気分はエンジンチューナー! ポート加工にチャレンジ【2ストボアアップ】

「エンジンのポート加工」と聞くと何かこうウズウズしてしまうという方も多いのではないでしょうか? いかにも経験と技術とノウハウが必要そうで、高度な改造に思えるポート加工も実際やってみたら意外と初体験でもそこそこの結果を出せるものでした! 道具も安く買えるようになった昨今、いっちょ週末はエンジンチューナー気分を味わっては如何でしょうか?という悪魔のお誘いです♪
●文/まとめ:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
きっかけは安物ボアアップキット
きっかけはDT50の排気量を上げようと思って、安価なボアアップシリンダーセットを買ったのが始まりでした。
シリンダーをチェックしてなんか違和感あるなと思ってポートの高さを調べてみたら、純正のものよりも約2ミリの違いがありました。
排気ポートの高さが2ミリ違う。
その程度でどんな違いが? と思われるかもしれませんが聞いて驚くことなかれ。たったこれだけで、エンジンパワーバンドのピーク回転数が1500回転も下がってしまったのです!
そのままでも乗りやすいといえば乗りやすいけども、やっぱり痛快な吹け上りが楽しみたくて2サイクルマシンに乗っているのだから、やっぱり「11000回転までキッチリ回る」エンジンが欲しいのですよ。
2サイクルシリンダーのポート加工に初挑戦!
ノーマル シリンダーとパワーアップシリンダーの最大の違いは 排気ポートの形状。高さが2mm違うだけでなく、ポート形状そのものが違いました。
ポート位置について調べてみると、至極簡単に説明しちゃうと高さが高いほど高回転型、幅が広いほどハイパワーになる一方で、エンジン特性としてはピーキーになって扱いにくくなるとのこと。
ちなみに、正しくは吸気ポートを含む全体のバランスがとても重要で、そんじょそこいらの素人が手を出していいものではないのは百も承知。扱いにくくなっても一方に構わない、こちとら昭和生まれのレーサーレプリカ全盛期を知ってるオッサンですからして。ピーキー特性バッチコーイなのですよ。
とはいえ初挑戦なので、あくまで排気ポートのみに絞って、削りしろも少なめにしてみようかと思います。初心者ですからね。小さな加工なら変化も少ないわけで、大きな失敗を回避するリスクヘッジなのです。
道具はすべて安物だけどそこそこのモノが手に入るいい時代♪
エアーコンプレッサーがあるので、エアリューターを買ってみました。
高級品ではなくて「アネスト岩田 AIRREX エアーグラインダ TL9023(6210円)」
アネスト岩田 AIRREX エアーグラインダ TL9023(6210円)
排気ポートはそこそこ奥が深いので、長めのタングステンリュータービットを買ってみましたが、結論から言っちゃえば短めのものでも大体届いちゃったことを先に告白しちゃいます。60mmくらいあればOKでした。
タングステンリュータービット (3mm軸 刃幅6mm)10本セット(1590円)
そして、忘れちゃいけないのが「特殊形状 やすり10本セット(1099円)」 リューターで削った後に角の面取りに使うのでこれは必須です。
特殊形状 やすり10本セット(1099円)
独学の削り方でも予想外にサクサク作業することができました
仕事でリューターを使うことが時々あったので経験はそこそこにあるのですが、こんな排気ポートのような奥まったところを削るのは初めてなので慎重に作業します。
削りしろのマーキング
いきなりポート全体を削っていくと、どこまで削ったのかわからなくなってしまうので、削りしろをマーキングしておいてから、先に角だけマーキング分削ります。
実際に エアリューターで削っていくとまるで歯医者さんのような音がするので、これは苦手な人間にとっては地獄かも。そんな方は耳栓の使用を強くおすすめします。また、予想以上に細かい切り粉(鉄粉)が飛んでくるので、防塵マスクと防護メガネは必須です。必ず着用するようにしてください。
とりあえず 第一段階の削りが終わった状態。
シリンダーの上から見るとあまりよく分かりませんが、下から見るとかなり削り込んでいるのがお分かりいただけると思います。
そして次は、 最初に削ってアタリをつけた高さにあわせて、ポート全体を滑らかに削っていきます。使いやすい先端ビットを選んで削っていくのですが・・・おやおや? 安物のリュータービットの割には思いのほかよく削れています。
仕上げは特殊形状やすりでバリとり
リューターで排気ポートを削っているので角の部分にはバリが出ているようです。そこはバリがないように特殊形状やすりで削ります。
丸、平ら、三角、いろいろな形状があるので、それらを駆使してポートの角を仕上げていくのですが、ピストンが接触したら傷ついてしまうので、丁寧に削りましょう。仕上げとして、サンドペーパーを当てて、最終的に手で撫でても引っ掛かりがないように仕上げます。
出来上がったオリジナルの排気ポート。テンション上がる!
