
Vツインじゃなければ、ハーレーじゃない。大排気量ではないし、並列2気筒なんてありえない。日本導入が決まると、一部のコアファンからは否定的な意見も聞かれた一方で、軽快でスポーティー、初めてのバイクに最適、2台目のハーレーとして欲しいなどと好評も得て、まさに賛否両論! そんなふうに熱視線を浴びている「X350」そして「X500」の2025年型が登場した。価格をそのままに、ニューカラー「コズミックブルー」がデビューだ!!
●文:青木タカオ(ウィズハーレー編集部) ●写真:望月勇樹 ●外部リンク:ハーレーダビッドソンジャパン
元気溌剌350か、上質感ある500か!!
ウィズハーレー編集部では2023年の秋、X350の日本市場導入が発表されたのと同時に購入を決意。ハーレーダビッドソン川口にて予約を入れた。
「Vツインではない」「大排気量じゃない」「やめておいた方がいい」と、否定的な意見を一部から耳にする一方で、ハーレーダビッドソンがアジア/オセアニアをはじめとする世界戦略車としてリリースするブランニューモデルであることに加え、1970年代以来のアンダー400ccクラスであることや、アエルマッキ社との関係性を彷彿とさせる中国QJモーターサイクルとの業務提携などトピックスは数多く、とても興味深いと感じた。
「お金を支払って入手し、ユーザーとして所有することで、いろいろなことをしっかりと確かめてみたい」そう考え、ハーレー専門誌としての役割を果たすためにも購入することを決めた。
そして新車のエンジンを始動させ、走り出してから早くも1年余りが過ぎた。すぐにカスタムプロジェクトを立ち上げ、これまで毎号誌面のボリュームを大きく割き、連載企画として続けてきたが、当初はリプレイスパーツが皆無でほとんど何もできなかった。
そこでいくつかのパーツメーカーに車両を持ち込み、「カスタムを楽しみたい」と懇願。ありがたいことに賛同してくださり、手を差し伸べてくれるメーカーが複数社あった。専用パーツが続々と開発され、製品化へと至る。
X350やX500に魅力と可能性を感じたのは、我々だけではなかったのだ。まだまだ豊富とはいえないものの、現在ではさまざまなカスタムパーツを我々オーナーは選ぶことができるようになった。編集部では、量産パーツや試作品をいち早くX350に取り付け、旅仕様にしてツーリングへ出かけたり、最近では運動性能を追求し、サーキットでスポーツライディングを楽しんでいるのはお伝えしてきた通り。つまり、X350にはずいぶん乗り込んだ。しかも、あらゆるシーンでだ。
さて、2025年型でX350およびX500に揃って、ニューカラーのコズミックブルーが登場した。まずはX350から乗ってみよう。軽快なボディに、青もまたよく似合うではないか。
両車ともカラーバリエーションは、ダイナミックオレンジ/パールホワイト/ドラマティックブラックが継続され、新色のブルーはスーパーソニックシルバーと入れ替わった。
小ぶりなフューエルタンクやテールエンドに向かって跳ね上がるシートカウル、高めにセットされたワイドハンドルは、ハーレーダビッドソンのフラットトラックレーサーXR750をイメージしたもの。デザインや設計はアメリカの本拠地ミルウォーキーでおこなわれ、生産はイタリア「ベネリ」ブランドも有する中国のQJモーターサイクルが手がける。
同社はスーパースポーツ世界選手権(WSS)にも参戦するなど、一線級の舞台で実績のある日欧のファクトリーチームに挑戦状を叩きつけ、レース界にも大きなインパクトを与えている。
X350のテーパードハンドルを握ると、上半身が起きてリラックスのできる乗車姿勢となるが、フットペグはバックステップと呼べるほど後退した位置に備わり、下半身は膝が“くの字”に曲がるアグレシッブなライディングポジションとなる。
360度位相クランクを採用した並列2気筒エンジンは、隣り合う左右のシリンダーが同時に爆発する等間隔爆発となり、素直な特性で扱いやすさが際立つ。
低速トルクが十分にあり、クラッチミートの際に半クラッチで補うなどといった神経質さはなく、発進加速もスムーズ。スロットル操作に対するレスポンスは鋭く、もたついたりギクシャクすることはない。滑らかに元気よく回る。
