![「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/Porsche911_Turbo_X50_A.jpg)
ポルシェの歴史において、水冷化という激震をもたらした996世代。空冷原理主義者からは「涙目」だの「コストダウン」だのと言われたりもしましたが、こと「ターボ」に関しては誰も文句のつけようがないほどの超一級グランドツアラーに仕上がっていました。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys
+35馬力のために、ハードウェアを全替えするポルシェの執念
3.6リッターの水平対向6気筒ツインターボ、いわゆるレンシュポルトの血筋「メッツガーユニット」を搭載し、415馬力を発揮。これだけでも当時のスーパーカーを震え上がらせるには十分すぎる性能でした。が、当時のポルシェ・エクスクルーシブ(特注部門)のエンジニアたちは、それだけで満足するようなタマじゃありません。
「これで満足じゃないよね?」とばかりに、新車注文時のみ選択できるファクトリーチューニングパッケージ、コード「X50」と呼ばれる有名なオプションを用意したのです。のちのカタログモデル「ターボS」の礎となり、現代のネオクラシック市場でも血眼になって探されている、極めてレアなパワーアップキット。
もっとも、現代の感覚だと「どうせECUのデータをチョイチョイと書き換えて、ブースト圧を上げただけでしょ?」なんて思いがち。社外のチューニングショップならいざ知らず、そこは頑固一徹なバイザッハのエンジニアたち。安易なブーストアップでエンジンを使い捨てるような真似は絶対にしません。
ノーマルの415馬力を450馬力へ向上させ、最大トルクも57.1kg·mから63.2kg·mへと引き上げるために、彼らは「ハードウェアの総入れ替え」という荒業に踏み切ったのでした。例えば、タービンを、ベース車のK16型から、「911 GT2」と同じK24タービンへと変更。これに伴い、強烈な過給圧に耐え、吸気温度をきちんと下げるためにインタークーラーも拡大。
996と聞くとインターミディエイトシャフトの破損を想像する方もいますが、ターボはクランクケースが従来品なので問題ありません。
もちろん、排気系も抜かりはなく、排気効率を極限まで高めたエキゾーストシステムに、クアッド(4本出し)ルックの専用テールパイプを装備。無論、この強大なトルクの爆発に耐えるために、トランスミッション(6速MTおよび5速ティプトロニックS)の内部ギアやクラッチも強化仕様に仕立て直し。これをカスタマーカウンター専用のラインで1台ずつ組み上げていたというのだから、恐れ入るというか、ちょっと引くほどの執念ではあります。
カーボンローターこそ装備していませんが、ご覧の赤キャリパーで効きに不満がある方は滅多にいないはず。
当時の価格はクルマ1台分という桁外れ
当時の日本国内でのオプション価格は時期や仕様によっても前後しますが、およそ200万〜250万円とのこと。ベースとなる911ターボ自体の車両本体価格が1700万円前後だった時代ですから、家一軒買えるような総額の上に、さらに「国産ミニバンが1台買えそうなオプション代」をサラッと上乗せできる、一握りの富豪やスピード狂だけが許された特権だったわけです。
それでも、このX50パッケージがあまりにも好評だったため、ポルシェは996型のモデルライフ最終盤(2005年)になって、このX50のメカニズムをあらかじめ標準装備した「911ターボS」をカタログモデルとして投入することになります。つまり、X50はターボSの「遺伝子そのもの」であり、先行開発プロトタイプのようなロマンが詰まっているのです。もしも、フロントフードの裏側(あるいは取扱説明書の巻頭ステッカー)に貼られたコーションシートを覗いた時に『X50』の3文字を見つけたら、それは大当たりに違いありません。
フロントフード裏に貼られたオプションレシートにX50の文字があります。レアなオプションなので、中古車についていたら相当ラッキーです。
実際、オークションに出品されたX50物は、一般的なターボよりも相場は高く、12万5000~17万5000ドル(約2000万~2800万円)の予想落札価格が掲げられています。コンディションを考えれば、さらに高値となること想像に難くありません。ともあれ、日常の快適性を1ミリも損なうことなく、右足ひとつで水冷黎明期の“狂気”を呼び覚ますファクトリーチューン。これだから、一見地味に見えるネオクラシック・ポルシェのオプション深掘りはやめられないのです。
涙目などと言われがちな996世代ですが、ことターボに関してバイザッハはいつも以上にいい仕事をしています。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(自動車/クルマ)
従来の2気筒から新設計3気筒へ!劇的進化を遂げた新型「Ryker」 BRPジャパンが国内に展開するカンナムシリーズの中で、よりカジュアルに3輪アドベンチャーを楽しめるモデルとして支持されてきた「Ryk[…]
ザガートの名がつくだけで売れ行きがまったく違う とにかく、アストンマーチンが100周年にかけた情熱はすさまじいもので、DBS GTザガートとDB4 GT ザガートのセット販売をはじめ、ハイパーカーと呼[…]
1930年代のクラシックカーが現代のEV技術で蘇る!ブレイズ「EVクラシック」の造形美 愛知県名古屋市に本社を置く株式会社ブレイズが展開する「EVクラシック」は、1930年代から1960年代にかけての[…]
気が付けば18万キロ 車に使っているスパークプラグ「イリジウムプラグ」って、すっごい長寿命じゃないですか。期間が空いてしまうので、ついついチェックするのを忘れていて、車検のたびに思い出してはいたのです[…]
免許不要の四輪特定小型原付サンエンペラー「エルバード」の安定性と利便性 2023年7月の道路交通法改正によって誕生した「特定小型原動機付自転車」は、16歳以上であれば運転免許不要で公道を走行できる新た[…]
