
昨シーズン、熱中症リスクを軽減する世界初のアパレル「X Shelter(エックスシェルター)」で話題を集めたワークマン。今年は東レ株式会社と連携した革新的な暑熱対応新素材“X ShelterΩ(オメガ)”を、まずはワークウエアに採用した。今回は特別に東レ・瀬田工場にある人工気象室で実験した模様をお届けしよう。
●文:大屋雄一(ヤングマシン編集部) ●写真:大屋雄一 ●外部リンク:ワークマン
東レ株式会社は日本が誇る“縁の下の主役”だ
東レ株式会社をご存じだろうか。創業はちょうど100年前の1926年。一般的な知名度こそ高いとは言えないものの、繊維・素材分野において世界でもトップクラスの技術力を誇る日本の大手企業だ。言わば“縁の下の主役”である。飛行機に詳しい人なら、ボーイングの旅客機「787」の構造材に東レの炭素繊維を樹脂で固めた材料=カーボンが採用されたことは記憶しているだろう。また、カーボン化が著しいスポーツサイクルの分野では、東レの「T700S」という炭素繊維がデファクトスタンダードとなっている。
フレームに東レ株式会社の炭素繊維「トレカ」を採用するピナレロ・NEW F7。完成車価格は105万円~だ。
ダウンチューブに「TORAYCA(トレカ)」のロゴが確認できる。
ワークマンが東レの革新的な超暑熱新素材を独占採用
そんな東レ株式会社が、革新的な高機能暑熱軽減素材を開発し、その生地がワークマンのワークウエアに採用されることとなった。
ご存じの方も少なくないだろうが、昨シーズンからワークマンでは、昨今の酷暑という環境下での熱中症リスクを軽減するために、“X Shelter(エックスシェルター)”という名称で暑熱軽減ウエアをラインナップするようになった。今シーズンは使用する生地の違いにより、“X Shelter暑熱α(アルファ)”、“X Shelter暑熱β(ベータ)”、そして“X Shelter暑熱Ω(オメガ)”の3種類をシリーズ展開。この中のX Shelter暑熱Ωに、東レ株式会社の新素材が採用されているのだ。
こちらは接触冷感およびストレッチ性が特徴のX Shelterβシリーズ。αやΩシリーズと組み合わせることで、さらに快適性を高められる。
熱中症対策として環境省が発表している暑さ指数(WBGT)は、気温や湿度、輻射熱、風という4つの要素が考慮されている。気温や湿度が高いとき、日射・放射(輻射熱)が強いとき、そして風が弱いときなどに、熱中症のリスクが増大するのだ。これを衣服で軽減するには、一つの機能糸では解決不可能であり、2種類以上の特殊多機能糸を組み合わせることが必要となる。
暑熱Ωにおける熱中症リスク軽減機能。その数、実に20にもおよぶ。
東レは、複合的な機能繊維と多層構造設計によって、革新的な高機能性テキスタイルを開発することに成功した。セラミック粒子を超高濃度に含有させた特殊断面構造の繊維は、東レの国内工場にて生産。また、開発にあたっては、東レの瀬田工場(滋賀県大津市)内にある人工気象室にて検証実験が繰り返された。
気化冷却や接触冷感、透湿度、遮熱率、通気機能など、暑熱リスクを軽減するための機能を20も備えているX Shelter暑熱Ω。瀬田工場の人工気象室で、暑熱軽減効果を実際に体感できる機会を得たので、その模様をお伝えしよう。
高遮熱、高通気、高気化冷却という3つの力の融合がX Shelter暑熱Ωの特徴だ。猛暑下における衣服外側サーモグラフィーによる比較では、従来の布帛製品との間に最大で14℃もの差が確認できたという。
猛暑日に近い環境を再現、すぐに発汗を確認
筆者が着用したのは、「X Shelter暑熱Ω PREMIUMジャケット」と、「X Shelter暑熱Ω PREMIUMカーゴパンツ」だ。なお、インナーには「X Shelter暑熱β長袖シャツ(管理番号:21135 1900円)を選択した。
テストで着用したのは右の「X Shelter暑熱Ω PREMIUMジャケット(管理番号:35310 4900円)」だ。左は「X Shelter暑熱Ω 長袖シャツ(管理番号:35110 3900円)」。どちらもサイズはM、L、LL、3L、4Lを展開し、カラーはシルバーのみ。
こちらは「X Shelter暑熱Ω PREMIUMカーゴパンツ(管理番号:35610 3900円)」。サイズはS、M、L、LL、3L、4Lをラインナップし、こちらも色はシルバーのみとなる。
これが東レの人工気象室だ!
