●文:小泉裕子(ゴーライド副編集長) ●写真:関野温
オフロードマシンの楽しみ方はレースやコース走行などたくさんあるが、やはりツーリングや旅において自分の持っているスキルの限りグングン山や川の中まで入って行けることがもっとも大きな魅力と言える。そんなオフロードツーリングの楽しみ方を提案し続ける『ゴー・ライド』誌の副編集長・コイ(以下、副編コイ)が、限りなく自然の状態にある露天風呂=野湯を目指して八ヶ岳周辺の林道を走り抜けるツーリングを敢行!! 林道/温泉/名所/グルメと駆け巡るミニマム旅を前後編でお届けするゾ!
楽しいことドドンと詰め込んで、自然と戯れにいざゴー・ライド♪
長めの休暇はもちろん、束の間の休みであっても愛車とともに走り出したくなるのがバイク乗りたるもの。まったり気持ちよく走りたい、ワインディングを攻めたい、美味しいものを食べたい、絶景や名所なども楽しみたい。そしてこれがオフ車乗りともなれば、どの林道に行こうか、あの山に気持ちよく走れるダートはないだろうか? と、少し違いはあれど欲は増すばかり。
そこで、やりたいことをこれでもかと詰め込みまくり、五感すべてで気持ち良くなれるポイントを思いつくまま訪れ、一日をフルに使い楽しみ倒すべく林道旅計画を練ることにした。そんな林道旅を妄想しながら一番最初に頭に思い描いたのが、”林道走ってポコっと野湯でも沸いてないかな…”。コレだっ!! これを今回の林道旅のメインイベントとする。
日本最高所の野湯「雲上の湯」を目指せ!
“林道走ってポコっと野湯”の妄想のもと林道旅の地に選んだのは、長野県と山梨県に跨がる山塊・八ヶ岳連峰の麓にある「八ヶ岳線」周辺。ここには妄想を実現してくれる極上の野湯、八ヶ岳の硫黄岳直下に湧く日本最高所の野湯「本沢温泉 野天風呂 雲上の湯」があるのだ。その標高はなんと2150m!!
しかもこの野湯の最大の魅力は、”気軽にオフロードマシンで林道を走って(ココ大事)、ちょろりとお山を登って行ける”という、お手頃なのに楽しさ2倍3倍のオイシさにある! まさに「欲望旅(名前変わった)」にふさわしい地なのだ。
さあ、緑深い長野の山と戯れつつ、街も道も旨みも名所もその空気感も堪能しに、長野県南佐久郡を目指そう!! …とさっそく日の出前に東京を出発し中央道へ。山梨県北杜市の長坂ICで降りて、県道28号を北上し長野県を目指す。
【旅の相棒はCRF250L(旧)】今回の旅の相棒に選んだのは、オン/オフで二面性を持っているかのごとく、どちらもピタッとくる乗り味を感じさせてくれる頼れるアニキ的存在・ホンダ CRF250L(旧)。オフロードマシンならではの性能と走破性に加え、250トレールながら往復6時間を超える高速走行時間に耐えうる快適な高速走行性能を持ち、ワインディングではまるでオンバイクのような車体バランスを想起させる。そしてなにより旅の友として最高に画になるスタイリング……。そう、カッコいいのだ。
本沢温泉入口からすぐにダート林道開始
登山者も多いので走行には注意を!!
長坂ICのすぐ東を走る国道141号を一気に約30kmほど北上し、小海線と並走しつつ県道480号との交差点を左折、道なりに進むと「本沢温泉」の看板を発見。いよいよ林道か、と弾む心と裏腹にしばらく舗装路を進むと、ズラーっと並ぶ温泉の看板と駐車車両が現れる。登山者はここから歩いて入るのだが、四輪駆動車やオフロードマシンならさらに奥まで入って行ける。
木の根やゴロ石もある登山道も兼ねた道程
車両が入れる最終ポイントの林道ゲートまでの路面状況は、動きのある砂利石や石が主体で、木の根っこなども出ており、雨の日は少し注意が必要だ。初級者でも行けるが、勾配がキツい場所もあるので下りは少し怖いかもしれない。そんな時は焦らずにマシンから降りて押してもよし。ただ登山者も歩いているので、ブラインドやつづら折りなどは普段より気をつけて走行するように心がけよう。
車両で行けるのは林道ゲートまで
今回はひとつ手前の広場で間違えてバイクを駐車してしまったのだが、車が駐車しているスペースが現れてもさらにその先まで入って行ける。林道ゲートが目印なので、そこから歩き始めよう。
ヘルメットは置いていこう
林道走行からの軽登山開始!!
目当ての八ヶ岳・本沢温泉の山小屋まではだいたい1時間半くらい。ずっとなだらかな上りで、一部崩壊で迂回路が作られていたものの、まず道を間違うこともなく到着できるはずだ。
日本最高所の野天風呂!!
