
世界を転戦するF1、MotoGPを追い続け、現在は全日本ロードレースや各メディアを中心に活動するフォトグラファー・折原弘之さんによる写真コラム。バイク乗りに沁みる写真と文章をお届けしていく。
●文/写真:折原弘之
「いつか一緒に走ろう」の約束から8年が経った
レースの取材をしていると、大分県のオートポリス・サーキットに年に3度ほど訪れる。このサーキットは大分県に所在しているが、熊本側から向かう方が便利な立地だ。現在、山梨に住む僕は松本空港から向かうため福岡空港まで飛び、そこからサーキットに向かうことになる。一般的には阿蘇くまモン空港まで飛び、レンタカーでサーキットまで向かう。1時間前後車を走らせ、オートポリスを目指すのだが、そのさい阿蘇の外輪山を走る県道339号線「ミルクロード」を走ることができる。
説明するまでもないかもしれないが、ミルクロードと言えばライダーの聖地とも言える日本有数のツーリングスポットだ。阿蘇の外輪山の頂上付近を、130kmにわたり周回しているミルクロードの絶景は唯一無二と言っても過言ではないだろう。しかも信号がほぼない峠道が延々と続く。どこまでも中高速コーナーが続いていく道は、バイクで走ったら、どれほど気持ち良いかは容易に想像がつく。バイク乗りなら、一度は走りたくなる道なのだ。
僕の仕事はサーキットで行われるレースを撮影し、その日のうちに納品すると言うもの。そのため朝6時にはサーキットに向かい、麓のホテルに帰る頃にはトップリと日が暮れ景色を見ることはできない。僕は早朝しか、雄大な阿蘇の景色を楽しむことができない(タイトルの写真は早朝の北山展望所から外輪山を望んだもの)。それでも車からとは言え、日本有数の絶景の中を走る贅沢を味わいながら通勤できる。車の中から見てもその景色に目を奪われるのだから、視界の広いバイクで走れたならどれだけ楽しいか。いつも「いつかバイクでここを走ろう」と思いながらサーキットに向かっていた。
いつかここをバイクで走りたい。そう思いながらサーキットに通うこと15年。いまだにバイクで走ったことはない。地元の友人と「いつか一緒に走ろう」と約束するも、その約束を守れぬまま8年が過ぎた。今はもう友人との約束を果たすことができなくなってしまったが、一人でも走りに行こうと思う。今なら飛行機で福岡空港に行き、目の前にあるレンタルバイク屋でバイクを借りる事ができる。そこから2時間弱高速を走れば、ミルクロードに到着する。そのまま外輪山を楽しみ、最終便で帰れば日帰りも可能だ。時間的にもバイクの工面も、障害は何もない。後は「行こう」と言う気持ちだけだ。
いつの日も人の行動にストップをかけるのは、覚悟を決められない弱い心だ。行動を起こす時、面倒になったり「忙しいから」と自分の心に言い訳をする。そんな臆病な自分に「言い訳をするな」と喝を入れ、来春にはミルクロードを走ると決意した。長年思ってきた「いつか」を来春に実現しようと思う。雄大な阿蘇の絶景に囲まれたあの道を、視界の広いバイクで走ることを考えてだけでワクワクしてくる。人生は長いようで短いもの。ワクワクを求めて、「いつか」を明日にしてみるのはどうだろう。
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