世界一を獲らなければ、生き残れない。熾烈な覇権争いのさなかに”Z”の名を持つバイクが生まれたのだった。900Super4 “Z1″登場から半世紀。その伝説と憧れは、Z900RSへと確かに続く。その前時代を築いた、空冷Zの歴史とたゆまぬ進化を紐解いてみる。ここでは”その2″として、角Z、Z1R、J系、ローソン・レプリカ、GP系を紹介しよう。
●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司)
’79 カワサキZ1000Mk.II
バイクデザインの新機軸、”男カワサキ”を決定づけた”角Z”
Z1のティアドロップ型の燃料タンクなど丸みを帯びたデザインから、直線基調の硬派なスタイルに変身したZ1000Mk.II。エンジンも基本構造はZ1000(A2)を踏襲するが、新型クランクシャフトやリブを入れたクランクケース等で強化してパワーアップに対応。カムカバーの形状もスタイルに合わせて角型に変更され、エンジンは再びブラック塗装。オルタネーターをインナーローター式に変更し、トランジスタ点火を採用した。’79年がA3で、翌’80年のA4型はカラー変更のみ。
Mk.IIの派生車種
’80 Z1000 Fuel Injection[H]
量産車初のフューエルインジェクション(4輪用のボッシュLジェトロニックを転用)を採用。人気の黒×金カラーは、Mk.IIカスタムでも多用される。
’79 Z1000ST
Mk.IIのデザインやエンジンの基本部分を踏襲するシャフトドライブ車。17インチの後輪や、リーディングアクスル式の前輪などは、水冷6気筒のZ1300の技術をフィードバック。
’78 カワサキZ1R
メーカーメイドのカフェレーサー・スタイル
Z1000Mk.IIに先駆け、’78年に登場したZ1Rは、当時アメリカでブームだったカフェレーサー・スタイルの要望に応えたモノ。Z1000(A2)をベースに直線基調の13Lタンクやシートカウル、国産バイク初のビキニカウル、さらに4in1の集合マフラーも装備。スポーツ性を狙った18インチの前輪や多孔式のディスクローターもZ1Rのみの装備。ただし操安性の問題(高速でウォブルが発生)があり、D2からはMk.IIベースとなり、前輪は19インチに戻された。
Z1Rの系譜
’79 Z1R-II
前輪を19インチに戻し、ブレーキ系もMk.IIと同様に。エンジンもMk.IIベースになり、カムカバーも角型。燃料タンク容量を20Lにアップ。’80年のD3はカラー変更。
’81 カワサキZ1000[J1]
スポーツ性を高めた新世代Zが誕生
Z1系エンジンを刷新し、ライバル車やAMAレースの新レギュレーションに対応。ボア×ストロークを69.4×66.0mmの998ccとし、吸排気バルブの大径化はバルブ挟み角も変更し、ヘッドを中心に大幅にリファイン。カム駆動もローラーチェーンからハイボチェーンに変わり、ミッションのギヤ比も変更。シャシーも軽量化された。
“J系”の系譜
’82 Z1000[J2]
J1からカラー変更のみ。北米仕様(KZ1000)は、依然としてティアドロップの丸型タンクを装備していた。人気の高いZ1000R(R1)のベースモデル。
’83 Z1000[J3]
Jシリーズの最終モデル。メーターがスピード/タコ一体の角型になり、シート形状が変わった。キャブモデルの他にフューエルインジェクション仕様も存在した。
たった30台の市販レーサー:’82 Z1000S1
ホモロゲ最低販売台数をクリアする30台のみ生産。S1のエンジンに投入した技術は、Z1100RやGPZ1100にフィードバックされた。
’82 カワサキZ1000R[Z1000R-R1]
絶大なる人気のローソン・レプリカ
’81年のAMAスーパーバイクでエディ・ローソンがチャンピオンを獲得した記念に限定販売。J1をベースにビキニカウルや専用シート、専用Rサスやオイルクーラー、KERKER製の4in1マフラーを装備。市販車では2スト車やオフ車を除き、Z系で初めてライムグリーンを纏った。’83年のR2は、ローソンが移籍したため”チャンピオン・レプリカ”の名で販売。
Z1000Rの系譜
’83 Z1000R[Z1000R-R2]
カムシャフトとキャブレターの設定変更で1psアップ。メーターが変更され、青白のグラフィックのデザインも変わった。
’84 Z1100R[Z1100R-R1]
GPz1100のエンジンをキャブ化して搭載し、マフラーは左右2本出しで114馬力。R系は1100のみ前輪18インチ。
’81 Z1100GP[B1]
レース技術を投入したZ1系エンジンの集大成
J系エンジンのボアを72.5mmに拡大、市販レーサーZ1000S1同様のシリンダーヘッドを投入し、ピストンのピン径やハイト、コンロッドも専用品に。キャブに変わり電子式燃料噴射(KEFI)を採用し、速さとスムーズさを実現。
GPの系譜
’82 Z1100GP[B2]
KEFIから新開発の8ビットマイコン制御のDFIに進化し、ミクニ製スロットルボディと合わせ1ps向上。ビキニカウルも装着。
’83 GPz1100
エアロフォルムのカウリングを装着し、リヤにユニトラックサスペンション、Fフォークにアンチノーズダイブを装備してシャシーも一新。そして最高出力は120馬力に増強。’83年のA1から’85年のA3まで生産(カラーや小変更のみ)。
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