ホンダCB400スーパーフォア/スーパーボルドール。また1台、日本の誇る名車が消えることとなった。規制対応に必要なコストと販売台数を天秤にかければ、生産終了という結論は仕方ないのかもしれない。しかし、このバイクだけは意地でも作り続けてほしかったし、それが叶わないならば、せめて長年のファンへの感謝を込めた”ファイナル”を用意してほしい…と考えるのは贅沢だろうか?
●文:ヤングマシン編集部 ●CG:SRD
30年も売れ続けたCB400SF/SB。このままフェードアウトは大功労車に冷たくないか?
ついにこの日が来てしまった。’92年に登場してちょうど30年。日本の400cc市場の中核を担い続けたホンダCB400スーパーフォアと、その派生車であるスーパーボルドールの生産を’22年10月をもって終了すると、ホンダが公式に発表したのだ。同時にVFR800F/Xやゴールドウイングのリヤボックスレスタイプ、ベンリィ110の終了も発表されたが、多くのライダーにとってショッキングなのは、やはりCB400系が殿堂入りするというニュースだろう。
終了の理由は、’22年11月以降の生産車には「令和2年排出ガス規制(ユーロ5)」への適合が求められるため。現行CB400は、その1段階前の「平成28年排ガス規制(ユーロ4)」しか準拠していないため、11月以降は法的に生産できなくなるのだ。
もちろん、モデルチェンジして令和2年規制に適合させればいいのだが、それには排気系の刷新や、燃焼効率を高めるためのエンジンの改良、さらに義務化される車載式故障診断装置(OBD2)搭載のための電装系変更など、多岐にわたる開発と投資が必要になる。CB400は毎年2〜3000台をコンスタントにさばくベストセラーだが、日本専用モデルのため、それ以上の販売増は望みにくい。コストをかけて規制に対応しても、それを回収することは難しいということなのだろう。ビジネスとしては当然の判断かもしれない。
でも、それにしても惜しい。長年に渡って改良を重ねてきた現行CB400は、ベテランを唸らせる完成度と、教習車にも使われる扱いやすさを兼備した”完熟”の1台。緻密かつ高級感に満ちた走りは、ビッグバイクにも劣らないどころか今も日本車のトップレベルだし、直4ハイパーVTECの滑らかな吹け上がりも素晴らしい。改良を加え続けることの大切さを体現する存在でもあり、400ccというガラパゴスな排気量に限定すれば、今後これほどに熟成を極めたモデルが出現する可能性は限りなく低いだろう。
ちなみにディーラーに話を聞くと、少し前から問い合わせは増えており、生産終了が発表されても混乱はなかったそうだが、10月までの生産分にはすべてお客さんが付いており、もう予約は受けられないとのこと。すでに新車での入手は難しそうだ。400ccとしてはかなりの高額車となったCB400だが、それだけの価値があるとユーザーが認めていることの証明だろう。
であれば、せめて有終の美を飾る何かが欲しい。30年も販売が続いたのは買い支えてくれたユーザーがいたからだし、日本の中型クラスの大功労車であるCB400が、何の花道もなしにフェードアウトするのは、いくらなんでも寂しい。
現状は通常受注をさばくのもギリギリだそうで、増産の余裕などないのは百も承知。しかしヤマハSRの場合、最終的に予定台数をかなり上回る台数を作って生産を終了したと聞いているし、名車と呼ばれるバイクにはやはり”FINAL”の存在が必要なはずだ。
それは’92年に端を発する「プロジェクトBIG-1」の総括として、いずれ1300に設定されるのかもしれない。しかし、もっとも身近なビッグ1だったCB400にこそ、最後のセレモニーが欲しいと考えるのは、我々ヤングマシン編集部だけではないだろう。
いわばバイクの引退試合。ファイナルエディションは勇退する名車の花道だ!
“名車”の称号は、多くのファンが長年にわたって買い支えてくれたからこそ得られるもの。であれば去り際にはせめて、それらのファンに謝意を示して身を引いてほしい。いわゆる”ファイナルエディション”はそのひとつの手だろう。プロスポーツだって名選手には引退試合という花道が用意されて、ファンに感謝を伝えてから去っていく。黙って引退しちゃう人なんかいないでしょ!
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