メカノイズを含んだトゲトゲしいエキゾーストノートとは裏腹に、MVアグスタ「F3 800」のハンドリングは友好的だ。そこにはコーナリングに没頭できる悦楽の世界があった。
●文:ライドハイ(伊丹孝裕) ●写真:長谷川徹、MVアグスタジャパン
好戦的なサウンドと、プレッシャーなく接することができるフレンドリーさ
細身で端正なフォルムを持つMVアグスタのF3 800は、目の前にすると一層コンパクトだ。830mmのシート高は、このクラスのスーパースポーツとしては特別高くはなく、足着き性も良好。そのまま車体を左右に振っても車重はあまり感じず、物理的にも心理的にもプレッシャーは少ない。
ただし、サウンドは好戦的だ。吸気音と排気音にはざらつきが交じり、かなり荒々しい。加えてエンジンからフレーム、フレームからハンドルへと伝わる微振動が、それを助長。スロットルに連動し、それらが共鳴し合う様は野性味に溢れ、これから暴れ馬にでもまたがるようなヒロイックな気分になる。
とはいえ、やすやすと歩み寄れそうにない威嚇を感じるのはそこまでだ。トゲのある音質を意識から取り除き、エンジン特性だけに集中すると、トルクが驚くほど滑らかに沸き起こってくるのが分かる。クラッチをつなぐと車体はあっさりと押し出され、タイヤは軽やかに路面を蹴り出す。
600でも1000でもない800という排気量、2気筒でも4気筒でもない3気筒という形式。そのいずれもが絶妙で、トルクが希薄過ぎるわけでも、パワーが出過ぎるわけでもない、ちょうどいいところに落とし込まれている。
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