東モ参考出品車を徹底解剖

’20カワサキ Ninja ZX-25Rエンジン解説【250直4で45ps超え!?】

脳天を貫くフォーミュラサウンド、2万rpmに迫る超高回転域…。長らく途絶えていたハイメカの極致、250cc直列4気筒モデル「Ninja ZX-25R」がカワサキの手で現代に甦る。衝撃の発表が行われた2019年東京モーターショー以来、新情報がなかなか出回らない状況ではあるが、ここであらためて現時点で判明していることをまとめておこう。前稿のスタイリング編に続き、本稿では驚異的なパワーを発揮する心臓部・エンジンについて解説する。


●まとめ:沼尾宏明 ●写真:真弓悟史、鶴身健、編集部 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

パワーは驚異的。生産国は日本ではなくタイになる模様

カワサキ Ninja ZX-25Rの心臓部・直列4気筒ユニットは、往年のZXR250の焼き直しではなく完全新設計だ。詳細は未公表ながら、電子制御スロットル&FIを備え、パワーモード、現行250唯一のトラクションコントロールまで実装。

’20 KAWASAKI Ninja ZX-25R[東京モーターショー2019参考出品車]

1万7000rpmからレッドゾーンを刻むDOHC16バルブエンジンは、パワーモードがF/Lの2モードであることも判明。このエンジン、関係者によれば「ZXR250の設計図面も確認はした」そうだが、シリンダー前傾角から異なる完全新設計。とはいえ超ショートストロークなのは間違いなく、ボア×ストロークはZXR後期型の49×33.1mmと同等となるはずだ。

最高出力は「250ccクラス最強」が現時点でのメーカー公式見解だが、本誌はそこを拡大解釈し、’92年までの自主規制値・45psを1ps上回る「46ps」と予測。ラム圧効果で+αは期待できるし、前述の関係者は「このエンジンは非常に素性がよく、チューニング次第でさらに上乗せできる」と語る。潜在能力は往年のZXR250をはるかに凌駕する!?

また、最高出力の発生回転数は「1万5000回転」になると予想。現行の2気筒勢はCBRの38ps/1万2500rpmが最強。直列4気筒らしい高回転&高出力に期待できそうだ。

さらに独自情報によると、ZX-25Rの生産国は日本かと思いきや「タイ」となる模様。精緻な4気筒ながら、既にカワサキはZ900などをタイで生産している実績があるため、可能という。なお400など上位機種は「今のところ」発売する予定はないだろう。

【レッドゾーンは1万7000rpmから】タコメーターを見るとレッドゾーンは1万7000回転以降。文字盤には2万500回転まで刻まれる! 関係者によるとレッドまでキーンと回る上に、以前の250直列4気筒と違い、低中速パワーもキッチリ確保。F1のようなサウンドにも期待できるという。

【主要三軸は直線的な配置】シリンダー右にテンショナーが見えることから、サイドカムチェーン方式で、エンジンの主要三軸(クランクシャフト/メインシャフト/カウンターシャフト)は同一面上に並んでいるように見える。ZX-10RなどリッターSS系の定番レイアウトである三角配置ではなさそう。ラジエターは大型ながらフラットなタイプだ。

【シフターは驚異のアップ&ダウン対応】このクラスでは前例を見ないクイックシフターを装備。しかもアップに加え、ダウンシフトにまで対応する。シフトペダルの操作だけで1万7000回転から自動でブリッピング(空吹かし)という未体験の世界が味わえるのだ。なおシフターを標準で備えるのはKRTカラーのみで、他の色はオプション扱いになる模様。

【エキゾーストパイプは社外品のような取り回し】メーカー公開の透視図を見る限り、排気系は4in2in1。外観から排気デバイスの類はなく、スッキリした取り回しでエンジン下の巨大な膨張室へ導かれている。また、4本すべてがエキゾーストパイプとほぼ同径の太いパイプで連結されるのが特徴。これらは高回転時の排気の流れをスムーズにし、パワーを稼ぐのが狙いだろう。マフラーエンドは二重構造になっているが、国内仕様は消音のため、より多重タイプとなる可能性あり。なお、マフラーは膨張室と溶接された一体構造に見える。ならばスリップオンマフラーの装着は困難だろう。

【ハードな走りに応えるオイルパン形状】排気系を避けるようにオフセットされたオイルパンはかなり深く尖った形状。オイルを一か所に集めることで攪拌抵抗を減らすとともに、激しい加減速や深いバンク角が連続する走りでも、オイルポンプに安定してオイルを供給できるはずだ。

【50Tの大径スプロケットでトルクを稼ぐ】駆動系で目立つのが大径ドリブンスプロケット。RK製の50Tで、Ninjaの40T、CBRの41Tと比べても大きく、加速力を稼いでいるハズ。チェーンサイズは520だ。

エンジンは往年のZXR250と似て非なるもの

35度前傾のシリンダーやサイドカムチェーンが特徴のZXR。’89年の登場時に48×34.5mmだったボア・ストロークは、’91年のフルチェン時に49×33.1mmに。

テンショナーらしき部品が見えるため、ZX-25Rも右側配置のサイドカムチェーン式と思われる。エンジン軸配置もZXR250同様、三軸が直線的に並ぶ一般的な構成か。

ZX-25Rは平面だが、ZXR250は表面積を稼ぐための湾曲ラジエターを採用。ウォーターポンプをエンジン左下に置く点が30年を隔てた2車に共通する構成だ。

現時点でエンジン左面から読み取れる情報は少ない。ちなみにZX-25Rのエキゾーストパイプは、集合部までの長さがZXR250より明らかに短い、いわゆる高回転型の形状だが、果たして…?

驚異的なパワーで45ps超えは確実と思われるNinja ZX-25R。次ページでは、以前『ヤングマシン』本誌にて”理想のニーゴー4発”について語ったイナガキデザイン代表・稲垣一徳氏が再び登場し、あらためてZX-25の直列4気筒ユニットを分析する。

最新の記事