人気記事ランキング(全体)
サビて固着したネジやナメて外せなくなったネジを簡単に外せる デイトナから発売されている「バイク用ショックドライバーセット(品番:95392)」は、錆びついて固着したボルトや、ネジ緩み止め剤が塗布された[…]
従来の2気筒から新設計3気筒へ!劇的進化を遂げた新型「Ryker」 BRPジャパンが国内に展開するカンナムシリーズの中で、よりカジュアルに3輪アドベンチャーを楽しめるモデルとして支持されてきた「Ryk[…]
ザガートの名がつくだけで売れ行きがまったく違う とにかく、アストンマーチンが100周年にかけた情熱はすさまじいもので、DBS GTザガートとDB4 GT ザガートのセット販売をはじめ、ハイパーカーと呼[…]
欧州での人気を背景により本格的なオフロードモデルに進化 2025年にフルモデルチェンジを行ったキャバレロラリー500最大のトピックは、従来モデルから大幅な見直しが図られた車体構成にある。これまでのラリ[…]
ワークマン最大のカジュアルショップがイオンモール川口に誕生!! Workman Colors(ワークマンカラーズ)はワークマンが展開する多数のウエアやグッズのなかで、従来のメイン商材だった作業着(ワー[…]
最新の投稿記事(全体)
荒野を駆け抜けた友情と青春!『機甲創世記モスピーダ』が放つタイムレスな魅力 1983年10月から1984年3月まで全25話が放送されたタツノコプロ制作のTVアニメ『機甲創世記モスピーダ』。謎の宇宙生命[…]
+35馬力のために、ハードウェアを全替えするポルシェの執念 3.6リッターの水平対向6気筒ツインターボ、いわゆるレンシュポルトの血筋「メッツガーユニット」を搭載し、415馬力を発揮。これだけでも当時の[…]
「プロジェクトBIG-1」が生んだ400ccネイキッドの基準「CB400SF」 1992年4月、ホンダは「新しい時代にふさわしいホンダのロードスポーツモデルはどうあるべきか」を追求した「プロジェクトB[…]
MotoGP日本グランプリにハーレーがやってくる! まず注目したいのが、2026年からスタートした新たな世界選手権「Harley-Davidson Bagger World Cup(ハーレーダビッドソ[…]
サーキット専用「AMB 001」を経てついに解禁!公道を駆けるロードスター 英国の四輪ラグジュアリーブランドであるアストンマーティンと、伝統の二輪メーカーであるブラフシューペリアの提携が生み出した「A[…]
- 1
- 2

![996型ポルシェ911ターボ X50|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/Porsche911_Turbo_X50_1-767x396.jpg?v=1789492835)
![996型ポルシェ911ターボ X50|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/Porsche911_Turbo_X50_2-767x394.jpg?v=1789492861)
![996型ポルシェ911ターボ X50のエンジンルーム|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/Porsche911_Turbo_X50_3-768x512.jpg?v=1789493399)
![996型ポルシェ911ターボ X50のホイールハウス周辺の写真|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/Porsche911_Turbo_X50_6-768x512.jpg?v=1789493881)
![996型ポルシェ911ターボ X50のフロントフードの裏、オプションレシート|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/Porsche911_Turbo_X50_4-768x512.jpg?v=1789493639)
![996型ポルシェ911ターボ X50のフロントマスク|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/Porsche911_Turbo_X50_8-767x511.jpg?v=1789494092)
![996型ポルシェ911ターボ X50の車内、運転席|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/Porsche911_Turbo_X50_5-768x512.jpg?v=1789494133)
![996型ポルシェ911ターボ X50のリアビュー|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/Porsche911_Turbo_X50_7-767x511.jpg?v=1789494166)
![996型ポルシェ911ターボ X50のリアビュー|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/2002-Porsche-911-Turbo-X50-_1455518-768x512-1.jpg?v=1789494263)
![996型ポルシェ911ターボ X50のシート|「一見地味だが…狂気のファクトリーチューン」ちょっと引くほどの執念を感じるネオクラ ポルシェ。市場が血眼になって探す[911ターボ X50]の存在](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2026/09/2002-Porsche-911-Turbo-X50-_1455542-768x512.jpg?v=1789494267)

























