ヤマハは、並列2気筒のMT-07をベースとしたフレンドリーなスーパースポーツモデル「YZF-R7」を5月に発表。2021年冬には日本への導入も予告されている。そこへ新たなニュースが飛び込んできた。欧州でR9およびR2という商標が出願されているというのだ!
日本ではYZF-R1~R9の全てのナンバーを出願しているが……
ヤマハは、2021年5月に新型YZF-R7を世界同時公開。日本でも2021年冬の導入が予告され、フレンドリーなスーパースポーツモデルの登場が歓迎されている。エンジンとフレームは最新型のMT-07をベースとしているが、フルカウル&セパレートハンドルというスタイルだけではなく、フルアジャスタブルのKYB製φ41mm倒立フロントフォークを新たに装備。フレーム剛性もこれに合わせてバランスを取り直した。ブレーキはラジアルマウントキャリパー+ラジアルマスターシリンダーを奢り、この内容で価格は100万円以下になるとの情報もある。
今から待ち遠しい状況のなか、このYZF-R7は新シリーズの序章にすぎないのではという状況証拠が出現した。まず日本では以前からYZF-R1~YZF-R9およびR1~R9の全てのナンバーが商標出願されており、これについては将来の可能性を広げるための手法だろうということで大きく取り上げてはこなかったのだが、今回は欧州でR9およびR2の商標が出願されたという情報が入ってきたのだ。さらに、国内で行われた新型MT-09の試乗会で撮影したディテール写真を改めて見返してみると……。
新型MT-09のフレームは明らかにスーパースポーツへの転用も考慮されている!
まずMT-09の真横からの写真をよく見てもらいたい。注目はステアリングヘッドの位置だ。スーパーモタードとネイキッドを融合するというコンセプトから、従来型はやや高めに設定されていたのに比べると、新型はフロント荷重を増すために約30mm下げてあるといい、一般的なロードスポーツと同様に高さに。それでいて、トップブリッジと同程度の高さにセパレートハンドルをマウントしたとしても、フレームへの干渉は少なそうだ。
旧型のフレームは、エンジンを覆うような形状からステアリングヘッドに向かった伸びあがっているのに対し、新型はストレート形状。約30mmという違いを象徴するように、フォーククランプもロワー/アッパーブラケットともに低い位置にある。
ピボット部分に注目!
そしてフレームから見えるもうひとつの状況証拠は、スイングアームピボット部分の形状だ。CFダイキャストで製造される新フレームは、最終的な穴あけ加工でスイングアームピボット高を決定しているようだが、その加工位置には明らかに調整の余地がある。つまり、新型MT-09のキャスター角25°10′から、スーパースポーツらしい24°前後に起こした際に、スイングアーム対地角とドライブスプロケット位置に合わせた最適なピボット高へ調整できるのでは、ということになるわけだ。
また試乗会での技術説明では、MT-09からトレーサー9 GTへの変更点として、スイングアームの60mm延長と、それにともなう剛性調整でエンジンハンガーブラケットを強化(および積載量増ともないシートレールもスチール化)したことが明らかになった。この際に、“スポーツネイキッドとツアラーのどちらにも対応できる、とても素性のいいフレームが出来た”というコメントもあり、これを拡大解釈して“スーパースポーツにも……”と想像することは、あながち的外れとも言えまい。
以上のような、やや細かい点を突いた状況証拠ではあるが、YZF-R1が初代モデルで『セカンダリーロード最速(つまり公道ワインディング最速)』を謳い、その後スーパーバイクのベースモデルとしての役割を担うことでフレンドリーなキャラクター&価格から離れていったことを考えれば、そうした原点に回帰したニューマシンが存在すると考えることは、むしろ自然なことのように思えてならない。
ちなみに、欧州で2020年末に出されたリリースには、XSR900のユーロ5適合バージョンは2021年末に登場することがひっそりと記載されていた。新型MT-09をベースとした新生XSR900になることは確実だろうが、ここにYZF-R9が同時デビューする可能性もなくはない。あるいは2022年秋のEICMAか……。
以上はあくまでも状況証拠からの推論ではあるが、MT-09が新たな3気筒スーパースポーツに転用できるフレームを持っていることは間違いない。あとはGOサインが出るかどうか……!
〈余談〉
筆者がかつて10年以上も前だろうか、初代ホンダCBR900RRファイアーブレードの生みの親にして、CBR954RRまでの開発責任者として公道スーパースポーツを牽引してきた馬場忠雄さんにインタビューした際に、もしも次に何かをつくるとしたら? と尋ねたところ、「100万円/100馬力の2気筒または3気筒で、車重は180kg程度。そんな“誰もが手に入れやすく扱いやすいスポーツバイク”をつくるでしょうね」との回答を得たことがある。リッタースポーツが一般ライダーの手に負える範囲から大きく離れていくなか、ここ数年は国産/外国車ともに650~900cc程度のネイキッドスポーツや、650~700cc程度の安価なスーパースポーツが市民権を得てきた。まさしく馬場さんが次に生み出したかったスポーツバイク像、それが主流に近いところまで認知されてきていることに、“先見の明”という言葉を思い出さずにはいられないのであった。
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