マフラーはマスの集中化に貢献するショートタイプで、ステップに載せた右足のすぐ下にレイアウトされる。高周波音の少ないハスキーなサウンドを奏で、程良く野太い排気音は耳に心地よい。
鋼管製トレリスフレームを骨格にしたシャーシには、前後17インチの足まわりがセットされ、クセのないニュートラルなステアリングフィールを実現している。接地感があり、ヒラヒラと走るような俊敏性より、落ち着きを持たせた安定志向のハンドリングに仕上げられている。
さぁ、そしてX500だ。この後のページで詳細を報告するが、編集部ではさらにX500のカスタム車も購入した。
X350に満足しているからで、その兄貴分もまた当初からずっと気になっていたのだ。白状してしまうと、実車を目の当たりにし、初ライドしてからはもぉ欲しくてたまらなかったのである。
Xシリーズを名乗る兄弟車でありながら、外装はもちろん、車体/エンジン/足まわり、すべてを別モノとしている。
トレリス構造のスチールパイプ製フレームに吊り下げられ、車体の剛性メンバーとして機能する水冷DOHC4バルブ並列2気筒エンジンは、360度クランク/サイドカムチェーン方式であることなどは変わらないものの、ボアストロークはX350が70.5×45.2mmでショートストローク設計にしているのに対し、X500は69×66.8mmと、スクエア気味となっている。
穏やかで扱いやすい特性ながら、トルクはより太く、スロットルレスポンスもシャープになって、加速フィールは一段と力強い。ワイドレンジで、シフトダウンを横着してもアクセル操作だけで速度を回復できる。147ccの排気量差が対応力で余裕を生み出し、ミドルクラスの軽快性を持ちながら、大型車にも近いライドフィールが感じられる。
また、車体剛性も高められ、顕著なのはなんといっても足まわりだ。タイヤサイズこそ変わらないものの、倒立フォークのインナーチューブ径は41→50mmと極太となり、ラジアルマウントキャリパーまで奢られているから目を見張る。
ストッピングパワーに長けるだけでなく、コントロール性にも優れ、ワンランク上の走りが味わえる。
ニーグリップしやすく、フィット感も申し分ない。アップライトなハンドルはグリップ位置がX350よりわずかに高く、ヒザの曲がりに窮屈さは感じられない。違和感のない自然な位置にステップが備わるミッドコントロールによって、堂々たるライディングポジションを決定づけている。
若年層のライダーにも手が届きやすいリーズナブルな価格設定で、ハーレーダビッドソンの入門機としても最適なXシリーズ。ウィズハーレー編集部ではその両モデルを揃えて持つ、少しマニアックなファンとなっているが、これに悔いはない。
ひとつ心配なのは、さらにまたバリエーションモデルがデビューすることだ。
今回、ニューカラーの登場でさえ羨ましく、外装一式が欲しいと思ってしまったのだから、もしもパンアメリカのようなアドベンチャーツーリングが出てきたら…、もしも1970年代のファクトリーレーサーRR250のようなフルカウルロードスポーツがセンセーショナルなデビューを飾ったら…、と想像すると楽しみは尽きない。ハーレーダビッドソンXシリーズの可能性は、無限大に広がっている。
車両詳細:X350
クルーザー的なスタイルとは一線を画し、レーサーXR750や市販車のXR1200を彷彿とさせるトラッカースタイルで、アメリカンスポーツをイメージしたX350。2025モデルではNEWカラーのコズミックブルーがデビュー。鮮やかなブルーもよく似合う。これまでのハーレーを基準に考えれば異質かもしれない前後17インチの足まわりを持つ、ネイキッドスポーツスタイル。扱いやすいパラレルツインエンジンを搭載する。
【HARLEY-DAVIDSON X350】■エンジン:水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ ■排気量:353cc ■ボア×ストローク:70.5×45.2mm ■圧縮比:11.9 ■最高出力:27kW(36HP)/8500rpm ■最大トルク:31Nm/7000rpm ■全長×全幅×全高:2110×785×1070mm ■軸間距離:1410mm ■シート高:777mm ■車重:195kg ■燃料タンク容量13.5L ■変速機:6段リターン ■ブレーキF=ダブルディスク R=シングルディスク ■タイヤF=120/70ZR17R R=160/60ZR17 ●色:コズミックブルー ダイナミックオレンジ パールホワイト ドラマティックブラック ●車両本体価格:69万9800円