実験が行われたのは2月下旬で、瀬田工場のある大津市の当日の最高気温は9℃だった。これから暖かい人工気象室に入れるという喜びは、重い扉を開いて一歩足を踏み入れた瞬間に霧散した。室内は暖かいを通り越して明らかに蒸し暑く、しかも皮膚には太陽光に匹敵するほどのジリジリとした熱さも感じる。実際、天井の特殊照明からは日焼けするほどの紫外線が発せられているとのことで、冬の寒さに慣れきっている体には堪える環境だ。
屋外での労働環境を再現するため、メトロノームに合わせて3分ほど踏み台昇降を行い、そのあとにサーモグラフィーで表面温度を確認した。人工気象室に入った時点ですでに額などに発汗を確認。踏み台昇降中はその度合いがさらに増していくものの、衣服内では生地が肌に張り付くような症状は一切なし。また、日射によるジリジリとした熱さを感じているのは、顔や首筋、そして手など皮膚が露出している部分だけであり、それ以外はまるで日傘の陰にいるような感覚だ。
小中学校以来、何十年かぶりに踏み台昇降を行う筆者。ただでさえ暑い環境の上、運動を行うことで深部体温まで上昇してくるのが実感できる。
3分間の踏み台昇降をを終えたあと、隣室(こちらは気温20℃に設定)に設置されたサーモグラフィーで表面温度を確認すると、ワークウエアを着ている部分と皮膚とでは想像以上に温度差があった。皮膚については、純粋な室温の高さに加えて、特殊照明からの焼けるような熱さもあり、X Shelter暑熱Ωの遮熱率の高さに感心しきりだ。
踏み台昇降を終えた直後のサーモグラフィー。衣服と皮膚との色(=温度)の差は歴然としている。なお、胸元に透けて見える長方形の物体はスマホだ。
続いて、ワークマンのスタッフに促されて霧吹きで水をかけたところ、「寒っ!」と感じるほどに生地表面の温度が低下した。気化冷却効果は最高グレードとのことで、このヒンヤリとした感覚は生地が濡れている限り長く続く。しかも生地が肌に張り付くような不快なベタつき感は一切なし。これなら屋外での業務中にペットボトルの水をサッとかけて涼を得ることも可能だろう。
向かって左側の袖に霧吹きで水をかけた状態。一気に温度が低下したことが一目瞭然だ。
その後、比較のために「ワンダーストレッチ長袖ブルゾン(管理番号:31130 1900円)をはじめ、一般的な布帛を使用したワークウエアで同様の実験を繰り返したのだが、X Shelter暑熱Ωとの体感差は歴然としていた。特に遮熱効果の低い製品は、日射がインナーにまでジリジリと伝わり(特に肩周りが顕著だ)、これが衣服内の温度を上げているのを実感できる。また、肌離れ度や換気機能、着心地の軽さまでもが快適性を大きく左右することも理解でき、X Shelter暑熱Ωがいかに革新的なテキスタイルであるかを身をもって体感できた。
ライダー向けにはX Shelterαの製品を展開
ワークマンでは、昨今の年平均気温の上昇スピードが上がっていることから、外気温45℃を想定した暑熱軽減機能素材による商品開発に注力しており、その一つが東レの高機能テキスタイルの採用によるものだったのだ。現状、この素材が展開されるのはワークウエア領域だけではあるが、屋外で長時間作業される方をはじめ、蒸し暑い工場内などで働く人にとって、少なからず労働環境が快適になる商品であることは間違いない。
なお、ライダー向け商品としては、東レの素材ではないが、「X Shelter暑熱αライディングジャケット」と、「X Shelter暑熱αライディングパンツ(管理番号:35695 3900円)」が展開される。今回は特別に、このライディングジャケットについても東レの人工気象室で特別に実験することができたので、最後に紹介させていただこう。
X Shelter暑熱αライディングジャケット(管理番号:35390 4900円)はS~4Lを展開。表地は布帛(X Shelter暑熱α)とメッシュ地の組み合わせで、肩と肘にはメッシュプロテクターを標準装備する。
走行状態を再現するため、大型ファンによる風を受ける筆者。肩付近に多少の熱さを感じることから、遮熱率ではX Shelter暑熱Ωに一歩譲るが、目の粗いメッシュ地を通じて風がダイレクトに衣服内へ流れ込むことから、走行中であれば涼しさは同等以上だろう。ちなみにこの人工気象室では風速30m(約108km/h)もの風が作り出せるのだ。
サーモグラフィーを見ると、布帛=X Shelter暑熱αの部分は表面温度が低く、一定以上の遮熱効果があることが分かる。
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