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いまどきバイクは「走りながら暖機」がオススメ

【Q&A】走る前の「暖機」は必要?不要?【バイクトリビア010】

エンジンをかけてもスグに走り出さず、まずはしっかり「暖機」するのがエンジンをいたわって長持ちさせる秘訣……って本当? 長々と暖機していると近所の目が気になるし、いきなりアクセル全開で飛ばすワケじゃないし……、やらないとダメですか?


●文:伊藤康司 ●写真:ドゥカティホンダヤマハカワサキ、山内潤也、伊藤康司

暖機をするのは何のため?

金属は熱膨張するため、ピストンとシリンダーの隙間(クリアランス)は、エンジンが十分に温まった状態で最適になるように設計されている。逆に言えば、エンジンが冷えている時はクリアランスが広く、エンジンオイルの潤滑状態も十分ではないので、この状態で高回転まで回したり大きな負荷をかけるとエンジンを傷める原因になる。

だからエンジンを始動したらスグに走り出さず、しばらくアイドリング状態でエンジンがしっかり温まるのを待つ……というのが、多くのライダーがイメージする「暖機」だろう。この考え方は間違っていない。

ヤマハ XSR700 エンジン

金属で作られたエンジンは、充分に温まった状態で各部のクリアランスや潤滑が適正になり、トラブルを起こすことなく性能を発揮できる。 [写真タップで拡大]

水温計

水冷エンジンの場合、水温は80~100℃くらいが適温。寒い冬場だとエンジン始動から10分以上かかることもあるが、それまで走らない方が良いのか? [写真タップで拡大]

暖機必須のキャブレター車と、冷えていても走れるFI車

「機械として適切に温めるべき」という以前に、キャブレター仕様のバイクだと「温まらないと普通に走れない」という問題もある。キャブレターは純粋に物理現象によって、空気とガソリンが混ざった混合ガスをエンジンに供給している。そのため気温が低いと空気の密度が高くなり、相対的に混合ガスが薄くなってエンジンがかかりにくい。

そこで「チョーク」という機能を使って混合ガスを濃くしてエンジンをかけるが、エンジンが相応に温まるまでは燃焼状態が安定しないため、走り出すとギクシャクしたり、いきなりプスッとエンストしたりする。コレを避けるには、ある程度の暖機が必要になる。

対する近年の電子式フューエルインジェクション(FI)は、気温やエンジン本体の温度、燃焼状態などを各種センサーで検知して、ECU(エンジンコントロールユニット)で最適な燃焼状態になるように燃料噴射量(=混合ガスの濃さ)を調整する。そのためエンジンをかけてスグの状態でも(性能的には100%では無いが)、ギクシャクしたりエンストしたりせずに走ることができる。その意味では、暖機しなくても大丈夫だ。

カワサキ Z1
キャブレター

Z1のような旧車はもちろん、2000年代前半頃までメジャーだった「キャブレター車」は、冷えたエンジンを始動するにはチョークを引き、燃焼が安定したらチョークを戻す。その間に走り出すと、ギクシャクしたりエンストすることも多い。 [写真タップで拡大]

ヤマハ セロー250 2005年

セロー250の2005~2007年型は、キャブレター仕様の最終モデル。取扱説明書には「エンジンを長持ちさせるため、発進の前には常にエンジンを暖機してください。エンジンが冷えている間の無用な空ぶかしは避けてください」の注意書きがある。 [写真タップで拡大]

ヤマハ セロー250 2008年

セロー250が初めて電子式フューエルインジェクション(FI)を採用した2008年モデル。取扱説明書は「エンジンを長持ちさせるため、エンジンが冷えている間の急発進や、無用な空ぶかしは避けてください」に変わっていて、『暖機』の記述が無くなっている。 [写真タップで拡大]

機械的なトラブルより、騒音の方が大きな問題かも

機械的には暖機した方が良い、キャブレター車は暖機しないとエンストするかも……と、暖機必要論が優勢だが、停めたままアイドリングで長く行う暖気は、じつは問題も少なくない。

まずアイドリングのような低回転は最適な燃焼状態とは言えず、エンジンの燃焼室やマフラーにカーボンが堆積して性能低下やトラブルの原因になる。また、ある程度水温や油温が上昇するまで暖機しても、エンジンの燃焼室付近(シリンダーやシリンダーヘッド)が温まるだけで、他の部分(トランスミッションなど)はじつはそれほど温まらない。その状態で勢い良く走り始めたら……もちろん良いコトはない。

そして最大の問題が『騒音』。純正マフラーやキチンと規制を通っているマフラーだとしても、深夜や早朝の住宅街で暖機していたら、近所の人にとっては明らかに迷惑。これは「機械的に~」とか「燃焼状態が~」といったバイクの状態とはまったく無関係だが、本当に大きなトラブルになりかねないので要注意。大型車だと重くて大変かもしれないが、暖機するなら交通量の多い幹線道路まで押してから行うことを強く推奨する。

ホンダ CB1300SF マフラー

写真はCB1300SFのマフラーだが、取扱説明書には「無用な空ぶかしや長時間のアイドリングはエンジンやマフラー、触媒装置に悪影響を与えます」とある。とくに排気ガスを浄化するための触媒(キャタライザー)は、アイドリング回転での暖機時間が長いと傷みやすく、エンジンの燃焼室などもカーボンが堆積しやすい。 [写真タップで拡大]

「暖機走行」ですべてを温める

ヤマハ XSR700

サスペンションも冷えた状態だと適正なダンピング性能を発揮できないし、タイヤもグリップ力が低い。ブレーキパッドやディスクローターも適度に温まらないとコントロール性が良くない。これらは走らないと温めることができない。 [写真タップで拡大]

機械としての最適化や燃焼の安定化のためには、暖機はやった方が良い。しかし、温めた方が良いのはエンジンだけではない。サスペンションやタイヤ、ブレーキなど、バイクの多くのコンポーネントは適正に温まることで本来の性能を発揮するからだ。ところがこれらは、停めた状態でどんなに長く暖機したところで温まることはない。

そこでオススメなのが『暖機走行』。愛車が近年のFI車なら、エンジンをかけたらスグに走り出す。キャブレター車の場合も、エンストしないくらいの最低限の暖機で、できるだけ速やかに走り出そう。そしてエンジンの回転を抑え気味にして急加速や急減速を避け、大きな負荷をかけないように走行する。エンジンが温まるまではとにかく高いギヤ&低回転で慎重に運転し、その後はサスペンションやタイヤ、ブレーキをしっかり動かして温めよう。これもガツンとブレーキをかけるような急な動きではなく、ジワ~っと強めて大きく動かすことを意識しよう。

というワケで「暖機は必要」だが「停めた状態で長々やるモノではない」というのが答えではないだろうか。


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