
’22年3月19〜21日に開催された大阪モーターサイクルショーに、熊本県立矢部高等学校の二輪車競技部が出展した。「高校生がブース出展!?」と話題になったが、今回は、矢部高校について、また出展した理由や現地の模様についてお伝えする。
●文/まとめ:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
MCショーに出展した3つの理由とは?
矢部高校は、阿蘇南外輪山の南山麓に位置する山都町(やまとちょう)にある。全校生徒は130人ほどと小規模校ではあるが、普通科の他にも、林業科学科/食農科学科といった特色ある学科が設置されている。中でも林業科学科は全国的にも珍しく、地域みらい留学制度で越境入学してくる生徒も多い。
そして何より、矢部高校の特色と言えば、バイク通学の生徒が多いこと、そしてバイクの部活である二輪車競技部があることだ。バイク通学の歴史は古く、周囲をぐるっと山に囲まれているため、三ない運動下であっても通学手段には原付スクーターが使われてきた。なので、学校側も安全運転教育/講習には力を入れており、地域の教習所や警察との連携の中で”乗せて教える”教育体制を培ってきた。1年生の3学期には原付免許を受験/取得できるが、合格者への免許証交付が学校内で行なわれることも特異だろう。また「交通クラスマッチ」というバイクの安全運転技術を競う大会も開催されている。
二輪車競技部では、バイクの怖さを克服したい、運転が上手になりたいという生徒から、二輪車安全運転全国大会への出場を目指すという生徒まで、専用の練習場で日々トレーニングを積んでいる。また、学期に1回行われるバイク通学生徒への講習会では、部員が講師も務めている。「生徒が生徒に安全運転を教える」ということが長らく行なわれてきたのも、矢部高校の誇るべき伝統だ。
さて、矢部高校はなぜ出展したのだろうか? 理由は3つあった。
(1)安全運転の啓発
(2)二輪車競技部・矢部高校のPR
(3)山都町のPR
前述したように、矢部高校は安全運転教育に力を入れている。’21年に県内の高校生がバイク事故で死亡したこともあり、安全運転への取り組み/啓発の必要性を部員たちも感じているのだという。また、矢部高校の特色である二輪車競技部を広く知ってもらい、地域みらい留学での生徒受け入れにつなげたいという思いもある。さらには、九州中央自動車道の延伸が予定される’23年度に向け、観光客やツーリングライダーを招きたいという思惑も。高校生へのバイク安全教育の理想郷とも言われる、矢部高校の今後に注目しよう。
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