実際この作業やってみるとわかると思いますが・・・これ、とにかく楽しい!
もちろんこの時点でどんなパワーが出てくるか全くわからないのですが削っただけで満足しちゃうくらいにご満悦です。だって自分だけのオリジナルですよ? テンション上がらないわけがない!
予想以上の高回転とピーキー特性をゲット!
自分でポート加工をしたエンジンを組み上げて、サーキットでテスト走行してみました。
その結果・・・ まさかの、ピーク回転数11,500回転達成!
もとのシリンダーと同じとは思えない吹け上がりで、思いっきりよく回るエンジンになりました。こりゃもう、たまりませんね。めっちゃ嬉しいったらありゃしない!
また、パワー特性もかなりピーキーで、扱いにくくて笑っちゃいました(笑)
シリンダーに紙をまるめて入れて、ポート形状の石刷りをとります
というのも、ポート加工したシリンダーの排気ポート形状の魚拓を取ると・・・ はいっ、削りすぎました~!(笑)
これは、調子に乗って削り過ぎた結果です。実際に削っていると視覚的にわからないもので、「もうちょっと、もうちょっと」とかやっているうちに御覧の有様でした・・・(汗)
でも・・・
結果として自分好みのフィーリングになってくれたので、今回のポート加工は「成功」なのです。なんたって自分の自分による自分のためのエンジンチューニングななので、自分が楽しいのが「正義」なのです。うははっ!
自分の手で「変化」を思いっきり体感できる究極の快感
実際やってみるまでどうなるか不安もありましたが、ポート加工、素直にめちゃくちゃ楽しかったです。 自分でポートを削ることで、如実にその「結果」をダイレクトに「体感」できるので、面白くないはずがない。失敗したっていいんです。だって、 自分のバイク なんですから(笑)これこそプロにはできないプライベーターこその楽しみってもんです。
ちなみに今回筆者はスケベ根性起こして、最初のマーキングのラインよりも削りすぎちゃいましたが、 少な目に削ったところできちんと魚拓を取って、平面図にして確認し、そこからまた削っていけば、ワタシのような失敗をすることはありえません。焦らず、じっくりと作業していけば確実にイケると確信しました。 仕事じゃないんだから、納期があるわけじゃなし、のんびり じっくりやればいいんですよね~。
ポート加工でエンジンチューナー気分を味わってみては?
ネット通販の普及で、安くてもそこそこ使える道具が安価に手に入るいい時代になったものです。今回はそこそこの道具しか揃えませんでしたが、十分作業することができました。
今回は2サイクルエンジンの加工をしましたが、ポート加工といえば4サイクルも同様、改造することが可能です。特に小排気量の単気筒ならば比較的気軽に挑むことができるので、是非挑戦してみてはいかがでしょうか?
ちなみに、エアリューターは大量の空気を消費しますが、安いコンプレッサーでも大丈夫。じっくり休みながら作業すればいいのです。いやむしろ、そっちのほうが夢中になって削れすぎるって事を防いでくれるかもしれません。
せっかちに結果を急ぐのは若い小僧に任せて、オッサンならでは余裕ってやつ? で、じっくりやりましょうや。
そんなわけで、今回はポート加工でエンジンチューナー気分を味わってみました。よかったら皆さんもトライしてみては如何でしょうか?
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
動画解説はこちら↓
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