今も検討しているけど、新しいものは普及しないなと少し冷めていたんですよ。そういうこともあって、はじめは電動キックボードについても懐疑的でした。既存の移動手段をしっかり使ったほうが日本っぽいんじゃないかと。とは言え、新しいものが生まれて法律を変えられるようになった日本の人たちのマインドは歓迎したいと思います。
田中:モビリティの中での電動キックボードの位置付けとは?
楠田:いま少子高齢化で学校区が大きく変わっていて、住み続けられない地域も増えています。子育て世代も出て行ってしまうので移動手段を見直すことが大事です。その際の選択肢に、自転車やバイクが考えられます。田舎だと自転車でなら”ママチャリ”が多いけど、もっと距離が走れて安全な乗り物があるかもしれない。
それがクロスバイク/電動アシスト自転車/Eバイクですが、そこに、ペダルがなくなったバイク=自動二輪という世界があるかもという発想を私はしていて、電動キックボードというものもあっていい。でも今の形じゃなくてもいい。今の電動キックボードは長距離に対応しておらず、近距離移動=数百m間の話なので。その中で、安全に走行するルール/技能/走行空間がとても大事になってきます。
田中:免許不要のモビリティに16歳から乗れるという点については?
楠田:少子高齢化で女性も働きに出る環境になるなら、子供がもっと安全に自分で移動できるものが、自転車以外のもっと違う形の乗り物であってもいいと思うんです。そうした自由な発想が生まれるきっかけが電動キックボードならば私はいいなと思っていて。欧州だと高校生でも寒いから4輪に乗っていいという国もあったりするので、もう少し状況に合わせて多様なモビリティが育って行く日本であってほしいと思います。
通学の状況を見ても、山間地で坂が多い所は、小学校から大学まで親が家族タクシーという形で送迎しています。自転車だとしんどすぎて通えないからですけど、それだったら本当に今あるものをちゃんと使って見直していくべきです。まずバイクに乗ったらいいと思うし、それが壊滅的に使われていないのはナンセンスです。昔の校則に引きずられる必要はないと感じています。
田中:地方や郊外で電動キックボードの果たす役割は? MaaSとか。
楠田:大都市でのシェア実証実験はあるけれど、地方では話に出ないレベルです。MaaSとしては自転車すら検討されてなくて、その要因には学校のルール/校則も大きいと思います。三ない運動もそうですが、1回できあがった校則や方針をどこでどう変えていくのか。学校側は責任を取りたくないので変えたくない。安全な方に安全な方に振っていく。バイクよりは電動キックボードの方が旬なので話には出やすいかもですが。
田中:若年層向けモビリティの検討は行なわれているのでしょうか?
楠田:高校生だけでなく、小中学生もですが、そこの世代の自分で移動する移動手段の検討ってされていないんですね。「危ない」と言って、すぐにスクールバスとかクルマの送迎を選択してしまう。田舎の親は、30分かけて迎えにいくことに、大変だけどさほど抵抗感はないんです。「電車やバスに乗って帰りなさい」と田舎の人は言わないです。「送っていってあげる」とか「迎えにいってあげる」というやり取りになります。
田中:文科省が目指すような自主自律の方針とは真逆ですね。
楠田:その発想を持って計画を立てれている教育現場とか市の計画とかはないですね。それよりも事故を起こさないようにする。乗り物を取り上げるほうが多いです。(次回に続く)
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
'22年4月19日、電動キックボードに関する改正道路交通法が衆議院本会議で可決した。このまま行けば、ほぼ自転車と同じ運用体制となりそうで、2年以内を目途に施行される見込みだ。 電動キックボードの道交法[…]
'22年3月19〜21日に開催された大阪モーターサイクルショーに、熊本県立矢部高等学校の二輪車競技部が出展した。「高校生がブース出展!?」と話題になったが、今回は、矢部高校について、また出展した理由や[…]
7割以上の生徒が好印象 前回に続いて、'21年に埼玉県で開催された「令和3年度高校生の自動二輪車等の交通安全講習」のアンケート結果について紹介する。埼玉県は'19年4月から三ない運動を撤廃し、バイク免[…]
利用者の声を忘れるな 4月1日から施行された改正民法により、「成人年齢は18歳」に引き下げられた。また、「電動キックボードは16歳以上免許不要」という道交法改正案も国会での審議を控えている。そんな状況[…]
再び三ない運動が議論に? まずは、2つのルール改訂について説明する。'22年の4月1日には、いま18歳/19歳の若者が新成人となる。'18年に選挙権年齢や憲法改正国民投票の年齢が「18歳以上」に引き下[…]
二輪車利用環境改善部会に関連する記事
最新の記事
- 1
- 2