看板のすぐ横に立派な山小屋が目に入る。ここ「湯元 本沢温泉」は、八ヶ岳の硫黄岳直下に湧く日本最高所野天風呂である「雲上の湯」に加え、泉質の違う「苔桃の湯(内湯)」と2つの天然温泉が楽しめるが、今回の目的はただひとつ、雲上の湯だ。ちなみにシーズン混雑時は、内湯は宿泊の人のみとなる場合があるというので、内湯にも浸かりたい人は注意が必要。
山小屋からだらだら5分くらい登ると野天風呂へと下る道に出るが、その前に山小屋で入浴料金1000円を支払うことを忘れずに!! 記念しおりをもらえるから、旅の思い出にもなるのだ。
いよいよ野湯ちゃぷタイム!!
そして野湯ちゃぷタイムは、言うに及ばずの最高さ! 白濁した湯は浸かると同時に身体に沁み入るように疲れを癒してくれた。湯温は猫肌でも入れるくらいのちょうどよい熱さ。神を感じた。
ただひとつ注意すべき点として、乙女は水着などを持っていくべき。神的タイミングで人がいなかったからよかったものの、野湯から上がり戻り出すころには、ぞろぞろと人が入りにきて混雑し出したからだ。当然のことながら脱衣所などなく、衣類は野湯の横で着脱することになる。
今回の林道&軽登山装備紹介!!
軽いハイキング気分で行けるお山でも、登山は登山。同じトラブルが起きても下界とはまったく別モノの危険をはらんでいることを忘れちゃダメ。”まあいいか…”が拭えない後悔に変わることがないように、なぜ必要かを考えて装備の用意をしよう!
飲料水
最低でも1Lは持っていく。事前に地図で水場を確認しておくと、持つ量の目安がつく。ノドがすぐ乾く筆者は、個人的に山の荷物の軽量&コンパクト化は”水を持つため”にしていると思っている。水だけはどうあがいても体積も重さも変えることができないからだ。
[A]地図+コンパス
どんなに人の多い人気のメジャーな山や短距離の山行でも、自分の歩くルートの把握ができる地図と自分の進行方向を確認できるコンパスは持っていこう。暗くなったり雨などで道の様相が一変した時、慣れていないと道や方向を簡単に見失う人も多いからだ。
[B]行動食
登山は有酸素運動なので、水分だけでなく身体の中のエネルギーを激しく消耗していく。エネルギー補給をしないと急にバテて歩けなくなることもある。携行性&保存性に優れ効率的にエネルギーや栄養を補給できる高カロリーなおやつなどを必ず持参しよう。
[C]トイレットペーパー
メジャーな山や軽いハイキング地にある山小屋ならトイレットペーパーが付いているトイレもあるが、基本はないものと思ったほうがいい。どこででもこっそり青空排泄ができるので、じつは気持ちがいい。自然に還るタイプの芯なしがオススメ。
[D]ヘッドライト
昼の登山でも絶対に持っていくべき。両手を空けられる頭につけるヘッドライトがベスト。基本、日没3時間前にはテン場到着なり下山なりできる予定で動こう。やむを得ず日が暮れてしまった場合、山は本当に怖いものになるからだ。日没2時間前でも暗いところは暗い。
[E]防寒着
真夏だろうが絶対持っていこう。100m標高が上がるたびに温度は約0.6℃ずつ低くなっていく。平地が30℃でも3000mの山では12℃、そこに風が吹くとさらに体感温度は下がるのだ。軽量コンパクトな防寒着なら荷物もかさばらずオススメ。
[F]雨ガッパ
ツーリング然り、雨具は必須。山の天気は笑えるほど変わるので、雨を感じたら迷わず着る。着っぱなしは逆に蒸れて汗をかき、ウエアが濡れてしまうなど体力を消耗するので、めんどくさがらずに天気に合わせてその都度着脱しよう。
[G]救急セット
虫刺され用のポイズンリムーバー、痛みや発熱は体力を奪うので鎮痛/解熱剤、ねんざや骨折時に靴ごと固定できる三角巾、補修にも使える万能なテーピングテープ、トラブル時に身を包めるサバイバルシート、持ち帰りのゴミ袋や防水にも使えるビニール袋など。
[H]着替え
最低でも替えの靴下は持っていく。足元を衛生的に保つだけでも、身体や気持ちの状態が良好になる。汗で濡れたままのシャツも体力を奪う原因になるので、下山してから高速走行などで身体を冷やす前に、濡れていないものに着替えると体調を崩す心配もない。
[I]非常セット:コッフェル/ナイフ/ガス/バーナー/アルファ米
休憩時に湯を沸かして温かい飲み物を飲むだけでなく、非常時に熱源にして身体を急速に温めることもできる。非常食は日帰りでも1食分は持っておきたい。山では体力温存が一番重要だからだ。非常食には、水でも湯でも注いで待つだけで作れる軽いアルファ米がオススメ。
[J]温泉グッズ:バスタオル/手ぬぐい/オロナミンC
「漢は黙って手ぬぐい!」と思い身体を拭くバスタオルと手ぬぐいのみ持参したが、メジャーな野湯では水着着用の人が多かった。野湯は基本脱衣場はなく混浴なので、女性は水着などを持っていくほうが安心かも。ただ、やはり野湯はマッパが最高。また、風呂上がりに飲むお気に入りの1本は必ず持参したい。
後編では、さらなる八ヶ岳線周辺の林道探索や名所やグルメを紹介する!!
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