’78年(昭和53年)に誕生し、途中2度の生産終了を経験するも不死鳥のごとく蘇ってきたヤマハのSR400が、ついに’21年3月のファイナルエディションをもって幕を閉じた。まだ500がある時代からたびたび試乗しているテスター・大屋雄一氏が、あらためて「SR」と向き合う。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ヤマハ
’21 ヤマハSR400ファイナルエディション
[◯] この振動は本物の証だ。ネオクラとは格が違う
私が初めてSRに触れたのは’90年代前半のこと。レーサーレプリカブームの末期であり、その少し前にはカワサキからゼファー(400)が発売された。SRの長い歴史を振り返ると、あの時点でまだ折り返しにも達していなかったのは驚きだ。
まずはエンジンから。SR400は’19年に平成28年排ガス規制に対応しており、今回試乗したファイナルエディションについてはメカニカルな部分での変更はなし。24psを発生する399ccの空冷単気筒は’10年にFI化して以降、キックスターターによる始動性が向上し、1~2回のキックで目覚めてくれる。路面を一歩ずつ蹴り出しているような加速感と、歯切れのいい排気音がシンクロする感覚は、フライホイールの重いシングルならではで、この雰囲気はキャブ時代から何ら変わらない。
バランサーなし&リジッドマウントが生み出す振動は、回転数に比例してシンプルに増幅する。これは設計当時の”軽くスリムに”を具現化した結果であり、ロードスポーツとしての速さを追求していたという本物の証だ。昨今ブームのネオクラシックがバランサーやラバーマウントなどで振動を消しつつ、鼓動感だけを巧みに演出しているのとは対照的であり、これはSRだけの味だ。
そして、このエンジン以上にSRがロードスポーツであると訴えてくるのがハンドリングだ。フレーム/前後サスペンション/タイヤの限界が高くないので無理は禁物だが、コーナーの手前で十分に減速し、リヤに荷重を残しながら倒し込むという旧車らしい乗り方をすると、本当に気持ち良く旋回する。また、車重の軽さとタイヤの細さのおかげで切り返しも軽快だ。上り勾配ではパワーの少なさが表面化し、また下りでは制動力がそれほど高くないことから峠道での速さはそれなりだが、とはいえバンク角の少なさをうらめしく思うほどにスポーティに走れるのは事実だ。
ブレーキは、フロントのシングルディスクがコントロール性重視なのに対し、リヤのドラムは奥で制動力が急に立ち上がる傾向にあり、特に雨天時はていねいに操作したい。
[△] ABS義務化が決定打。欲しい人は早く決断を
厳しくなる一方の排ガス規制に対して執念とも言える改良で対応してきたが、’21年10月から継続生産車にも適応されるABS義務化については、SRらしさを残しつつの装備は難しかったようだ。すでに中古車もプレミアム価格なので欲しい人は早めに。
[こんな人におすすめ] 正真正銘ラスト。生産を継続したヤマハに感謝!
先日、56年前に発売されたカワサキの500メグロK2に試乗。峠道で早くに限界が現れたのは車体だったので、’78年から基本設計が変わらないSRが今もスムーズに走れることに感心。最後に試乗できたことはテスター冥利に尽きる。
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SR400ファイナルエディション/リミテッド 概要 '78の初代発売以来、環境規制適合化をはじめとする数々の改良などを受けながらも、空冷OHC2バルブ単気筒エンジンの基本部とキックのみの始動方法、一部[…]
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