車両詳細:X500
全域なめらかでトルクフルなX500。ピックアップよく弾けるように回るX350と比較すると、上質感が出力特性でも際立つ。キャスター角/トレールもX350ともちろん異なり、24.8度/140mmのX350に対し、X500は24.5度/100mmとしている。設計はハーレーダビッドソンが本社を置く米国ミルウォーキーで行い、生産は提携企業である中国のQJモーターサイクルが担うXシリーズ。アメリカンロードスターと掲げるX500にもニューカラーのコズミックブルーが登場した。
【HARLEY-DAVIDSON X500】■エンジン:水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ ■排気量:500cc ■ボア×ストローク:69×66.8mm ■圧縮比:11.5 ■最高出力:35kW(47HP)/8500rpm ■最大トルク:46Nm/6000rpm ■全長×全幅×全高:2135×875×1150mm ■軸間距離:1450mm ■シート高:820mm ■車重:208kg ■燃料タンク容量13.1L ■変速機:6段リターン ■ブレーキF=ダブルディスク R=シングルディスク ■タイヤF=120/70-ZR17 R=160/60-ZR17 ●色:コズミックブルー ダイナミックオレンジ パールホワイト ドラマティックブラック ●車両本体価格:83万9800円
X500とX350を比較
欧州などで販売実績があるベネリをベースに、エクステリア/エンジンセッティング/ギヤ比などをハーレーダビッドソン専用とし、初期モデルから高い完成度を持ってデビューへと至ったXシリーズ。丸型ヘッドライトや細身のウインカーなど灯火類はフルLEDだ。
シンプルなメーターは液晶部分にオド/トリップ/時計/回転計を選択して表示できる。モノショックのリヤサスペンションはリンクを介さない直押し式。ファイナルドライブは両車ともチェーン式を採用している。細身のスポークが12本まっすぐに伸びるアルミキャストホイールは前後とも17インチ。
倒立式フロントフォークのインナーチューブ径は50mmとX500ではより太く、X350では41mm 。4ポットキャリパーはラジアルマウント式がX500には奢られた。
【X500:エンジン】ボアストロークがスクエア気味のX500は、全域なめらかでトルクフル。弾けるように回るX350と比較すると、落ち着きがありそれでいてパワフル。■総排気量:500cc ボア×ストローク:69×66.8mm 圧縮比:11.5 最高出力:35kW(47HP)/8500rpm 最大トルク:46Nm/6000rpm 変速機:6段リターン
【X350:エンジン】X350はショートストロークで高回転域まで元気良く回る設計としているが、ギヤ比や点火系のセッティングなどで低中速トルクも力強い。 ■総排気量:353cc ボア×ストローク:70.5×45.2mm 圧縮比:11.9 最高出力:27kW(36HP)/8500rpm 最大トルク:31Nm/7000rpm 変速機:6段リターン
ライディングポジション
【X500】幅広なハンドルで、グリップ位置はX350より少しだけ高い。ステップは足を下ろしたすぐ下、自然なミッドコントロールポジションで、タンクもニーグリップがしやすい。堂々としたライディングポジションで、車体重量はX350より13kg増し。ただし、押し引きで重さは感じない。■車体重量208kg シート高820mm [テスター身長175cm/体重65kg]
【X350】アップハンドルのグリップ位置が高く、リラックスできる上半身に対して、フットレストは後方に設置されたバックステップのため、ヒザは鋭角に曲がり、下半身はアグレッシブな乗車姿勢。軽量スリムな車体のおかげで、取り回しに苦労はしない。■車体重量195kg シート高770mm
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